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《娘が骨壺に「父ちゃんは?」》すい臓がんで夫を亡くした倉田真由美さんが語るお墓や仏壇のこと「骨壺は今も家にあります」お墓は必要ないと考える理由 

 2024年2月16日に旅立った映画プロデューサーの叶井俊太郎さん(享年56)の葬儀は、同年2月22日に都内の斎場で行われた。新著『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』を上梓した妻で漫画家の倉田真由美さんは、「父ちゃんの骨壺」を自宅に保管しているという。「お墓や仏壇を持たない」選択について話を聞いた。 

夫の友人に「仏壇」に手を合わせたいと言われて… 

「夫が亡くなってしばらくして、夫の友人から連絡をもらって『手を合わせたいから訪問したい』と言われたことがありました。 

 我が家は仏壇もないし、お墓もありません。私が死んだら、一緒にお墓に入るのかもしれませんけど、今はまだ考えていませんね」(倉田さん、以下同)。 

 日本では故人の遺骨はお墓に納め、位牌を仏壇に供える慣習があるが…。 

「葬儀を終えて骨壺を自宅に持ち帰って、しばらくはリビングに置いていました。別の場所に移動したら、娘が『あれ、父ちゃんは?』って、骨壺のことを父ちゃんと呼んでいたことがありました。今は押し入れにしまってあります。 

 たまに『えっ、仏壇がないの⁉』と驚かれることはありますけど、仏壇やお墓は、思い入れがあるかたが持つものであって、私には必要がないんですね。 

  私にとって夫は『骨』まで、というか。お墓に入れたとしてもそこに夫はいない。そういう歌もありますよね」 

「『夫を思うもの』として、私に必要なのは、仏壇や位牌、お墓といったものではなく、夫の思い出がちゃんと乗っかっているもの。彼が生きていたことを感じられるものに意味があると思っています。 

 たとえば、彼が使っていたスマホとか、使っていたメガネとか。長いこと遺品整理をしていますが、どうしても捨てられないものがあるんです。スマホは解約していませんし、するつもりもない。夫の電話番号が私にとって特別な数字になっていて、誰か別の人のものになることにも抵抗があるんです。スマホを解約したら、夫とのLINEの履歴やアイコンも消えてしまうのではないかと思って、それは嫌なんです。 

 夫が食器洗いに使っていた魚の形のスポンジとか、100円ショップで買った老眼鏡だって捨てられませんからね」 

お墓を持たないという選択の意味 

「私の祖母はお墓とか葬儀とか、そういうことにすごくこだわる人でした。自分が死んだらお坊さんを5人呼んで村中の人を呼んで盛大なお葬式をしてほしいと言っていましたけど、夫はどうだったのかなあ。生前には聞けなかった後悔の一つです。 

 私たち夫婦は結婚した当初から、お互いにお墓参りの習慣とか、盆暮れに帰省するといった習慣がなかったんです。お墓については夫のご家族からもとくにこうしてほしいという希望はありませんでした。 

 私は夫の骨は私の家に置いてありますが、結果としてそういう選択をしているだけ。私たち夫婦は、そういう世間一般の常識とかしきたりを一つ一つ、絶対守らなければならないという感じではなかったので、そういうところはお互い考え方が合っていたんだと思います」 

自由な夫婦関係 

 叶井さんは抗がん剤などいわゆる対症療法は選ばず、終末期には痛みを取りながら自宅で日常生活を送る「在宅緩和ケア」を選んだ。 

「私たち夫婦が選んだ選択は、まだあまり情報がないように思いますが、大変なことはひとつもなく、最後まで自宅で自由な暮らしができたと思います。 

 在宅医療に切り替えて最期の日々は10日間でしたが、夫は好きなもの食べ、外出もしていました。私もいつも通りに仕事を続けていました。病院に入院していたら持てなかった濃密な時間を過ごせたと思いますが、お互い無理することもなくとても自由でした。 

 闘病生活に限らず、夫とは結婚当初から、『私はしたいことをするからあなたも自分の好きなことをしていいよ』という共通認識がありました。だから彼も自由に羽を伸ばしていましたね。 

 私ね、自分がやりたいことにブレーキをかけられるのが、すごく嫌なんですね。その点、夫は、本当に私を自由にさせてくれました。 

 娘が4才か5才の頃、私がメキシコに仕事で行くことになったとき、『あ、そう。いいよ、生活費だけ置いていって』って、あっけらかんと送り出してくれました。 

 もしこのとき、『子供はどうするの?』などと言って反対するような人だったら、一緒にいられなかったと思います。結婚も離婚も3回しているし、夫のことを“だめんず”という人もいるかもしれないけれど、私にとってはこれ以上ない最高の夫、最高の父ちゃんでした」 

『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』
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◆倉田真由美 
くらた・まゆみ/1971年福岡県生まれ。漫画家。“くらたま”の愛称で多くのメディアでコメンテーターとしても活躍中。一橋大学卒業後『だめんず・うぉ~か~』で脚光を浴び、多くの雑誌やメディアで漫画やエッセイを手がける。最新著『夫が「家で死ぬ」と決めた日 すい臓がんで「余命6か月」の夫を自宅で看取るまで』が9月26日に刊行。 

写真提供/倉田真由美さん 撮影/五十嵐美弥 ヘアメイク/大嶋祥枝 取材・文/桜田容子

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