注目「飲食料品の消費税1%」高齢者世帯への影響は?何が対象になるの?老人ホームの食費はどうなる?【FP解説】
物価高騰で注目される「飲食食料品の消費税を1%に」――来春から実施される予定となっているが、高齢者や介護が必要な人にとってどんな影響があるのか。気になる「消費税1%」にまつわる素朴な疑問ファイナンシャルプランナーで行政書士の河村修一さんに解説いただいた。
この記事を執筆した専門家
河村修一さん/ファイナンシャルプランナー・行政書士
内外資系の生命保険会社を経て、2011年に母の介護経験をもとに介護者専門FPとして独立。その後、2018年にカワムラ行政書士事務所を開業。介護や相続、親の介護をめぐる家族会議支援など、将来に備えるサポートを幅広く行う。https://www.kawamura-fp.com
「消費税1%」どうなる?いつから?
消費税について振り返ってみると、まず令和元年10月1日から消費税及び地方消費税の税率が、8%から10%に引き上げられました。それと同時に「酒類・外食を除く飲食料品」などを対象に、消費税8%にとどめる「軽減税率」が実施されています。
現在この「軽減税率」が適用されている「飲食料品」について、来年の4月1日から2年間という期限付きで、「消費税を1%に引き下げる」ことが閣議決定されました(9月15日時点)。
ただし、現時点では1%への引下げが確定したわけではありません。今後、国会で関連法案が審議され、可決・成立した場合に実施されることになります。
対象になるものは?
現在「軽減税率」が適用されている(消費税1%の対象になる可能性のある)飲食料品とは、どんなものがあるのでしょうか。高齢者や介護が必要な人に影響がありそうなものを中心にピックアップしてみましょう。
食品や飲料など
飲食料品とは、「人の飲用または食用に供されるもの」とされ、たとえば米や野菜、肉、魚、パン、菓子、飲料などが該当します。普段の食生活にかかわる食材や飲物の多くが対象となる予定です。
出前や宅配、テイクアウト
出前や宅配で届ける飲食料品や、テイクアウトで持ち帰る飲食料品も対象となっています。ご高齢のかたはお惣菜などもよく購入されるかもしれませんが、スーパーやデパ地下などで購入したお惣菜も対象となります。
また、調理や買い物が困難になった高齢者世帯では、高齢者向けの宅配弁当を注文しているかたもいらっしゃるかもしれませんが、こちらも対象となります。
コンビニのホットスナックを購入した場合、持ち帰る場合は対象となりますが、イートインスペースで食べる場合は対象外となるため、購入時に店員さんに確認しましょう。
一体資産
このほか、食品と食品以外のものがセットになっている「一体資産」と呼ばれる商品で、税抜価額が1万円以下、食品の価額の占める割合が2/3以上の場合、全体が税率1%の対象となる予定です。
有料老人ホーム等の食費
また「有料老人ホーム等で行う飲食料品の提供」なども要件によっては対象となります(後述)。
対象にならないものは?
酒税法に規定される「酒類」は対象外です。なお、みりん風味調味料、ノンアルコール飲料など酒税法に規定されないものは、これまで同様に軽減税率の対象となります。
医薬品や医薬部外品も対象外となります。「食品」に該当する栄養ドリンク、サプリメント、特定保健用食品、栄養機能食品などは、対象となります。
ペットボトルなど飲料用の水を購入した場合は対象になりますが、ウォーターサーバーなどのレンタル料金は対象外となります。
高齢者のかたの中には、犬や猫などのペットと暮らし、日常的にペットフードを購入している人もいると思いますが、対象となるものはあくまで「人」の飲食・飲用にかかわるものなので、ペットフードは対象外となります。
また、外食やケータリング等(指定の場所に飲食料品を届けるサービス)は対象外となり、これまで通り10%の税率が維持されます。
これまで「新聞の定期購読料」も軽減税率の対象となっていましたが、こちらは対象にはなりません。
※国税庁「消費税の軽減税率制度に関するQ&A(制度概要編)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/qa_mokuji.htm#1
※国税庁「飲食料品に係る2年間の消費税率引下げについて」(令和8年9月)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0026008-127_pamphlet.pdf
※国税庁「消費税軽減税率制度の手引き」24頁(令和3年8月版)
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0017007-067_06.pdf
介護施設に入居している場合の食費はどうなる?
施設介護をしているかたにとって気になるのが「食費」です。
施設では、居住費や介護費のほか、「食費」も支払いますが、消費税に関しては、介護保険が適用される施設と民間が運営する施設で扱いが異なります。
まず、介護保険施設(特別養護老人ホームや老健、介護医療院、グループホーム、デイサービスなど)の食費は消費税は非課税なので、今回の措置とは関係がありません。
一方、民間が運営する有料老人ホームやサービス付き高齢者住宅などで提供される飲食料品については、1%の対象となる予定です。以下で詳しく解説します。
有料老人ホームやサ高住は条件付きで対象に
民間が運営する有料老人ホーム(有老)やサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)で提供される食費は、消費税の課税対象となり、一定の要件を満たす場合、8%の軽減税率が適用されています。
一定の要件とは、現在「1食730円以下、1日累計2,190円まで」となっており、この価格は物価上昇に合わせて見直されています。
有老やサ高住に入居されているかたで、現在、食費に8%の軽減税率が適用されていれば、来春から1%の対象となる予定です。食費が軽減税率の対象になっているか分からない場合は、入居している施設に確認してみましょう。
※国税庁「令和8年6月~消費税の軽減税率の対象となる給食の金額基準が変わります!(令和8年3月)」
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/zeimokubetsu/shohi/keigenzeiritsu/pdf/0026002-079.pdf
「消費税1%」になったら高齢者世帯の負担はどのくらい減る?
消費税が1%になった場合、高齢者世帯の負担はどのくらい減るでしょうか。代表的な例を挙げてシミュレーションしてみましょう。
総務省の家計調査(令和7年)によると、65才以上の夫婦のみの無職世帯、いわゆる「年金暮らしの夫婦ふたり世帯」の食料への支出は、月7万8,964円です。
また、65才以上の単身無職世帯、いわゆる「年金暮らしのおひとり様世帯」では、食料への支出は月4万2,545円です。
消費税1%の対象になる飲食料品の支出(酒類や外食費などを差し引いたもの金額)を、それぞれ「5万円」、「3万円」(税抜)と考えてみましょう。
現行「消費税8%」の場合
・年金暮らしの夫婦ふたり世帯…月5万4000円
・年金暮らしのおひとり様…月3万2400円
「消費税1%」になると…
・年金暮らしの夫婦ふたり世帯…月5万500円 → 年間4万2,000円負担減
・年金暮らしのおひとり様…月3万300円 → 年間2万5,200円負担減
消費税が1%になると、夫婦ふたりで年に4万2,000円、おひとり様世帯でも年に2万5,200円の負担が減るという計算になります。年金収入中心の高齢者にとっては、毎月かかる食費の負担が軽くなることは、家計にとって一定の助けになるでしょう。
上記のシミュレーションは、それぞれの世帯で飲食料品の購入費が異なるのであくまで目安となります。また、飲食料品の税抜価格が変わらないことを前提としていますので、今後、原材料費や輸入コスト、物流費などの上昇によって飲食料品の価格自体が上がれば、税率が下がったとしても、家計への負担軽減の実感はそれほど得られない可能性もあります。
※総務省「家計調査報告(家計収支編)2025年(令和7年)平均結果の概要」
https://www.stat.go.jp/data/kakei/sokuhou/tsuki/pdf/fies_gaikyo2025.pdf
「消費税1%」高齢者世帯や介護家族への影響【まとめ】
飲食料品の消費税率が現在の8%から1%に引き下げられれば、高齢者世帯をはじめ、多くの世帯で食費の負担軽減につながります。
スーパーなどで購入する飲食料品に加え、現在8%の軽減税率が適用されている宅配弁当や、一定の要件を満たす有料老人ホームなどの食費についても、1%への引下げの対象となる予定です。
一方、外食費や酒類、医薬品、ペットフードなど、現在10%の税率が適用されているものまで1%になるわけではありません。今回の税率引下げについては、今後の動向を確認していきましょう。
