入居後は元気になる「高齢者向けのシェアハウス」的サ高住<前編>
銀木犀・浦安
自分自身や家族の住まいとして、サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)にはどのような利点があるのだろうか。「自宅よりも常に人の目があって安心できる」「他の入居者との交流が少ないので煩わしくない」「入居時に費用がかからないので入りやすい」など重視するポイントによってもメリットは変わってくる。
今回ご紹介する「銀木犀(ぎんもくせい)」の事業主である「株式会社シルバーウッド」は、東京都と千葉県で8つのサ高住を運営している。2018年4月には新たなサ高住を千葉県八千代市にオープン予定だ。他にも東京都と神奈川県で1つずつグループホームを運営している。
銀木犀には介護事業所が併設されているので、要介護5、寝たきり、認知症の状態でも入居が可能だ。定期的に医師が往診してくれるので、日常の健康管理、緊急時の対応も安心できる体制が整えられている。また、バーチャルリアリティ(VR)の技術を活用し、認知症ではない人が認知症の中核症状を体験できる「VR認知症プロジェクト」など先進的な取り組みも行っている。
「高齢者向けのシェアハウス」の意味するところ
高齢者が自宅を離れて新たな住まいを探す際に重視したいのが、他の入居者との関係だ。特別養護老人ホーム、介護付き有料老人ホーム、サ高住など施設を選ぶ際には、そこが集団生活であることを忘れてはならない。周りにどのような人がいるのか、入居者同士がどういった人間関係を築いているかなどは日常生活の大きな要素となる。サ高住は他の施設と比較すると集団生活の要素が少ないが、それでも部屋を一歩出れば共用スペースで他の入居者と顔を合わせ、食事時には同じ空間で時間を共にする。
銀木犀を「高齢者向けのシェアハウス」だと考えるとイメージしやすいと教えてくれたのは、銀木犀・浦安所長の麓慎一郎さんだ。
「銀木犀を表す一番分かりやすい表現が、『高齢者のシェアハウス』です。入居者の方同士で助け合って、それでもダメな時にはじめて我々職員が手を出します」(麓さん。以下「」は同)
高齢者向けの施設では、入居者に危険が及ばないように職員が先回りをしてそのリスクをできるだけ排除していることが多い。例えば、椅子から立ち上がる際に転倒しないように身体を支える、熱い飲み物をこぼしてヤケドをしないように配膳・下膳をする。これは決して悪いことではない。しかし、あまりにも手助けをしすぎてしまうとデメリットも出てきてしまう。
「ケガなどのリスクを下げるために職員がなにもかもをしてしまうと、どんどんその方の身体機能や生活意欲が下がってしまいます。せっかく自分で何かをしようとしているところに毎日ダメだと言われてしまうと、やる気を失ってしまいますよね。『危ないですよ。座っていてくださいね』と言われ続けると、自分で何かをしてはいけないと思うようになってしまいます。そうすると、今までできていたことができなくなってしまい、いずれ寝たきりになってしまいます」