おむつや胃ろうはまっぴらごめん “未来型シニアタウン”居住という選択肢
介護が必要になってから慌てて施設などを探しても、希望がかなうのは難しい。国際医療福祉大学教授の高橋泰さんは、老後の暮らしを次のように考えている。
「老いを迎えて活動範囲が減っても、食事や家事援助などの外部サービスを組み合わせれば、自立した生活が送れます。本人の人生プランに沿った生活が続けられるように、国や周りがサポートすべきだと思います」
今後、人の死に方は劇的に変わる。終戦時に成人だった人は“生き残った自分は1分でも長生きする”と、延命を希望していた世代。だが、現在80才以下の7~8割は、おむつや胃ろう処置をしてまで生きるのは、まっぴらごめんと考える人が増えているという。
「寝たきりを望まず、死の直前まで自力でトイレに行き、食べられなくなったら諦める死に方が、世界的には多いのです。本人が望めばそのような最期もいいと思います」(高橋さん)
今の住まいを離れ、サポート体制の整った場所に移住
住み慣れた場所で最期まで暮らすのもいいが、今の住まいを離れ、サポート体制の整った場所に移住するという選択肢もある。
それが未来型シニアタウンだ。高齢者や障害者など、異世代と共生する石川県の『シェア金沢』や、就労や文化活動をしながら生活し、2つの地域での居住も可能な栃木県の『ゆいま~る那須』など、全国的に広がりを見せている。
その1つ、千葉市稲毛区にある『スマートコミュニティ稲毛』は、シニアが元気を維持しながら楽しく暮らすことを目指しており、入居希望者が後を絶たない。
「朝9時半のラジオ体操に始まり、昼間の時間帯は、絵画や陶芸、和太鼓、脳トレの時間や百人一首、バランスボールなど、元気になりそうな講座を50種以上用意しています。住民による独自のサークル活動も盛んです。住居とレストランは約500m離れていて、生活の中で運動してもらおうと、食事のために朝晩2回の往復移動で約7000歩を歩けるように設定しています」(スマートコミュニティ社長・染野正道さん)
居住者50名ほどでスタートした当初は、人間関係が濃すぎてトラブルもあったが、大学のキャンパスのような広い空間に700人以上が暮らす今、人間関係も良好になったという。夫の三回忌を終え、ひとりで入居した佐藤愛さん(仮名・67才)は言う。
「介護が必要な人が大半のシニアマンションは、必要以上に老け込みそうで不安でした。でも、ここには歩いて食事にくる90才の先輩もいて、元気をもらえます」
入居資格は50才以上。フルタイムで仕事をしている人や、高齢の母と息子が入居しているケースもあり、入居希望者も増えている。
※女性セブン2018年2月1日号
【データ】
スマートコミュティ稲毛:http://www.smartcommunity.co.jp/
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