「自分の介護を評価しないほうがいい」親の死後、後悔にさいなまれないために|700人看取った看護師がアドバイス
介護の末に親が亡くなってしまったあと、後悔にさいなまれることは少なくありません。看護師として700人以上を看取った宮子あずささんは、自身も親の介護のあと、そうした思いにかられたといいます。介護のあと、心身が回復できなくならないためのアドバイスを話してくれました。
親の死で自分を責めてしまう暗い谷に落ちないために
最近、家族を亡くしたあとの遺族のグリーフケアや介護後うつの問題が、取り上げられるようになってきました。親の介護が終わったあとに、何年にもわたって深刻なダメージを受けてしまう人は少なくありません。
親を亡くした直後に、振り返って評価しないほうがいい
私の友人にも、母親を亡くしたあと、自分を責めて気持ちがすっかり落ち込んでしまった人がいます。「母が望むことをやってあげられなかった」とひどく後悔していたのです。
たまたま私たち友人が、フェイスブックの過去の投稿を読み返したところ、そこにはお母さんと彼女の写真がたくさんありました。
「あなた、お母さんにこんなおいしいものを食べさせてあげてたじゃない」
「毎回、こんなたくさんの品数のおかずを作ってあげてたのね」
という話になって、彼女はちょっと気分も楽になったようでした。
強すぎた終末期の印象が「なんにも食べさせてあげられなかった」という記憶に
なぜ彼女がそんなことになってしまったか。あとに起こったことの印象が強いせいで、その前のことが、押しやられていたためだと考えられるでしょう。
終末期、ほとんどの人は何も口にできなくなります。家族としては食べさせたいのに食べさせられなかった。その思い出が強すぎて、してあげていたことのほうは忘れてしまうのです。
「私は母に、なんにも食べさせてあげられなかった」とばかり思い続け、「好きなものを食べさせてあげればよかったのに」と後悔してしまっていたのです。
死に向かい合った直後に、振り返って評価したりしない
人生のいろいろな局面で反省することは大切ですが、こと介護や看取りについては、反省しすぎが禁物です。
特に、看取った直後は、冷静に考えられません。振り返るのは、なるべくあとにしましょう。
「死」というものに向かい合った直後は、自分で思っている以上にパワーダウンしていて、前向きではいられない。だからそんな時に、「私の介護はどうだったのだろうか」という評価なんてしないほうがいいのです。
→終末期の症状を知っておきましょう…看取りの時に何をしてあげればいいのか
「渡る世間」のような、部外者の言葉は聞き流す
それから、ドラマの『渡る世間は鬼ばかり』ではありませんが、がんばってきた介護者を傷つける部外者が登場することもしばしばあります。
手を貸さなかった人に限って、言いたいことを言う
「おばさんはあんなに家に帰りたがっていたんだから、家で看取ってあげればよかったのに」
「もっといい病院があったのに」
などと、実際の事情も知らずにわかったようなことを言う人の言葉は、それでなくても弱っている遺族の気持ちを、暗い谷に突き落としてしまいます。
取り合っても何もいいことがないので、右から左に聞き流すことです。どういうわけか、一部分しか見ていない人、何も手を貸さなかった人に限って、言いたいことを言うのです。そんな人たちの言葉に傷ついたりしないで、忘れましょう。
→自宅で看取るということ|菊田あや子さん・金子哲雄さんに学ぶ在宅介護