《沖縄を拠点に活動》パッション屋良さん、介護施設で週5で働く原動力 利用者だけではなく職員にも笑顔を「仕事は大変かもしれないけど、一瞬であっても楽しさを感じてほしい」
パッション屋良さん(50才)は、体操のお兄さんキャラで胸を叩く独特の芸風で大ブレイク。一時は月収500万円という売れっ子芸人の時代を経て、現在は故郷の沖縄を拠点に活動中だ。お笑い芸人の経験をいかし、介護施設のレクリエーションにも力を注いでいるが、その活動の原動力とは。【全3回の第3回】
週5でレク担当、介護施設の現場で心がけていること
――介護施設のレクリエーションはどんなペースでどのようなことを?
屋良さん:デイサービスや特別養護老人ホームなど4か所の施設に出向いて週5日、1回約30分~1時間の持ち時間で、レクリエーションを担当させていただいています。
施設の利用者さんには、車椅子のかたや認知症でコミュニケーションがうまく取れないかたもいらっしゃいますので、そんなに激しいことはできないので、音楽に合わせて手を叩いたり、肩をゆっくり動かしたり、簡単な運動が中心です。
芸人時代の営業に近い感覚で、「ハイどうも~」ってネタを披露しているような感じかもしれませんね。
――レクリエーションで気をつけていることはありますか。
屋良さん:気分が乗らないかたは体操しなくても全然OKですし、逆にはしゃぎすぎて転倒されないかとか、緊張感をもって目配りはしています。もちろんスタッフの方たちも一緒に見守ってくれているので、安心してやれています。
昨日すごく楽しそうにされていた人が、次の日には何の反応も示さないとか、無表情だった人が、いきなり笑い出すとか、想定外の反応が起こることはあります。
これだけ安定感のない現場は、初めての経験でした。でも、相手がどういう状況であっても与えられた時間は楽しませることに心を砕く。盛り上がらなかった時は、必ず反省と分析、そして次にどうしたらいいかを考えます。レクリエーションは相手あってのものですから、常に新鮮さを感じてもらえるように持ちネタを揃えておかないと。
施設で生活しているかたは、元気になるかたもいるけどやっぱり日一日と老いていくのが現実で、あるとき急に動けなくなるケースもあります。そういう現実の中で、ぼくが声をかけるとちょっと笑ってくれたり、手を握ったら握り返してくれたり、反応があることが嬉しいんですよ。肉体的な反応はなくても、何かを伝えようとしてくれている意思を感じる瞬間もある。今日もレクに来て良かったなと思えますよね。
――介護現場は人手不足、レクリエーションは動画配信を活用しているケースもあると聞きます。
屋良さん:生身の人間がその日やその場の空気を読みながら、臨機応変に対応するわけで、動画ではなくぼくがやる意味があると思っています。
施設のスタッフさんの話を聞いてみると、介護本来の仕事、たとえば入浴や食事や排泄介助など、介護本来の仕事は苦にならないけど、レクリエーションは苦手、難しいというかたが多いんですよ。確かに、要介護度もバラバラでその日によって体調も異なる利用者さんたち、みんなを一様に笑わせる、楽しませることはなかなか難しいですよね。
ぼくのレクリエーションは、利用者のかたに“非日常”を提供するのがメインミッションなんですけど、実は裏のコンセプトとして、施設のスタッフさんたちにもたくさん笑ってほしいという思いがあります。
――「スタッフを笑わせたい」と思うようになった理由はありますか。
屋良さん:介護の仕事って、ネガティブなイメージが付きまとうじゃないですか。もちろん大変な仕事なのはわかるんですが、スタッフに笑顔がない施設は雰囲気が暗いことが多いんですね。
仕事は大変かもしれないけど、たとえ一瞬であっても楽しさを感じる時間があってほしいじゃないですか。だから、ぼくが行った時くらいは、「元気なおっさんが一生懸命アホなことをしてんな」と笑ってもらえたらいいなと。
介護現場の人手不足は深刻ですが、それってぼくら大人が変えてこなかったからじゃないかと。だって芸人とかエンタメ業界って、介護職よりも全然稼げないのに「人手不足」にならないし、むしろ人が余っているわけで…。介護職だって、人に夢を与える楽しい職業になってもいいじゃないですか。
介護現場にはもちろんいろんな課題があるけど、最低限「職場が明るいこと」って、大事だなと思うんです。
パッション屋良流、介護の現場で実現したいビジョン
――これから挑戦したいことや目標はありますか?
屋良さん:ぼくは「エンタメ」と「介護」って、ものすごく相性がいいと思っているので、もっとそれらを繋げる仕組みを作りたいんです。
たとえば若手芸人は、食えずにバイト漬けになることが“あるある”ですが、どうせ生活費を稼ぐなら、人前でパフォーマンスをする場として、介護施設を選ぶといいですよね。芸人だけに限らず、歌やダンスとか舞踊、手品でもいい。
ぼくがプロデュースするレクリエーションの現場には、沖縄の三線を弾く民謡の歌い手さんにも来てもらっているのですが、やっぱり音楽の力はすごい。みんな手拍子したり体を動かしたり、ぼくが引き出せない反応を見せてくれて、いつの間にかぼく自身が笑顔になって踊ったりしています。
理想は“みんなが笑顔になる”空間。その環境づくりをしていくことが、ぼくの今後のテーマです。
◆パッション屋良
1976年7月23日生まれ、沖縄県出身。国士舘大学体育学部卒業。高校の保健体育の教員免許を持つ。4児の父。情熱的な体操のお兄さん風のキャラクターに扮し、胸を激しく叩くリアクション芸「やらやらバンバン」で大ブレイク。2011年からは沖縄に拠点を移し、パーソナルジムの運営や介護施設のレクリエーション担当としても精力的に活動中。
取材・文/吉河未布
