猫が母になつきません 第290話「ハブられる」
「ハブる」というのはいわゆる若者言葉で「仲間はずれにする」という意味です。語源は「省く(はぶく)」からとか「村八分(むらはちぶ)」からとか諸説あるようです。母はハブられているのか?もちろん違います。使い慣れているはずのガラケーの使い方がわからなくなってきて、だれかに電話やメールをしようとしているときに誤って登録した連絡先を消してしまうことがよくあるのです。そして母はその番号の相手が母の携帯に電波を使って侵入してきて、自分に連絡できないように消したのだ、と思い込んでいます。「自分で消したんだってば」「もう私はのけものってことね」「だからぁ…」いくら説明しても母の脳に私の言葉はまったく入っていかないので、この会話は私が付き合う限りいつまででも繰り返されます。被害妄想というのはいつも自分が被害者のストーリー。いじめられたり仲間はずれにされたりする悲しいストーリーであったとしても常に自分が主役で注目されている存在なので、現実の世界で高齢で役割のない母は被害者でもいいから主役でいたいのかな、と思います。「みんなもっと私を見ろ」ってことです。いや、見ませんよ、私以外。こんな時でもありますし。でも私じゃダメなんですよね、残念ながら(泣)
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母とくらすため地元に帰る。典型的な介護離職。モノが堆積していた家を片付けたら居心地がよくなったせいかノラが縁の下で子どもを産んで置いていってしまい、猫二匹(わび♀、さび♀)も家族に。