藤井聡太さんを支える「流動性知能」とは?脳を若返らせる鍛え方7つのルール「ワーキングメモリー」が鍵
加齢に伴う知能の衰えなら仕方がない、そう思うかもしれないが諦める必要はない。
「年配のかたでも認知症予防で数独パズルに何度も挑戦していくと、問題を解く時間が徐々に早くなっていくことは少なからずあります。つまり、流動性知能は年を重ねても鍛えることができると考えられています」
●「間違い探し」「しりとり」「100マス計算」「パズルゲーム」をする
“老害脳”にならない流動性知能の鍛え方を見ていこう。
もっともわかりやすいトレーニング方法は、「ワーキングメモリ」を鍛えることだと公立諏訪東京理科大学工学部情報応用工学科教授の篠原菊紀さんが話す。
「ワーキングメモリとは、情報を一時的に記憶するための脳の働きです。数字の逆唱や出された画像を覚えるなどのトレーニングを行えば鍛えられます。ワーキングメモリは普段の生活でも使用する能力なので、意識して日常生活を送るだけでも流動性知能が伸びることが期待できます」(篠原さん・以下同)
ほかにもワーキングメモリを鍛える方法は「間違い探し」や「しりとり」、「100マス計算」など多種多様にある。
また、「パズルゲーム」でも鍛えることができる。実際、藤井が子供の頃に遊んでいた木製ブロックパズル「キュボロ」は効果的だという。このキュボロは溝のついたブロックを組み合わせ、上から落とした玉が下まで行くように通路を作っていく遊びだ。
「立体空間を理解するゲームなので三次元で物事を考えることができ、ワーキングメモリに加えて空間認知能力なども鍛えられます」
●小説や新聞など文章を読む
“老害脳”を防ぐポイントは日常生活にもある。藤井は幼少期から『竜馬がゆく』や『深夜特急』などを読んでいた読書家である。新聞を読むことも日課としており、国際面を中心に読んでいるそう。
「文章を読むということは、内容の一部を記憶に留めながら先を読み進めるということ。ワーキングメモリを使わなければ文章を読むことはできないので、自然と流動性知能が鍛えられます」
このようにさまざまなことがトレーニングにつながるが、翻っていえば“近道”は存在しない。
「急にひらめきが身につくとか、思考力が上がるということはそうそうありません」(和田さん・以下同)
普段からコツコツと積み上げることが近道なのだ。
「数学ができるようになるために、何度も方程式を解いてさまざまな解法パターンを経験しなければならないのと同じです。例えば人を笑わせようとするのも、流動性知能を鍛えることにつながります。会話のセンスがないからと諦める必要はありません。何度も場数を踏み、笑わせることに成功した会話が積み重なっていけば、コツが習得できます」
ただし、やみくもに鍛えるのは逆効果。取り組む際に注意すべきなのは自分にとってつらい、苦しいと認識するトレーニングは避けるべきということ。効率が著しく下がるのだ。
「モチベーションも下がりますし、ストレスによって脳の働きが落ち、記憶力そのものが低下してしまいます。学校の授業がその例です。数学が好きな子はテストの点数がどんどん上がっていきますが、数学に興味がない子や苦手な子は点数が伸び悩むことと同じです」
藤井も将棋に対する探究心やおもしろがっている様子は報道の端々からうかがえる。彼の強さの秘訣の1つは、間違いなく将棋を楽しんでいることだろう。