認知症リスク軽減に「インターバル速歩」「会話しながらオセロ」「地中海食」
年を重ねると、“もの忘れ”が増えるもの。そこで心配になるのが認知症だろう。くどうちあき脳神経外科クリニックの工藤千秋院長が言う。
「もの忘れが多くなってきたと思ったら、もの忘れ外来の受診を検討したり、生活習慣の見直しが必要です。記憶を司る海馬は動脈硬化による酸欠やストレスにとても弱い。ストレス状態を続けるなど、海馬に負担をかけすぎると、もの忘れが悪化し、将来認知症につながる可能性も否定できないからです」
筋トレは「頭の働き低下」予防に役立つ
つまりは海馬を鍛え、記録力を保つことが認知症になるリスクを軽減することにつながるのだ。海馬の鍛え方について、諏訪東京理科大学の篠原菊紀教授はこうアドバイスする。
「週1回でも運動すれば認知症のリスクは低下します。私は、週3回、1日30~40分の“インターバル速歩”を推奨します。2分間早歩きしたあと、2分間普通に歩くことを繰り返す方法です。有酸素運動と筋トレ効果の両方が期待できます。筋トレも頭の働きの低下を予防することに役立つんですよ」
米国・ピッツバーグ大学のカーク・エリクソン教授らの研究によれば、55~80才の認知症でない男女120人を2グループに分け、一方に週3回、1回40分のウオーキングをさせたところ、記憶力が向上したばかりでなく、海馬の体積が約2%増加したと報告されている。
ちなみに、ウオーキングをしなかったグループでは海馬の体積が1.4%減少するという結果になった。運動以外にも方法はある。
週2~3回、オセロ、将棋などを他人と会話しながら対戦
「人とのコミュニケーションや知的なレジャーが海馬を刺激し、認知機能低下予防に役立つことが報告されています。週2~3回、オセロや将棋などのゲームで他人と、ああでもない、こうでもないと頭を使い、また会話しながら対戦することをおすすめします。相手の気持ちを読むので、想像力にかかわる脳の部位も活性化します」(篠原教授)
調理などの家事、地中海食も記憶力保持に〇
また家事も脳にいい刺激を与える、と指摘するのは篠原教授である。
「掃除したり、洗濯物を干したり、こまめに動くことが全身に酸素を送ることにつながり、結果的に脳に刺激を与えてくれる。調理することは複数の作業を並行しながら行うわけですから、脳トレの一種といえるほどいい刺激になる。料理しながら栄養についても思いを巡らせることでも、脳に刺激を与えることができます。記憶力を保つには食事も大切となります。野菜や果物、魚、豆類が豊富な日本食や地中海食が記憶力保持に理想的な食事と古くからいわれています」
もの忘れ改善薬が効くのは加齢によるもの忘れだけ
昨年、「もの忘れ」に効くと謳う薬が続々登場した。森下仁丹・ロート製薬の『キオグッド』、小林製薬『ワスノン』、クラシエ薬品『アレデル顆粒』などで、いずれもドラッグストアで買える一般薬だ。
医療ジャーナリストの松井宏夫さんが解説する。
「これらの薬に共通しているのがオンジという成分。イトヒメハギという植物の根を乾燥させた生薬で、東洋医学では健忘に効く薬として古来より使われてきました。2015年12月、厚労省が『中高年以降のもの忘れの改善』に効果・効能があると認可し、相次いで発売されるに至りました。
オンジをマウスに与えたところ、脳神経細胞障害が回復する効果があったとする海外の研究結果もあります」
しかし使用する際には、注意すべきこともある。
「効果が見られるのは、加齢によるもの忘れだけ。認知症には効きません。勘違いして服用してしまうと、その間に認知症が進行してしまうおそれもあります」(松井さん)
もの忘れは日々の努力でいくらでも改善できる。薬はもちろん、脳トレなどで記憶を司る“海馬”を鍛えて、もの忘れを防ごう。
※女性セブン2018年5月31日号
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