夏はご用心!?「認知症のひとり歩き、外出先の迷子も心配…」不安な徘徊の対策【社会福祉士解説】
警視庁の統計によると、認知症に起因する行方不明者数は、1万5000人から2万人近くの高水準で推移している。介護経験をもつ社会福祉士の渋澤和世さんは、実母が認知症のひとり歩きに悩んだ経験がある。とくに夏場は外出先で迷子になったり、認知症によるひとり歩きが増えたりと心配な季節だという。高齢者を守る対策や活用したい最新アイテムなどについて解説いただいた。
この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん
在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。
認知症のひとり歩きは夏場が危険?
夏場は夕方以降の高齢者のひとり歩き(徘徊)や外出先での迷子が増加する傾向があり、介護現場や自治体から注意が呼びかけられています。いわゆる日没症候群(夕方になると不安や混乱が増して外に出たがる症状)に加えて、夏ならではの環境的な要因が重なることが大きな理由です。
今回の記事は、夏にひとり歩きが起きやすい原因と行方不明を最新テクノロジーで賢く守る方法をご紹介します。
夏に注意したい3つの理由
夏は19時近くまで明るいものの、一度日が沈み始めるとあっという間に暗くなります。明るいと思って出かけた先で急激に視界が悪くなり、周囲の風景の判別がつかなくなって帰り道を見失ってしまうケースは認知症のかたに限った話ではありません。
1.軽度のせん妄(意識の混乱)が起きやすい
高齢者は水分を蓄える筋肉量が少なく、喉の渇きを感じにくいため脱水状態に陥りがちです。脱水や熱中症にかかると意識が一時的にボーッとして頭が混乱する、せん妄が起こり、自分がどこにいるのか分からなくなることがあります。
2.熱中症による判断力・注意力の低下
猛暑のなか歩いていると、急激な体温上昇によって脳の働きが低下します。普段なら覚えている帰り道も注意力が散漫になって見落としたり、曲がり角を間違えてパニックになったりします。
3.体力低下と引き返し不能のリスク
「迷ったから戻ろう」「コンビニなどでいったん涼んでから」といった考えが及ばず、引き返す判断や行動が遅れることも。高齢者は体力の消耗も早いので途中で足腰が立たなくなったり、倒れ込んで自力で動けなったりする危険があります。
注意したほうがいい時間帯は?
ひとり歩きが最も発生しやすい時間帯は、夕方から初夜にかけて(16時〜21時頃)と早朝(4時〜6時頃)とされています。
夕方以降に増加する理由は、日の長さによる時間感覚の乱れと気温の変化です。夏は19時近くまで外が明るいため、まだ昼間だと時間を誤認しやすくなります。また、日中は猛暑のため室内で静かに過ごしていたものの、夕方になって気温が下がると、それまで抑えられていた活動意欲が一気に高まります。
一方、早朝に発生する理由は日照時間の長さと生活習慣にあります。夏は4時台から外が明るくなるため、室内に入り込む光によって体内時計が狂い、朝だから活動を始めようと家族が寝ている間に一人で外出してしまいます。
特に屋外作業に従事していたかたは、夏は「涼しい早朝に動く」という長年の身体の記憶が働き、早朝の外出につながりやすくなります。
このように、夏のひとり歩きは日照時間の長さによる錯覚と暑さを避けて涼しい時間帯に動こうとする本能的な行動が重なることで引き起こされます。夜間でも気温や湿度が高い夏場は、短時間でも脱水や熱中症で命に関わるため、これらの時間帯に合わせた見守りが非常に重要です。
認知症のひとり歩きの対策と活用したいアイテム
夏場の徘徊は、日没後の視界不良や短時間での熱中症リスクが重なるため、いかに早く発見・保護できるかが命を守る鍵となります。居場所をいちはやく特定するために活用できるアイテムにはいくつかの種類があります。
通信会社等が販売する高齢者向け小型のGPS端末のほか、スマホとBluetoothで連携して使うスマートタグ(紛失防止タグ)もあります。Appleの『AirTag』のほか、他社からも同じ機能を持つ製品が販売されています。
こうした機器をそのまま持たせてもどこかに忘れてしまう懸念もあるため、普段履いている靴のインソールの裏に仕込んだり、お気に入りの杖などにつけたりしておくのがおすすめです。
身につけるのを嫌がる場合でも、普段必ず使うアイテムに仕込むことで、自然に居場所を把握できます。使い方のポイントは以下の通りです。
靴に設置して使う
出かけるときは靴を履くため、最も確実に追跡できる設置場所です。
・専用のインソール(中敷き)を活用する
デバイスを収納できる専用のインソールが市販されています。土踏まずの窪み部分などに端末を埋め込む構造になっており、足裏への違和感を最小限に抑えられます。また、インソールそのものにGPSセンサーを内蔵しているタイプもあります。
・かかと部分に固定用ポケットが付いた専用シューズを利用するか、靴の外側のかかと付近に強固に取り付けます。
杖に取り付けて使う
歩行時に杖を必ず使うかたの場合に有効です。
・グリップ(持ち手)の下付近か杖の上部(持ち手の少し下)に、専用のシリコンホルダーやバンドでしっかり固定します。先端に取り付けると重心が崩れて歩きにくくなるため、上寄りに付けるのがコツです。
・そのまま取り付けると監視されていると抵抗感を持つ場合もあります。キーホルダー型のケースで装飾し、デザインの一部に見せる工夫も効果的です。万が一、杖をどこかに置いたまま歩いている場合には、本人を追跡できなくなるなどのデメリットもあります。
『AirTag』は電池交換式(約1年駆動)ですが、GPS端末は1〜2週間ごとの充電が必要です。いざという時の電池切れ防止に充電日をルーティン化しておくとよいでしょう。また、実際に装着して近所を歩いてもらいスマホから正確に現在地が読み取れるか事前にテストしておくと安心です。
自治体によっては補助金やレンタル制度も
多くの自治体では「認知症高齢者等GPS個人導入費用の補助」や、自治体が提携するGPSレンタルサービスの助成制度を用意しています。購入・契約前に、お住まいの自治体の福祉課や地域包括支援センターに相談してみるのがおすすめです。
自治体を通じて活用できるサービスをチェック!
■ココセコム/セコム
持病があるかたや徘徊・認知症のかたなどをセコムが見守り、万が一のときには駆け付けるサービス。自治体により助成金が受けられる。自治体の導入事例
■みまもり イル!/イル
インソールにGPSやモーションセンサーを内蔵した高齢者の見守りデバイス。
※自治体や福祉用具店などを通した月額レンンタルの提供のみ。
https://iru-mimamori.com/
