高齢者施設のシニアがおしゃれをして参加したくなる!オンラインレクリエーション「コリスライブ」の魅力に迫る
コロナ禍では、不要不急の外出を避けるために、ビデオ会議システム「Zoom」を利用したオンライン会議やオンライン授業が普及した。このシステムを利用してイベントや仲間内の飲み会など、さまざまな楽しみ方が広がり、特定の参加者に向けたライブ配信も増えている。その中で注目を集めているのが、高齢者施設に向けたオンラインレクリエーション「コリスライブ」だ。制作している株式会社オフィスニートの代表取締役・庄田后希(しょうだみき)さんに、コリスライブに対する熱い思いを聞いた。
演者と参加者がオンラインでつながる「コリスライブ」
コロナ禍になり、リアルのイベントがすべてなくなってしまった。会社存亡の危機に陥るなか、社員を全員集めて「いま私たちにできることは何か」と会議をしたとき、ひとりの社員からの提案がヒントになったと庄田さんは言う。
「いつもネイルにまで気を使っておしゃれを楽しみ、おしゃべりも大好きだったおばあさまは、コロナによる自粛で通っていたデイサービスが休業。外出することができなくなってしまったため、全くおしゃれをしなくなり、しゃべらなくなって元気もなくなってしまったそうです。『私たちの会社で、そういう辛い状況の人たちに何かできませんか』と切実な思いを訴えてきたんです。
当時、ちょうどご紹介いただいた、介護・シニア事業を幅広く展開しているSOMPOケア様に、全国の高齢者施設様に向けたオンライン番組の配信を提案したところ、SOMPOケア様もちょうど検討されている時期で、番組配信をさせていただくこととなりました。」(庄田さん・以下同)
とはいえ、シニア向けの番組を制作しても一方的に送り付けるだけでは従来のテレビ番組と変わらない。Zoomはもともと会議を行うためのツールのため、テレビ電話のように双方向でコミュニケーションを取りながら配信を行うことができる。これを利用して生のライブ配信を行えば、施設の利用者が参加する、体験型の番組が作れるはずだと考えた。
こうして生まれたのが『コリスライブ』。全国と繋がるシニア向けオンラインコミュニケーションサービスだ。
これまではイベント会社として、クライアントからの要望を予算に応じて作り上げるのが常だった。
「コリスライブは、私たちの思いを伝えるためにイチから作り上げたもの。今までとは違う楽しみと、難しさがあります。利用者様が視聴したくなるだけでなく、参加して楽しみたいと思ってくださるような番組作りを心がけています。
いま人気なのは『中田亮のリクエストコンサート』。昭和歌謡を中心としたリクエスト曲を、中田亮くんがギターを弾きながら歌う番組で、毎月延べ600施設、延べ参加者数1万2000人が参加するコンテンツになっています。彼は“懐メロプリンス”とも呼ばれていて、高齢者施設の推し活アイドルとしても注目を集めています」
全国の施設・事業所をフィーチャーしたクイズ番組
『コリスライブ』が提供するレクリエーション(プログラム)は、現在16。日本全国の高齢者施設が参加しているため、各地の魅力をクイズ形式で出題する番組も人気だ。
回答者がひとりで答えるテレビのクイズ番組とは異なり、となりの方、スタッフ様と相談したり、みんなで雑談をしながら協力して答えていくもので、毎回お土産がついてくる。みんな張り切って参加しているという。
「司会者の小倉ひかるさんが、番組が始まったときからずっとやりたいと言ってくださっていて、今春からやっと実現したのが全国のご利用者様の施設を巡る『ホーム・事業所巡り』のコーナー。ご利用者様の中には、お琴の先生や、ミニチュア作家の方など、多彩な方々がいらっしゃいます。そんな方をフィーチャーして取り上げて、皆様に知ってもらいたいと思って始めたのですが、とても好評なんですよ。
スタッフさんを取り上げさせていただくこともあり、『うちのご自慢スタッフをお披露目できた!』と喜ばれる方も多いんです。出演される方も、ご覧になるご利用者様も、本当に喜んでくださいます」
このほか、文化系のコンテンツもあり、川柳や書道の番組もある。こちらはコンテスト形式になっていて、川柳は応募者がわからないようにしてまとめたものを先生とご利用者様が採点し、優秀者を選ぶというもの。また、先日の書道では、今まで何度も佳作や優良賞を獲得していたものの、なかなか優秀賞が取れなかった方が、毎日30分以上真剣に書道に向き合った結果、念願の最優秀賞を獲得した。
「ご本人も、施設のスタッフも、全国のほかの施設のご利用者様も、皆さんから『おめでとう』と声をかけられ、本当にうれしそうでした。
今まででしたら、作品は施設のなかに飾られ、そこのスタッフさんやご利用者様のお仲間たちのみで鑑賞するだけだったと思います。でも、この番組に参加をすれば全国の皆さんに見ていただいた上、表彰もされる。外につながりを持つことが生きがいにもつながると思うんです」
体を動かせば、会話も食事も進み、熟睡できる
介護福祉士・音楽健康指導士・レクリエーション介護士の資格をもつ、ラブリーチャーミーさんが、懐メロに合わせた体操を指導する『ラブリーチャーミーの懐メロ体操♪』、お祭り大好き娘!星カオルさんと一緒に炭坑節の振り付けで、懐メロや最近の曲、外国の曲を踊る『カオルのレッツ盆ダンス!』といった、体操系の番組もある。
「B’z さんの『ウルトラソウル』というアップテンポの曲に合わせて炭坑節を踊ると、絶対にずれてくるんですけど、それがまた面白い。普段は肩が痛くて手が上がらないと言っていたご利用者様が、あらあらと言いながら手を挙げて踊っていますから、踊っている参加者だけでなく、見ているほうも元気をいただけます。
普段は全く運動していない人も、みんなと一緒なら手も上がるし足も上がるし声も出る。その後の夕食の時には『今日は楽しかったね』と会話が弾み、お腹がすいているからたくさん召し上がってくださる。疲れているから夜もぐっすり眠っていただける。
こういった話を施設のスタッフさんから伺うと、こちらとしてもやりがいを感じますね。シニアのご利用者様のためだけでなく、スタッフの方のための番組でもありますから」
利用者とスタッフの笑顔を生みだし、生活リズムを作る
番組配信中は、常に参加している高齢者施設の様子が画面に映る。毎回、数10~100施設以上が参加するため、すべての施設と相互交流を行うのは難しいのだが…。
「オペレーターが天才なんですよ。すべての施設が映し出される画面を本当に注意深く見ていて、反応のいいところを拾ってスポットを当てていくんです。私たちからの一方通行ではなく、みなさんと一緒に番組を作っているということを感じてほしいので、初めて参加されるところは必ず出演体験をしていただきます」
自分たちを取り上げてほしいからとアピールをするだけでなく、他の施設にエールを送ってくださることも増え、施設同士の交流が生まれるなど、どんどん広がりを感じているという。
「介護の仕事に従事していらっしゃる方は、志が高い方がたくさんいらっしゃいます。最初は、『そういう方たちがレクリエーションを行う際に少しでもお役に立ちたい、ご利用者様が番組に参加している間にほかのお仕事ができたり、休憩をとっていただければいい』と思っていましたが、スタッフさんも一緒に楽しんでくださっているのを見ると、心から嬉しく思います」
月曜~土曜日の14時~15時を中心に開催されるコリスライブ。月に約20日開催されるため、生活リズムを作りやすいのも魅力。昼食後のティータイム前にリビングに集まり、ほぼすべての番組に参加する施設・利用者もいるほどだ。
在宅の方も参加できるサービスにしたい
現在は、高齢者施設や事業所単位で利用するサービスだが、いずれは在宅シニアも参加できるようにしたいと庄田さんは言う。
「個人参加者とも相互交流をするためには、おしゃべり会的なものにするなど、新しい番組のあり方を考える必要があります。独居の方には、毎朝同じ時間につながり、『おはようございます。今日は2時からリクエストコンサートですよ。忘れずに入ってくださいね」など、1分でもいいからお話ができるサービスをしたいと思っているんです。エンタメ要素をいれた見守りアプリのようなものもいいですね』
サービス開始から3年目を迎え、ますます充実を見せる「コリスライブ」。ちなみに、「コリス」とは、可愛くて親しみやすい「小さなリス=コリス」のように、愛される番組作りをしたいという願いを込めて名付けたもの。シニア向けに番組を作りたいという売り込みや、施設からのリクエストも多数届いているという。今後の新たな展開が楽しみだ。
庄田后希(しょうだ・みき)
株式会社オフィスニート代表取締役。イベントの企画・制作プロモーションや、キャスティングを手掛ける会社を運営。現在は、シニア向けコミュニエーションサービス「コリスライブ」にも注力している。趣味は体幹を鍛えること。
【リリース情報】
中田 亮 1st Mini Album「HOME」
発売日:2023年7月26日(水)
規格品番:ALDL-0004
¥2,000(税込)/ ¥1,818(税抜)
●中田亮のさん活動情報は以下でチェック!
https://nakadaryo.com/
●コリスライブ
オンラインレクの開催予定、参加方法は、詳細は以下でチェック!
https://corislive.com/
撮影/浅野剛 取材・文/山下和恵