米スタンフォード大学が認めた注目の「温冷入浴法」疲労回復効果を医師が解説
アスリートや海外セレブがスポーツなどの後に氷を入れた水風呂につかる「アイスバス」が流行しているが、「過度な冷却は危険だと、医師は語る。今注目なのが「スタンフォード大学も認めた入浴法」だという。体は冷やすべきなのか、温めるべきなのか、最新の健康事情をリサーチした。
アスリートや一部の海外セレブの間では、スポーツやワークアウト後に氷を入れた水風呂につかる「アイスバス」が流行している。筋肉を収縮させることで、筋肉痛や疲労の回復速度を速めることができるというが、ここまで極端に体を冷やすことは、あまりおすすめできない。
国際未病ケア医学研究センター長で医師の一石英一郎さんが解説する。
「過度な冷却は急激な血流の減少を招き、かえって細胞にダメージを与える可能性があります。特に、心疾患を抱えている人や血管が弱い人は注意が必要です。適度な冷却であれば、ある程度の効果は見込めますが、アイスバスによる筋肉の修復効果は期待できず、疲労回復はプラセボ(暗示)だという報告もあります」
ひたいには太い血管がないため、発熱時におでこを冷やすのも、気分不快を緩和するだけで、直接的に熱を下げる効果はないとされる。
一方、医学的に効果が認められているのが、古代ローマでも行われていたとされる「温冷交代浴」。その名のとおり、40℃前後のお湯と、25℃前後の水に交互につかる入浴法だ。
「多数のアスリートが活躍している米スタンフォード大学のスポーツ医局が効果を認めたことで、近年注目を集めている入浴法です。血管の拡張と収縮を交互に繰り返すことで、いわば“血管のマッサージ”効果が得られます。これにより血行促進のほか、疲労回復効果が期待できるのです」(一石さん)
「脳と内臓」を冷やせばよく眠れる
さらに、入浴を就寝の90分前に済ませておくと、体が“冷える”ことで、睡眠の質を上げることにもつながる。入浴後は体の内側の「深部体温」が一時的に上がり、少しずつ下がることで自然な眠気が訪れ、スムーズに入眠できるようになるからだ。日本人の休養事情に詳しい、医学博士で日本リカバリー協会代表理事の片野秀樹さんが話す。
「深部体温を下げるには、入眠時に体表面や手先・足先から熱を放散する必要があります。スムーズに体温を下げられるよう、手首や足首を締めつけるような寝間着は避けて、できるだけゆったりとしたものを選ぶのがいい」
深部体温は、胃腸などの内臓だけでなく、脳の温度も重要だ。鍼灸師・整体師でTH東洋総合治療センター代表の外山仁さんは、秋は特に、体の内側に熱がこもりやすい時期だと話す。
「秋は気温が下がることで毛穴が閉じて、汗をかきにくくなります。そのため、熱を放散しづらく、特に頭に熱がこもりやすい時期なのです。そのため、タオルなどに包んだ氷枕や保冷剤、首に巻くタイプの冷感剤などを使って、頭部を冷やすのがおすすめです」
頭部内熱を下げるには、室温を上げすぎないことも大切だ。冷たい空気を鼻から吸い込むことで鼻腔の奥が冷やされて間接的に“脳冷却”ができ、睡眠の質を上げることができる。ただし、あくまでも冷やすべきなのは頭だけで、基本は「頭寒足熱」だ。手先・足先からの熱の放散は妨げず、かといって、睡眠中は首から下を冷やしすぎてはいけない。
冷え症改善には靴下よりも足湯
眠れないほどの冷え症の人は、足湯などで足先を温めてから、しっかり布団をかければ、体を冷やさずに眠りにつくことができる。
「就寝時の靴下や手袋は血行を妨げ、かえって眠りの質を下げる可能性があります。靴下をはくなら、足先を切ったものにすれば、熱放散を妨げずに、もっとも冷えやすい足の甲は温めることができます。冷えがひどい場合は、寝る前に20分ほどの足湯がおすすめです。できれば、湯船にお湯を張って、服を着たままひざ下までつかるようにしてほしい」(外山さん)
これからの時期は、電気毛布や湯たんぽなどを使って体の冷えを防ぐのも、もちろん有効。だが、使い方には注意が必要だ。心地よく感じる程度の温度でも、皮膚の同じ部分が長時間触れていると、低温やけどを起こすことがあると、一石さんは言う。
「気づかないうちに皮膚の深いところまで達して大やけどになってしまい、見た目よりも重症に至っているケースも少なくありません。電気毛布はタイマーを設定し、湯たんぽは厚手のタオルなどでくるんで固定するなどの対策を忘れないでください。そもそも、“温かい” “冷たい”といった感覚には、個人差があります。同じ冷え症でも、靴下をはいた方が温かく感じる人もいれば、裸足の方が血行が改善して寝つきがよくなる人もいる。いろいろな方法を試してみて、自分にとってもっとも心地よいと感じるやり方が、あなたにとっての正解です」(一石さん)
疲れたら温めて、痛いところは、まず冷やす。そして、寝る前は頭寒足熱。この原則にのっとって、自分にとって最適な方法を探してみてほしい。
教えてくれた人
医師の一石英一郎さん/国際未病ケア医学研究センター長、片野秀樹さん/医学博士で日本リカバリー協会代表理事、外山仁さん/鍼灸師・整体師、TH東洋総合治療センター代表
※女性セブン2022年10月27日号
https://josei7.com/
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