「人工股関節手術」はするべきか?経験者が語るメリット・デメリット
演歌歌手・天童よしみの母・筆子さんが、庭仕事中に転倒して腰を強打。両脚に人工股関節を埋め込む緊急手術を受けた。
「人工関節手術」は年間10万人が受けている
筆子さんが受けた「人工関節手術」は、高齢女性を中心に年間10万人以上が受けるポピュラーな手術である。吉田整形外科の吉田雅之院長が指摘する。
「人工関節手術を受けることが多い病気は、『変形性股関節症』です。股関節のクッション役である軟骨がすり減ることで関節の動きが悪くなる病気で、炎症と強い痛みを伴います。悪化すると股関節が曲がらず、靴下が履けない、足の爪が切れないなど生活に支障をきたすだけでなく、最悪の場合、歩けなくなることもあります」
同様に膝の関節にある軟骨がすり減る『変形性膝関節症』を患って、人工関節の手術を受けるケースも多い。
いずれの場合も手術では、すり減った軟骨の部分をチタンやプラスチックなどでできた人工関節に置き換える。手術を受ける8割が女性だ。そもそも女性は男性に比べて関節が緩く、周囲の筋力も弱いので、変形性股関節症になりやすいといわれている。
「また、閉経後の女性はホルモンの分泌が低下し、骨粗しょう症で骨が脆くなりやすい。転倒して関節近辺の骨が折れれば動けなくなります。そのため、人工関節にする女性が多いんです」(前出・吉田院長)
「ジム通いも完全復帰した」やってよかった派
手術は痛みを取り除き、以前のように歩けるようになることが目的だが、“効果”は人によって異なるという。そのため、この手術を受けるかどうかは、患者の間で論争になることが多い。変形性膝関節症で人工関節手術を受けた74才の女性は「やってよかった派」の1人。
「70代になってから膝が痛く、歩くのも億劫になったので、思い切って手術を受けました。私は術後の痛みもなく、体内に”異物”が入っているという違和感もありません。病気になる前と同じように自転車に乗ることもできます」
65才の男性も手術に満足だ。
「昔から筋トレが趣味でしたが、変形性股関節症になってから下半身を鍛えることができなくなり、大きなストレスでした。手術で人工関節を入れてからはジムに完全復帰し、主治医と相談しながら下半身の筋トレを続けています」
「術後も正座ができない」やらなければ良かった派
一方で「やらなければよかった派」もいる。1年前に膝を人工関節にした84才女性は手術したことを後悔している。
「手術から1年経っても膝の違和感がなくなりません。膝が動く範囲も狭くなったので体を動かすこと自体が手術前より少なくなりました。今は杖を使って生活しています」
68才の女性も浮かない顔だ。
「2年前に人工股関節の手術を受けましたが、それ以来痛くて、正座をすることができません。そのため、掘りごたつをよく利用するのですが、足を入れるときや立ち上がるときに人に支えてもらわないといけないので、無様に感じてしまいます。長い距離を歩いたときも、だるさを感じます」
術後の体重増加は要注意と識者
人工関節手術の最大のリスクは「患部のすり減り」だと吉田院長が指摘する。
「昔は10年程度しか耐用年数がありませんでしたが、最近の人工関節は20年以上持つものもあります。ただし関節の可動する部分は人間の軟骨と同じように長期間かけてすり減っていくこともあり、人工関節部分と骨との間に少しずつすき間ができるなどで痛みが生じるケースもある。場合によっては、人工関節の入れ替え手術が必要になることもあります」
術後に気をつけるべきは「体重の増加」だという。
「体重が重くなれば、人工関節にかかる圧力が強くなり、すり減り方が早くなることがあります」(吉田院長)
手術をするか否か、主治医や家族としっかり相談して決めてほしい。
※女性セブン2018年8月16日号
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