おいしい【介護食】を!注意が必要な食材の調理法をイラストで解説

 今まで食べられたものが噛めない、飲み込めない―食べる力は加齢によって衰えていくもの。おかゆや流動食にして“食べさせる”方法もあるけれど、食べることは“楽しみ”でもありますよね。その幸せを奪わないために、見た目もよくておいしくて、そして食べやすい料理の作り方を、一緒に覚えませんか?

 口から食べるというのは、単純に噛んで飲み込むという動作に留まらない。口、舌、頬、首の筋肉を使い、五感をフル活用して脳を刺激し、消化吸収を経て体内に栄養を取り込むのだと話すのは、リハビリ専門医の藤谷順子さんだ。

「噛む力が弱まると、今まで食べられていた料理が硬く感じられ、食べられる料理の種類や食べる量自体が減っていきます。そうなると、低栄養状態になって体力が落ち、ますます噛む力や飲み込む力が衰えていくという、負のループに陥ってしまいます」(藤谷さん)

 また、口の中の感覚も大事なので、義歯にした当初に感じる違和感をうまく乗り越えられず、義歯を使わなくなり、その結果、噛む力が衰えてしまう人も少なくないという。そういった高齢者にも、なんとかいろいろなものを食べさせようと、細かく刻んだり、ムース状にする調理法が高齢者食や介護食には多いが、あまりおいしそうに見えない。

「残念ながら、完成した“かたい”料理をミキサーにかけると、おいしさは低下しがちです。最初からやわらかい食材を使い、やわらかく仕上げる調理を考えた方がいいんです。例えば、とろみのある中華料理やシチュー、グラタンなどは、素材や調理時間を工夫すれば、おいしそうな見た目・味のまま、高齢者のかたにも食べていただけます」

 食べやすく仕上げる方法はほかにもある。以下に注意したい食品を紹介する。

ご飯は水分を加えて

 米粒はバラバラにして口の中でまとまりにくい。飲み込みにくい時は水分を加えて。

 冷やご飯の場合、湯大さじ1~2を加えてレンジで加熱すれば、やわらかくなる。チャーハンもあんかけにすれば食べやすい。

 米粒はバラバラにして口の中でまとまりにくい。飲み込みにくい時は水分を加えて。冷やご飯の場合、湯大さじ1~2を加えてレンジで加熱すれば、やわらかくなる。チャーハンもあんかけにすれば食べやすい。

パンはフレンチトーストにして

 パンはパサパサしているので飲み込みにくい。おすすめはフレンチトースト。耳をカットし、卵液(卵1個、牛乳1カップ、砂糖大さじ1)に30分以上漬け、フライパンで焼くとしっとりして食べやすくなる。

麺類は箸で切れるくらいまでやわらかく煮て

 麺類はすすり上げた時ににむせるので注意。特に煮崩れしないよう作られた鍋用の麺は硬いので、箸ですぐ切れるくらいのやわらかさまで煮る。パスタはスパゲティよりマカロニなどのショートパスタを選び、よくゆでること。 

もちは窒息する危険が。白玉粉もちで代用を

 粘り気が強くて弾力があるもち類は、うまく噛み切れないまま飲んでしまうと、喉につかえて、窒息する危険性がある。もちの代わりに白玉粉に豆腐などを加えた白玉もちを使うと、噛んだ時にちぎれやすく、飲み込みやすくなる。

肉はひき肉や薄切り肉を。すきやきはおすすめメニュー

 肉は加熱すると硬くなるため、厚みがあると噛み切りにくくなる。ひき肉や薄切り肉を活用するとよい。例えばすき焼きがおすすめ。肉が薄く噛み切りやすい上、生卵につけて食べれば、喉の通りがいい。

魚介は刺身や煮魚で

 刺身や煮魚はやわらかくて食べやすい。特に、筋のないまぐろやかつおがおすすめ。煮魚なら、煮汁を多めにしっとり仕上げて。焼き魚は水分が抜けて硬くなるのでNG。加工品のかまぼこやちくわも噛みにくい。

卵の加熱しすぎはNG。スクランブルエッグや温泉卵がおすすめ

 加熱しすぎると硬く、ボソボソして飲み込みにくくなるので、固ゆで卵や炒り卵はNG。半熟なら食べやすく、消化もよいので、スクラングルエッグや、つるりと食べられる温泉卵、卵とじ料理がおすすめ。

大豆製品、絹ごし豆腐や刻み納豆が〇

 油揚げや厚揚げの端や高野豆腐は噛み切りにくいので要注意。豆腐はやわらかくて喉ごしのいい絹ごし豆腐がベスト。納豆は刻み納豆が食べやすい。刺身や野菜と和えるのもおすすめ。おから煮は、水分を多めに仕上げること。

野菜はひと口サイズに切り、スプーンでつぶせるやわらかさに煮る

 皮はむき、野菜の繊維を絶つように切り、やわらかく煮るのが基本。野菜は刻むより、ひと口大のサイズでいいので、スプーンでつぶせるほどやわらかく煮た方がよい。炒める場合も、一度ゆでた野菜を使って。

きのこ類、細かく刻んで肉団子に入れる

 加熱してもやわらかくならずに繊維が残るきのこ類は、噛み切りにくいため、そのままの状態で出すのは避けたい。しいたけ、しめじなどは細かく刻んで肉団子に入れる。ぬめりのあるなめこは刻んでみそ汁に。

海藻類、わかめやのりは要注意

 乾物はしっかり戻してやわらかく煮るのが基本。もずくは長いので、喉に詰まらないよう、はさみで細かく切るといい。のりは手でもんで細かくして使うこと。わかめやのりは上あごに張りつきやすいので注意。

菓子類、粉っぽいものはNG。堅焼きせんべいは茶に浸して

 水分が少ない栗きんとんや落雁などの干菓子、粉っぽい菓子はむせやすいので控えて。堅焼きせんべいは、茶や湯に浸して食べると、しっとりして食べやすくなる。ただし、ぬれせんべいは歯にひっつきやすいので×。

教えてくれたのはこの人

藤谷順子さん
リハビリ専門医。国立国際医療研究センター病院 リハビリテーション科医長。嚥下に関する著書多数。

江頭文恵さん
摂食・嚥下アドバイザー。地域栄養ケアPEACH厚木代表、管理栄養士。在宅療養者を中心に、訪問栄養指導を行っている。

イラスト/うえだのぶ

※女性セブン2018年8月9日号

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この記事へのみんなのコメント

  • のぐちえみ

    できれば、いつまでも食事を楽しみにして欲しいから、もっと工夫して出してあげたいと思いました。毎日のことなので、つい同じ物ばかりになってしまう。反省反省。

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