「介護費用が重い」と感じたら検討したい「世帯分離」 医療費や特養代を減らせるメリットと注意点
要介護度が上がるにつれて、費用負担も大きくなりやすい。そんなとき、世帯分離を検討するのも一つの選択肢だと節約アドバイザー・ファイナンシャルプランナーの丸山晴美さんは話す。世帯分離にはどのようなメリットやデメリットがあるのか、詳しく教えてもらった。
教えてくれた人
丸山晴美さん/節約アドバイザー。ファイナンシャルプランナー
22歳で節約に目覚め、1年間で200万円を貯めた経験がメディアに取り上げられ、その後コンビニの店長などを経て、2001年に節約アドバイザーとして独立。ファイナンシャルプランナー(AFP)、消費生活アドバイザー、宅地建物主任士(登録)、認定心理士などの様々な資格を持ち、ライフプランを見据えたお金の管理運用のアドバイスなどをテレビやラジオ、雑誌、講演などで行っている。
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住民票上の世帯を2つ以上に分ける「世帯分離」
世帯分離とは、同じ家に住みながら、住民票上の世帯を2つ以上に分けることを指します。税金やさまざまな公的制度は、世帯の年収や資産を踏まえて金額や負担割合が変わるケースが多いです。世帯分離をした場合は、要介護者の親の世帯と、現役世代の子の世帯とで分けて試算することになります。
世帯分離をすると高額療養費の負担金額が減る
親と子で世帯分離をした場合、親側の高額療養費の負担金額が減るというメリットがあります。高額療養費制度は、1か月の中で多額の医療費が必要となった場合に、上限を超えて支払った費用については払い戻しされるというものです。
この上限は世帯年収や年齢によって異なり、例えば70歳以上で世帯に現役並み所得者がいると負担上限が高くなりますが(現役並みⅠ:年収約370万円~770万円相当の世帯で月額8万100円+医療費の1%)、世帯分離をして親が単身の住民税非課税世帯になれば、月額上限は2万4,600円(低所得Ⅱ区分・外来+入院)に抑えられます。(※70歳未満の非課税世帯は3万6,900円)。
そのため、高額療養費制度を利用するほど医療費がかかっている場合は、世帯分離を検討したほうが費用負担が小さくなる場合があります。
特養の利用料の負担も軽減できる
特別養護老人ホーム(特養)と呼ばれる、「介護老人福祉施設」の利用料なども世帯分離によって負担軽減できる可能性があります。
特養は24時間体制で介護を受けることができる、介護保険適用の公的施設で、要介護度3の人が1人1部屋の従来型個室を利用する場合は、全額負担(基準費用額)では1か月あたり居住費は約5万円(日額1,668円)、食費は約4.7万円(日額1,545円)必要です。
しかし、収入や資産が一定以下の人に対して介護施設などの利用料に上限を設ける「介護保険負担限度額認定」を使うと、例えば夫と妻の2人暮らし(または単身)の住民税非課税世帯で収入が82万6500円以下かつ預貯金が1650万円以下(単身は650万円以下)の場合(第2段階)、従来型個室の居住費の上限は1万4700円、食費の上限は1万1700円と、半額以下になります。
検討する際の注意点とデメリット
デメリットとしては、生計が完全に別だとみなされた場合に親が子の扶養から外れ、所得税や住民税の扶養控除が使えなくなり、子の所得税や住民税が増える可能性がある点が挙げられます。(※生計を一にしていれば、世帯分離後も扶養控除を受けられる場合があります)
また、親が75歳未満の場合、世帯分離によって子の勤務先の健康保険で「別居扱い」となり、扶養家族から外れて親本人の国民健康保険料が必要になるケースがあります。(※75歳以上の親は全員「後期高齢者医療制度」に加入するため影響はありません)
このほか、もし子の勤務先で家族手当などがあった場合も、勤務先の規定で「同一世帯」が条件になっていると手当ては受けられなくなります。
世帯分離を検討する際はケアマネジャーに相談
要介護度が低い場合は、扶養控除を利用したり、親を子の勤務先の健康保険に扶養家族として加入させたほうが金銭メリットが大きくなる可能性が高いですが、施設に入所したり、介護サービスを最大限使っていたりする場合は、世帯分離をしたほうが負担金額が低くなる可能性が高いです。要介護度が上がってきたり、費用負担が重くなってきたりした場合は、一度ケアマネジャーに世帯分離を相談してみるといいでしょう。
自治体の窓口でも試算してもらえますが、世帯分離自体は金銭的なメリットだけで行うことはできず、食費や日用品の購入など生計が別であること、それぞれの世帯で独自の収入源があり、依存していないこと、実際に生活の実態が別々であること、といった要件があり、世帯を分離するのが適切と認められる必要がある点には注意しましょう。
取材・文/新藤まつり
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