健康

女性の不調解決に注目の「膣ハイフ、経血カップ、ピル」 使い方には間違った認識も!正しい健康知識を医師が解説

 女性の体や健康に関する情報や予防策、治療法は、どんどん新たなものが登場する。近年注目されている「フェムテック」もそのひとつだが、体を痛めるものもあると医師が語る。「膣ハイフ」や「経穴カップ」など女性ならではの治療やアイテムには注意が必要だという。女性のための正しい健康情報を専門医に教えてもらった。

注目の「フェムテック」だが体を痛めるものも?

 初潮、妊娠出産、閉経に伴う更年期──ライフステージが変化するごとに生じる女性の不調や苦痛を、テクノロジーの力で解決しようとする「フェムテック」が近年、注目を浴びている。下着からサプリメント、アプリまで、さまざまな分野の製品やサービスが開発されているが、その中にはかえって不調を招くものも少なくない。

 ワーカーズクリニック銀座院長で産業医の石澤哲郎さんが解説する。

「特に注意してほしいのは、腟に対して行う『ハイフ(高密度焦点式超音波療法)』です。腟の内部に強い熱エネルギーを持つ超音波を当てて、皮下組織を収縮させることで腟を引き締め尿もれ対策になるともうたわれていますが、美容目的で行われるものには法的な規制がなく、やけどや神経障害の事故も報告されています」

経血カップはリスク大

 ナプキンやタンポンと並び“第三の生理用品”ともいわれる経血カップも、使い方次第では大きなリスクが伴う。

「経血カップは、生理中に腟内に挿入し、経血をためるシリコン製のグッズです。欧米では認知度も高く、実際に使っている人からは、ナプキンのようにムレたりせず頻繁に取り替えなくても快適に過ごせるとの声を聞きます。しかし、長時間使用するなど衛生管理が不充分だと、細菌感染によるショック症状である『トキシックショック症候群』が生じて手足を切断しなければならなくなったり、最悪の場合は死に至る危険すらあります」(石澤さん)

低容量ピルは間違った知識が蔓延

 避妊に加え、生理痛やPMSの軽減にも効果がある低用量ピルも、オンライン処方が広がり一般的になった。社員への福利厚生として服用費用を補助する会社もある一方で、間違った知識も蔓延している。

「よく“ピルが不妊や乳がんの原因になるのでは”と心配する人がいますが、それは間違った知識です。一方、子宮頸がんのリスクは長期服用でわずかに高まる可能性がありますが、HPVワクチン接種での予防や婦人科検診での早期発見が可能です」(石澤さん)

 婦人科系の不調を軽減するために、薬などに頼らず血の巡りや内臓の冷えに気を配り、ケアしようとする女性も多い。しかし実際には体を冷やすと婦人病リスクが上がるというのは誤りだという。産婦人科専門医の宋美玄さんが言う。

「そもそも人間は体の温度を一定に保つ恒温動物なので、冷たいものを口にしても体温は変わらないし、内臓が冷えることはありません。よく妊活目的で子宮を温めようとする人がいたり、『冷えると難産や逆子になる』と心配する人がいますが、エビデンスはまったく存在しない。よもぎ蒸しなど体を温めるためのセルフケアもリラクセーション目的でやるならかまいませんが、医学的な効果はないうえ、低温やけどになる危険もあります」

子宮がん検査は見極めが重要

 病気を予防するためには定期的な検診が欠かせないというのが定説だが、その中には不必要なものもある。

「子宮体がんの検査は子宮内に器具を挿入して手探りで細胞を採取するため、精神的苦痛と痛みが相当大きいうえ、感染症のリスクもある。精度も低く、受診率と死亡率を関連づけるエビデンスはない。不正出血などの症状があり、罹患が疑われる人以外は無理に受ける必要はありません」(宋さん)

 ただし、子宮頸がんの検査はしっかり受けるべし。東邦大学医療センター大橋病院・産婦人科医の高橋怜奈さんが言う。

「特に更年期になると子宮頸がんにならないと考えて、検診を受けなくなる人がいますが、それは大きな誤りです。確かに子宮頸がんは性行為で感染するヒトパピローマウイルスが原因です。しかし現在、性交渉をしていなかったとしても過去1回でも経験があれば、10年、20年後にがんに罹患する可能性は大いにあり得るのです」

 婦人科の病気において勘違いが多いのは検査だけにとどまらない。成城松村クリニック院長で婦人科医の松村圭子さんは、更年期障害の治療についても誤った認識が多いと指摘する。

「多くの人が更年期の症状をがまんしてやりすごしていますが、日常生活に支障が出るならば、何らかの治療はすべきです。特にホルモン補充療法を“乳がんリスクがあるから”と敬遠する人が多いですが、実際には上がるとしても肥満や喫煙によるリスクと同等か、それより低いことがわかっているので、気にかけるとしたら治療よりも生活習慣です」

教えてくれた人

石澤哲郎さん/ワーカーズクリニック銀座院長で産業医
宋美玄さん/産婦人科専門医
高橋怜奈さん/東邦大学医療センター大橋病院・産婦人科医
松村圭子さん/成城松村クリニック院長。婦人科医

※女性セブン2023年3月30日・4月6日号
https://josei7.com/

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