シニア層に人気「電動アシスト自転車」は「軽い、乗りやすい、パワーある」が新潮流
季節はもう春。スーパーに買い物に出るにも、出かけやすい季節になってきた。“外出時の友”となるべく、電動アシスト自転車が売れている。
2011年から2016年までの5年間で出荷台数は39万台から57万台に増加し、なかでも昨年は前年比1割以上の伸びを見せ、新年度のこの時期にさらなる販売増が見込まれているのだ。
街を歩くと、前と後ろに子供を乗せて走るママたちの姿が目につくが、ママたちと同じ──いやそれ以上に中高年やシニア層の需要は高い。
「運転免許返納」で車の代わりに電動アシスト自転車を
脚力や体力が低下した体でも、坂道や長距離を楽に走れることはもちろん、近年注目されている理由は、「車の代わり」ということにもある。自転車ジャーナリストで「自転車の安全利用促進委員会」メンバーの遠藤まさ子さんが言う。
「高齢者の危険運転や、運転免許返納が大きく報道される中で、車を自主的に手放そうとする人が増加しています。でも、そうした人たちも移動手段がなければ不便なことに変わりはない。そこで車の代わりに生活の足となるのが自転車です。電動アシスト自転車はパワーがあるだけでなく、こぎ出し時でもふらつきにくく転倒防止も期待できます」
遠藤さんがこう話す通り、今、電動アシスト自転車は目覚ましい進化を遂げている。世界で初めて電動アシスト自転車が発売されたのは、1993年。ヤマハ発動機が“第1号”である『ヤマハ PAS』を世に送り出した。
「弊社は長年にわたりバイクを製造してきた歴史があり、電動アシスト自転車を手がけた当時は“自転車以上スクーター未満の新しい乗り物”を作ろうということで開発が始まりました。当初は、必ずしも女性やシニアをターゲットにしたものではなかったようです」(ヤマハPAS広報担当)
試作を重ね、“自転車以上スクーター未満の新しい乗り物”として、誕生したのが電動アシスト自転車。その価格は約15万円と、それまで私たちの身近にあった通常の自転車よりはるかに高価格だったため、シニアや富裕層を中心にシェアが広がったという。バイクやスクーターのように免許を取る必要はなく、簡単に乗ることができて、しかもパワーがある──。電動アシスト自転車市場には他社も次々と参入し、バッテリーの小型化や低価格モデルの開発、乗りやすいデザインの追求などが続けられ、拡大してきた。
そして現在、「軽い」「操作が簡単で乗りやすい」「パワーがある」の三拍子揃ったモデルが、各メーカーから多数販売されている。
タイヤが小さく軽いことで乗りやすく安全に
各メーカーのパンフレットを開くと、中高生の通学向け、子供を乗せるママ向け、スポーツタイプなど多種多様。中高年やシニア層に向けての種類も多く、製品開発には利用者の声を広く聞くなど、“中高年・シニア目線”となっている。
「開発時から中高年層の意見を取り入れてきた」というのは、パナソニックから発売されている『Jコンセプト』。小型化、軽量化にこだわったモデルだ。
「デザインを決める段階からいわゆる“目利き世代”である50代、60代のかたに多く意見を聞き、乗り心地についても実際に試乗していただきました。走行感や乗り降りのしやすさなど、評価いただいています。
中高年のかたが重要視されていることの1つに車体の軽さがあります。『Jコンセプト』は、フレームや車輪の素材にはアルミを採用し、軽さを追求。当社の電動アシスト自転車で最軽量を実現しました。ちょっとした段差で車体を持ち上げる時や押し歩きするときなども、とても軽く持っていただけます」(パナソニック広報担当)
電動アシスト自転車=重い、というイメージはあるが、それが少しでも軽くなれば、駐輪場に停める時や、何かのはずみで車体を倒してしまった際にも動かしやすくなる。
ブリヂストンの『アシスタユニプレミア20』も軽さと小ささにこだわり、中高年に人気のモデルで、この春には新色も発売される。『Jコンセプト』と同様、タイヤ径が20インチと小さく、軽さを追求した。タイヤが小さいと、何度もこがなければいけないと思いがち。でも、アシスト力があるため、心配する必要はない。
「重量も軽くてまたぎやすいのが、『アシスタユニプレミア20』の特徴です。中高年のかたが電動アシスト自転車に乗られる際には、何か障害物があったときにブレーキを踏んで、ぴたっと止まるということが重要になってくると思います。サドルの位置も低いので、座ったままでも足がつきやすく、何かあったときにキュッとブレーキを踏んでピタッと両足を地面につけることができるため、乗りやすさだけでなく安全性も向上します」(ブリヂストン広報部)
実際に『アシスタユニプレミア20』の購買者は中高年が多く、利用者からは「コンパクトで足つきもよく、軽い」という声が届いているという。
軽量、安全性など、機能はもちろん大切。だけど見た目にもこだわりたいのが本音。ヤマハ発動機が販売する『PAS Mina』は子育てがひと段落し、“自転車を自分のために選びたい”という女性にぴったりのモデルだ。
「レトロなデザインのスプリングベルや、クラシカルなペダル、ママチャリとは違う雰囲気で乗車姿勢も美しく見えるプロムナードハンドルなど、北欧テイストも取り入れ、デザイン性にこだわっています。前部分につけるバスケット(かご)など、別売りのアクセサリーも充実していて、“自分仕様”にカスタマイズをお楽しみいただけます」(前出・ヤマハPAS広報担当)
もちろん、乗り心地がいいのは大前提。
「タイヤを太めにしているので、乗っているときの安定感も好評です。バッテリーの残量などを表示する液晶画面にはこれまでありそうでなかった時計表示がつき、利便性も向上しました」(同前)
※女性セブン2018年3月29日・4月5日号
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