《たんぱく質の賢い摂り方》高齢者が知っておきたい5つのポイント「いつ摂る?食べ物と飲料どっちがいいの?」【管理栄養士解説】
高齢者の健康維持には「筋力」を維持することが肝心だ。「筋肉のためには、たんぱく質を摂るのが大事」とわかっていても、いつどんな風に摂ればいいのまかで理解している人は多くはないかもしれない。たんぱく質の賢い摂り方について、具体的な方法を管理栄養士の川鍋仁美さんに解説いただいた。
教えてくれた人/管理栄養士・川鍋仁美さん
管理栄養士。大学卒業後、総合病院に勤務し、介護食・嚥下食の献立作成や栄養相談に従事。現在はデイサービスで高齢者の栄養サポートを行うほか、高齢者の栄養や介護食に関する記事を執筆。自身でも市販の介護食や宅配介護食を実際に試し、味や食べやすさを管理栄養士の視点で比較・検証している。介護する人もされる人も安心して食事を楽しめるよう、わかりやすく実践的な情報発信を心がけている。運営サイト「~管理栄養士がやさしく解説~いちばんやさしい介護食ガイド」(https://eiyousupport.com/)を運営。
たんぱく質は「摂り方」も理解しておこう
「年齢を重ねたら、たんぱく質をしっかり摂ったほうがいい」「筋肉のためにはたんぱく質が大事」――最近では多くのかたが「たんぱく質」の重要性が知られるようになってきました。
高齢者のかたの栄養相談をしていても、「たんぱく質を多く含む食品を意識して食べるようにしている」とお話されるかたが以前に比べて増えてきたように感じます。
たんぱく質の必要性は理解していても、いつ、どのように食べる(飲む)のがいいのか、「摂り方」まで、正しく理解している人は多くはないようです。
「1食にまとめて摂ってもいいの?」「運動後すぐに摂った方がいい?」「食べるのと飲むのでは、どちらがいいの?」。そんな疑問を持つかたもいるのではないでしょうか。
本記事では、高齢者の筋肉を守るために知っておきたい「たんぱく質の効果的な摂り方」について解説します。
【1】たんぱく質の摂り方の基本は「まとめて摂ってもいいの?」
高齢になると、食事量そのものが少なくなり、たんぱく質も不足しやすくなります。まずは、1日に必要なたんぱく質をしっかり確保することが基本です。65歳以上の推奨量は、男性で1日60g、女性で1日50gです。
たんぱく質が豊富に含まれている食品は、卵、肉、魚、大豆製品、乳製品など。これらの食品を組み合わせながら、朝・昼・夕のそれぞれの食事で摂るのがおすすめです。
年齢を重ねるほど、摂取したたんぱく質を筋肉の合成につなげる反応は、若い頃よりも低下することがあります。そのため、1回の食事だけに偏らせず、毎食たんぱく質を摂ることを意識しましょう。1食あたり20g程度をひとつの目安にすると、実践しやすいでしょう。
高齢者の栄養相談でも1日の食事内容を伺うと、よくあるのが「朝はパンとコーヒー、昼は麺類、夕食は肉や魚を食べているから、たんぱく質は摂れていると思っている」ケース。しかし、夕食だけでは1日の必要量を十分に確保できないことがほとんどです。
摂れなかった分は、おやつで補給するなど、1日のトータルで不足しないように心がけたいもの。「毎食、何か1つはたんぱく質を含む食品を入れる」と考えて、実践してほしいと思います。
【2】いつ摂る?「運動後30分以内」は本当?
たんぱく質摂取のタイミングについては、よく「運動後30分以内に」といわれますが、必ずしも「30分以内」にこだわる必要はありません。
運動後のたんぱく質摂取は、筋肉の生成に有効ですが、「直後」である必要はありません。高齢者の筋肉の維持には、時間を気にするよりも、『運動を習慣にしながら、1日を通して必要なたんぱく質を確保すること』の方が大事です。
高齢者の場合、午前中に体操やウオーキングをしたら、昼食にたんぱく質を含む食品(卵や魚、肉、大豆製品、乳製品など)を取り入れるとよいでしょう。運動のたびに特別な栄養食品やプロテインを摂取する必要はありません。
散歩や簡単なストレッチ、テレビを見ながら座ったままでできるラジオ体操など、無理なく続けられることから始めてみましょう。そして運動をしたら、「次の食事でたんぱく質を意識して摂る」ことを習慣にできるとよいですね。
また、たんぱく質をとる時間帯については、「朝」に注目が集まっています。日本人の高齢者を対象とした研究では、朝食で摂るたんぱく質の「質」が高い人ほど、その後の筋力低下が少なかったという報告もあります。
「たんぱく質の質」に関しては少し専門的になりますが、「体内で利用されやすいこと」「たんぱく質を構成する最小単位である必須アミノ酸がバランスよく含まれているか」といった観点から「質」が判断されます。
ただし、朝食にたんぱく質を摂れば、筋力が維持できるという訳ではなく、大切なのは、まずは1日の必要量を確保すること。「朝だけ頑張る」ことではなく、1日のたんぱく質を朝・昼・夕に分けて摂ることです。
【3】「食べる」「飲む」どちらが効果的?
「たんぱく質は食べるのと飲むのではどちらがいいのか」。これも栄養相談の際によく聞かれる質問です。
結論からいうと、食べ物でも飲料でもどちらでも大丈夫です。
「飲み物のほうが吸収のスピードが速そう」と思う人は多いようですが、食べ物や飲み物を織り交ぜながら、普段の食事でたんぱく質を摂ることが基本です。
食欲が落ちているときや、食事量そのものが少なくなっているときには、飲み物を補助的に活用することで、たんぱく質を摂りやすくなる場合もあります。
「朝はあまり食べられない」「肉や魚をたくさん食べるのは難しい」「食事だけではたんぱく質が足りない」という場合には、牛乳や飲むヨーグルトなどを活用して、たんぱく質を補うのも一つの方法です。
食べられるときは食事で、食事だけでは足りないときは飲み物も上手に活用する。そんな柔軟な考え方で大丈夫。「食べるか、飲むか」のどちらか選ぶのではなく、『食事を基本にしながら、無理なく必要なたんぱく質を摂れる方法を選ぶこと』が大切です。
【4】「ご飯より肉を中心に食べる」のはどうなの?
「筋肉のために、たんぱく質をたくさん摂らなくては」と考えて、肉やプロテインなどを増やす人もいるかもしれません。しかし、たんぱく質だけを増やせばよいわけではありません。
主食となるご飯やパンなどエネルギー源となる炭水化物を控えている人もいるかもしれませんが、食事全体のエネルギーが不足すると、その不足分を補うために、たんぱく質が利用されることがあります。つまり主食が足りないと、さらにたんぱく質も足りなくなってしまいます。
たんぱく質だけを意識するのではなく『主食もしっかり食べること』が大切です。主食はご飯、パン、麺など、主菜は肉や魚、卵、大豆製品などのたんぱく質を、副菜には野菜を組み合わせて、「主食・主菜・副菜」が揃った食事が基本です。
食が細くなってきた高齢者は特に、「たんぱく質だけでも摂らなくては」と思ってしまうかもしれませんが、それは違います。筋肉を守るためには、たんぱく質だけでなく、エネルギーやビタミン・ミネラルなど、さまざまな栄養素が必要です。ただやみくもに「たんぱく質を増やす」だけではなく、まずは「食事全体をきちんと食べられているか」を確認すること。これも、筋肉を守るために大切なポイントです。
【5】量が食べられない場合はどうする?
高齢になると、「肉は胃にもたれる」「魚は骨が面倒」「一度にたくさん食べられない」ということもあると思います。そんなときは、無理に一度にたくさん食べる必要はありません。間食も取り入れ、少しずつ量を摂るのがいいと思います。
3食+間食でたんぱく質を補う方法
・朝食:卵やヨーグルトを加える
・昼食:豆腐や納豆を取り入れる
・間食:牛乳やチーズなどの乳製品を摂る
・夕食:市販品も利用(鯖缶などの缶詰、コンビニのお惣菜、サラダチキンなど)
ちなみに、たんぱく質の量は、牛乳コップ1杯(200ml)に約7g、プロセスチーズなら1個で約5~6g。牛乳とチーズを組み合わせれば、間食だけでも10g以上のたんぱく質を補うことができます。
牛乳は200mlが多ければ、朝昼に分けて飲んでもOK。少量ずつでも、本人が食べやすいものを組み合わせるのがおすすめです。また、たんぱく質を含む市販の栄養補助食品や飲料なども手軽に活用できると思います。
「肉を毎日しっかり食べなければ」と考える必要はありません。食べられる量や好みは人それぞれなので、『無理なく続けられる方法を見つけること』が大切です。
【まとめ】たんぱく質の賢い摂り方「毎食、毎日続けることが大切」
たんぱく質は「毎食摂ること」「毎日続けること」が大切です。まずは、いつもの食事で「卵、魚、肉、大豆製品、乳製品」からどれか1品でも加えることを意識しましょう。そして無理のない範囲で身体を動かすことも習慣に。年を重ねてもたんぱく質を賢く摂って、筋肉を維持して欲しいと思います。
※腎臓病などで食事について医師から指示を受けている場合は、自己判断でたんぱく質を増やさず、主治医や管理栄養士に相談しましょう。
