倉田真由美さん「秩父・長瀞の一人旅」くらたまね~&らいふVol.11
「ふと思い立ち、ふらりと一人旅へ」。漫画家の倉田真由美さんは若い頃からそんな旅をしていたと明かす。20代の頃によく行った地は埼玉県・秩父だという。先ごろ、その懐かしの場所へ30年ぶりに来訪してみると――。
執筆・イラスト/倉田真由美さん
漫画家。2児の母。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。新たな描きおろし漫画も収録した最新の書籍『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』も話題に。
一路、秩父へ
若い頃、20代の頃は、時間を見つけて時折一人旅に出ていました。
暇はたっぷりあったけどお金がないから、贅沢な旅はできません。基本的には鈍行電車で行ける距離、無料で景観が楽しめて、ちょっとしたお昼を食べたり温泉に入ったりして帰る、という日帰り旅です。2000年以前の当時はインターネットで多彩な観光情報を探すこともできなかったため、気に入ると何度も同じところに通ったりもしました。
中でも一番よく行ったのは、秩父です。その先にある長瀞にも足を伸ばし、岩畳の河川敷を散策して日帰り温泉でゆっくり身体を休めた後、行きと同じく鈍行電車に揺られて帰ったものでした。通った日帰り温泉の店の名前は忘れてしまいましたが、あれ以来訪れていないのでちょっと行ってみようかな、と先日ふと思い立ちふらりと一人で行ってみました。
西武池袋線で池袋から特急レッドアロー号で、一路秩父へ。窓が大きく快適なシートで、車窓を眺めたり本を読んだりしていたらあっという間に着きました。懐かしの秩父駅へ降り立つと、案の定昔とはかなり違った近代的な雰囲気の駅に変貌していました。
30年ぶりの来訪です。
駅を出て、長瀞へ向かうために近くの御花畑駅に向かいました。正直なところ、秩父駅周辺はあまりにも変わりすぎて、懐かしむ気持ちがあまり湧きませんでした。
「これじゃ、当時行った温泉を見つけることはできないかな」
記憶を頼りに探し出して再訪したかったのですが、無理そうです。人の流れとスマホの地図を頼りに歩くとすぐに御花畑駅に着き、しばし電車に揺られて長瀞で降りると、そこはいかにも観光地で煎餅屋や蕎麦屋などが軒を連ねています。
長瀞岩畳へ降り立つと…
おいしそうなかき氷屋に吸い込まれそうになりましたが、まずは昼食をとろうと、この辺りの名物らしい「鮎めし」の店で鮎が丸ごと香ばしく炊き込まれた釜飯を食べました。好きな時に好きな店に入れるのは、一人旅の醍醐味です。腹ごなしをした後、すぐそばにある長瀞岩畳へ降り立ちました。
「ここは変わっていないなあ」
この旅で初めて、20代の頃の記憶に繋がる場所に会えました。長瀞岩畳は「もっと有名観光地になってもいいのでは」と思う景観の素晴らしさです。川下りをする舟がいくつも川面を滑っていて、次回来る機会があればあれもいいなと思いつつ、岩畳を歩き回りました。
日差しが強かったせいもあり喉が渇いたので、行きがけに見たかき氷を食べに行きました。
最近のかき氷は千円、二千円を超えるのが普通になってしまって高級スイーツ化していますが、この店は千円以下で、かなり良心的です。しかもおいしい!宇治抹茶一杯、ペロリと食べてしまいました。あまりにおいしかったのでもう一杯、マンゴーミルクも頼んでしまいました。これも完食。なんだかかき氷を永遠に食べ続けられそうなモードに入っていて、自分が怖いほどでした。
秩父に戻り、やっぱり昔行った温泉は分からなかったので、駅に直結した温泉で汗を流してから帰宅。久しぶりの一人旅は、楽しかったけど、「思ってたんとはちょっと違う」感じで終わりました。
昔を懐かしむ旅をしたかったんですよね。ノスタルジーに浸りたかったんです。でも街の様子があまりにも変わってしまうと、それも難しいということを思い知りました。
