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健康

マスク生活で口内炎が増加!口内の乾燥で免疫力低下、胃腸不調の可能性も【口腔外科医解説】

 マスク生活が続く中、気がつくと口の中に痛~い「口内炎」ができる人が増加中。軽いものなら数日で症状が改善するが、長引くものや痛さを感じないものは、体の不調のサインとして現れていることも。“自然に治る”と、放置しがちだが、“手遅れ”にならないために、見極めと予防が大切だ。

口内トラブルは、心身からのSOS

 感染対策で、マスクを着けている時間が増加している。「その影響で、口の中のトラブルも増えている」と言うのは、幸町歯科口腔外科医院の院長で、歯科医師・口腔外科評論家の宮本日出(ひずる)さんだ。

「マスクはコロナの感染予防対策にはとても重要なものです。鼻と口を覆って隙間がないよう、顔全体にフィットさせる。これが正しい着け方ですが、息苦しさのため、マスクの下で口を開けて呼吸をしている人が多いようです」(宮本さん・以下同)

 菓子メーカーの『ロッテ』が2020年8月に行ったアンケート調査(※)によると、「マスク着用時に、非着用時よりも口呼吸になっていると感じる」と回答した人は、44.6%だった。

(※)『ロッテ』が2020年8月25~27日に、20~60代の男女400名に行ったwebアンケート調査による。

「この口呼吸が原因で口内が乾燥し、虫歯や歯周病のリスクが高まるとともに、口臭や口内炎など、さまざまな問題が引き起こされるのです」

 そもそも口内炎とは、口の中の粘膜の炎症の総称で、痛みや不快感があるのが特徴だ。

「口の中は体のほかの部分と比べて傷がついたり、炎症が起きても、治るスピードが速い。そういう意味で、体からのSOSを発信しやすい場所だと考えられます」

 たとえば、胃に不調があって炎症が起きても、初期段階ではあまり自覚症状はない。

「ところが、口内炎なら目に見えますし、痛みも強いため気がつきやすい。そのため、さまざまな不調を自覚するために、口内炎が“SOS”を発信しているというわけです。口内炎の痛みは強いですが、通常は2週間ほどで治るため、体に大きなダメージを与えずに済む利点もあります。『口内炎ができたから治せばいいや』と単純に考えず、何が原因でできたのかを考えることが、心身の健康に大切なのです」

口腔内の乾燥で免疫力が低下する

 長引くマスク生活で口内炎ができるのは、口呼吸による口腔内の乾燥が原因だ。

「口の中の歯以外のところ…歯茎、頰の内側、舌、唇は『粘膜』でできており、唾液で常に潤っています。口呼吸をしていると、この唾液が蒸発して粘膜が乾燥し、ちょっとした刺激でも口の中が傷つきやすくなり、口内炎が発生しやすくなるのです」

 唾液には、口腔内の粘膜を覆って潤いを与えて保護し、細菌の繁殖を防ぐ役割のほか、細菌や食べかすを洗い流し、口の中の酸性度を一定に保つことで虫歯や歯周病を予防する役割がある。

「マスクは外からのウイルスなどを防御するのに大切な役割を持っています。ですが、唾液が減少した口の中だけを見ると、感染しやすい状況になっているといえます。さらにコロナ関連のストレスが増えたことが原因で唾液の分泌が落ちていることもあり、口内トラブルが発生しやすい状況にあるのが現状です。鼻には、鼻毛や鼻の奥の粘膜にある線毛がウイルスや細菌などの侵入を防ぐ、という防御機能がありますが、口にはそれがありません。唾液という免疫機能が働かなければ、さまざまな感染リスクが高まり、口内炎の発生リスクも上がります。マスクの有無にかかわらず、できるだけ鼻呼吸をして、適度に水分を摂り、口の中を乾燥させないように気をつけること。口内が唾液で満たされていれば、免疫がしっかり機能している状態といえます」

■危険なマスク&口呼吸

粘膜が傷ついて口内炎は発生する

 乾燥以外にも、栄養不足、胃の不調、免疫力低下、外傷、ウイルスや細菌、アレルギー、ニコチン──のように、口内炎ができる原因はたくさんある。口内炎の中で最も多いのは、舌や頰の内側を噛む、自分の歯や詰め物、入れ歯に強くすれる、熱い食べ物でやけどをするなど、一時的に粘膜に傷がついたことによるものだ。

「このところ増えていると感じるのは、舌の先にできる口内炎。これも、実は口呼吸が原因の可能性があります。一般的に、鼻呼吸をしていると舌の表面は上あごについた位置にありますが、口呼吸をすると舌が下がり、舌の先が歯に触っていることが多いのです。この場合、無意識のうちに舌で下の歯をこすってしまうため、舌の先端に傷がつき、口内炎ができるのです。原因が明らかで、すぐに治ればそれほど心配する必要はありません。ただ、同じ場所に繰り返しできる場合は、歯の形が尖っている、詰め物や入れ歯が合わなくなっているなどが考えられるので、歯科医に相談するといいでしょう」

消化器の粘膜へのダメージ

 消化器というと胃や腸を思い浮かべるが、そこにつながる口も消化器の一部だ。

「もともと消化器の弱い人や、疲れがたまって胃腸が弱っている人は、胃腸の粘膜に炎症が起こることがあり、その延長で口の中に症状が出て、口内炎になる人もいます。繰り返してできるときは、胃腸に不調がある可能性も考え、胃に負担をかけない食生活を心がけましょう」

教えてくれた人

宮本日出さん/幸町歯科口腔外科医院の院長、歯科医師・口腔外科評論家

取材・文/山下和恵 イラスト/小野寺奈緒

※女性セブン2021年6月17日号

●口の中が痛い時の調理のコツ|がん、口内炎など口腔内トラブル時の食事

●やわらか食の作り方|クリコ流時短のコツとやわらか牛焼肉丼レシピ

●口腔ケアの基本|ガラガラ・ブクブクうがいの違いは?舌磨きの正しいやり方は?

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