ホルモン補充療法、漢方薬、腟トレ・セルフマッサージ…更年期の最新対処法を専門家が解説
更年期症状の最新治療方法や対処法を専門家にリサーチ! 「しんどいけど、こんなものかな…」と更年期が過ぎ去るのをじっと耐えて過ごす時代はもう終わり。気になる症状がある人も、これからの人も、読んで更年期に備えましょう。
「ホルモン補充療法(HRT)」最新事情
「こんなに楽になるんだったら、もっと早くやればよかった」という声が多く聞かれるというホルモン補充療法。がん経験者でなければ積極的にトライする価値はありそうだ。
「ホルモン補充療法は、更年期に激減してしまった女性ホルモンを少量ずつ体に入れることで、さまざまな更年期の不調から解放され、更年期からゆるやかに老年期へと移行できます。
皮膚から吸収させるものにはパッチとジェルがあり、肝臓に負担がかかりにくいのと、血栓症の副作用が少ないのが特徴です。飲み薬タイプもあります。
忙しい40~50代を更年期障害に煩わされることなくアクティブに過ごしたい人にこそ、積極的に取り入れてほしい対処法です」(丸の内の森 レディースクリニック 院長 宋美玄[そんみひょん]さん)。
ホルモン補充療法の気になるQ&A
【Q】乳がんのリスクが高まるのでは?
【A】ゼロではないけれど、通常のがん検診を受けていれば大丈夫
「リスクはわずかに増えますが、もともと日本人の乳がんは、70才までに1割の人がかかりますし、ほかの要因でなる方が圧倒的に高いのです。治療のメリットの方が大きいと思います」(宋さん)
【Q】一生続けないといけないの?
【A】やり続けるのがおすすめです
「以前は続けても5年程度といわれていましたが、現在、期間に制限はありません。投与をやめるときも、少しずつ量を減らしていくことで、ホルモンが激減する更年期の症状を起こりにくくします」(宋さん)
「漢方薬」婦人科で保険適用で処方可
「ホルモン補充療法に抵抗がある人や、乳がん経験者などでホルモン補充療法が受けられない人には漢方治療をお勧めしています。
婦人科での処方は保険適用ですが、薬局で購入できるもので効果を試してみても」(宋さん)
漢方名/更年期障害のおもな症状
●加味逍遙散(かみしょうようさん)
体力は中等度以下。のぼせ感があり、肩がこり、疲れやすい、精神不安、いらだち、不眠症など
●温経湯(うんけいとう)
体力は中等度以下。手足がほてり、唇が渇く、不眠など
●五積散(ごしゃくさん)
体力は中等度またはやや虚弱。冷え、頭痛など
●桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
比較的体力があり、肩こり、頭痛、めまい、のぼせて足が冷える、肩こりなど
●温清飲(うんせいいん)
体力は中等度。皮膚はかさかさして色つやが悪く、のぼせ、神経症など
●当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
体力虚弱。貧血の傾向があり、疲労しやすい、むくみ、冷え症など
「食養生」食べ物で症状を緩和
更年期の不調が出たら婦人科や女性泌尿器科にかかりつつ、自分でできることを取り入れるのも、不調を取り去る近道。続けることで症状を緩和できる、自己防衛&改善策をご紹介。
「中医学では更年期障害の原因を、栄養を運んで情緒を安定させる『血』の不足と、ホルモンや水分の代謝などをコントロールする『腎』の弱りにあると考えます。
自分がどの体質なのかを知り、体質に合った食材、避けたい食材を知って補い養っておけば、更年期の症状はある程度軽減することができるのです」(漢方家 櫻井大典[だいすけ])さん
体質・症状別・おすすめの食養生
【腎陰虚(じんいんきょ)】
体の潤いが不足するので乾燥しやすく、火照りやすいため寝汗もかきやすい。頬の周りが赤くなりやすい。
夕方近くなると微熱っぽくなる。のぼせやすいのでイライラしやすく、尿の量は少なくて色が濃い。月経では経血量が少なめ。瘦せ型が多い。腎が弱いので足腰がだるい。聴力の低下や耳鳴りが起きやすい。目が乾燥しやすい。
◎おすすめ食材…鴨肉、すっぽん、緑豆、冬瓜
×避けるべき食材…羊肉、にら、唐辛子、揚げ物、熱いものや辛いもの
【腎陽虚(じんようきょ)】
腎陰虚の逆で、温める力がなく、冷えやすいため、むくみやすく、トイレが近くなる。
疲れやすくて、体内の水はけが悪くなるので経血量やおりものも多い。精神的にも肉体的にも、無気力で元気がない。
寒がりで手足が冷えやすく、足腰も冷えてだるい。顔色が白い、軟便や下痢傾向。多尿で尿の色は透明で、夜間の頻尿も。
◎おすすめ食材…羊肉や牛肉、にら、しょうが(体を温めてくれる)
×避けるべき食材…生ものや冷たいもの、梨、スイカ、緑茶
【気滞(きたい)】
ストレスがたまりやすく、イライラして怒りっぽいので、のぼせやほてりも多い。せっかちで落ち込みやすく、憂鬱や情緒不安定になりやすい。
ストレスや不満が多い生活をしている人に多い。胸がざわざわして眠れない。脇腹が張ったような痛みや、お腹が張りやすいので、ゲップやおならが多い。手汗、脇汗が多く、多汗の傾向。
◎おすすめ食材…大豆、鶏肉、しいたけ、ナツメ、はちみつ
×避けるべき食材…生の大根
【心脾両虚(しんぴりょうきょ)】
「脾」(主に胃腸)が弱まるので消化力が落ち、エネルギーや血液が不足しているので、疲れやすく思い悩みやすい。
不安感が強い。無気力。食欲不振、泥状の便が出やすい。ぶつけていないのにあざができやすい。
唇の色や爪の色が薄く、爪の半月がほとんどなく割れやすい。二枚爪になりやすい。月経過多もしくは極端に少ない。
◎おすすめ食材…ゆり根、黒きくらげ、大豆、黒豆などの豆類
×避けるべき食材…脂っこいもの、冷たいもの、甘い菓子類
【瘀血(おけつ)】
血液がドロドロして巡りにくくなった状態。痛む、しこりがある、黒ずむというのが三大特徴。生理痛がひどい、肩こり、頭痛などが強く、固定痛(いつも同じ場所が痛い)や、刺痛(刺されたような痛み)が起こりやすい。筋腫や嚢(のう)腫、痔、下肢静脈瘤がある。
顔のくすみ、シミやクマが多い。顔がのぼせて足は冷える。唇や歯茎の色が紫。
◎おすすめ食材…青魚、玉ねぎ、柑橘類、酢
×避けるべき食材…脂身の多い食材
→その不調、未病のうちに…頼りにしたい漢方の力|漢方薬局お試しルポ
「腟のセルフマッサージ」更年期世代の新習慣
「腟マッサージに抵抗がある人は多いのですが、毎日お風呂上がりにやると、腟内の乾燥が明らかに好転。必ず専用オイルやローションを使いましょう」(女性医療ジャーナリスト・増田美加さん)
市販薬・塗り薬・専用コスメを厳選
●バストミン(R)/ヒメロス(R)
不足した女性ホルモンを皮膚から少しずつ補充するクリーム。
腕、足、腰、外陰部への塗布に。バストミン(R)3960円、女性の更年期障害・不感症対策に、腟粘膜に塗布する軟膏。ヒメロス(R) 3850円/ともに指定第2類医薬品 大東製薬工業 電話:0120-246-717
●ボディーウオッシュ サマーズイブ フェミニン 泡ウォッシュ
デリケートゾーン用の、やさしさにこだわったふんわり泡タイプのボディーウオッシュ。1320円/ピルボックスジャパン 電話:03-6804-2922
●ローション YES インティメイト・ モイスチャージェル VM
更年期世代だけでなくすべての女性に使ってほしい、デリケートゾーンに潤いを与える保湿ジェル。3520円/アジュマ 電話:0120-953-129
●オイル テ・ルーチェ フェイス &ボディ センシティブ オイル <美容オイル>
赤ちゃんから大人のデリケートゾーンまで、肌を保湿し柔軟に整える天然由来のオイルをブレンド。4950円/テ・ルーチェ 電話:03-3408-1799
→日本はSEX後進国!? 高齢者こそ「膣ケア」を。その重要性を第一人者が解説
腟&骨盤底筋トレーニングで引き締め
「出産や加齢でダメージを受けた骨盤底筋や緩んだ腟を『コアマッスルトレーニング』で正しい位置に戻すことで、尿もれ、頻尿を防止。
さらに、姿勢の美しい女性に近づきます」(LUNAヘルススタジオ骨盤底筋エクササイズ指導者・堀江綾さん)
★やさしいスクワット
【1】足を肩幅に開いてまっすぐ立つ
【2】ゆっくり後ろにしゃがむ
【3】上下に5回バウンドする
★腟が締まるランジ
【1】足を肩幅に開いてまっすぐ立つ
【2】右足を1歩前に大きく踏み出して、戻す
右足を大きく1歩前に出して戻すを5回繰り返し、5回目は足を前に出した状態で5秒キープ。
【3】上下に5回バウンドする
【2】でキープした姿勢から、「ハッ、ハッ」と息を吐きながら、上下に5回バウンドする。左足も同様に行い、左右2セットずつを1日2回程度行う。
教えてくれた人
丸の内の森 レディースクリニック 院長・宋美玄(そんみひょん)さん
産婦人科専門医、医学博士、FMF認定超音波医。大阪大学医学部医学科卒業。周産期医療、女性医療に従事するかたわら、テレビ、インターネット、雑誌、書籍で情報発信を行う。
女性医療ジャーナリスト・増田美加さん
漢方家 櫻井大典(だいすけ)さん
成城漢方たまり 漢方コンサルタント。国際中医専門員A級資格取得、日本中医薬研究会会員。漢方関連のTwitterが話題でフォロワー数は15万人超。近書に『気楽に、気うつ消し』(ワニブックス)。
堀江綾さん/LUNAヘルススタジオ骨盤底筋エクササイズ指導者
●更年期をセルフチェック 更年期障害にならない人もいる?予防法は?Q&A【医師監修】