「介護付老人ホーム・住宅型老人ホーム・サ高住」の違いは? 施設の特徴と利用できるサービス内容の違いを知っておこう【社会福祉士解説】
在宅介護が難しくなった場合、施設入居を検討することになるが、まず初めに知っておきたいのが、老人ホームは種類によって利用できる介護サービスが異なるということ。社会福祉士で介護サービス相談員としても活動する渋澤和世さんに、実例を交えながら代表的な3つの施設とおすすめポイントを教えてもらった。
この記事を執筆した専門家
渋澤和世さん
在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)がある。
本格的な介護は必要ないが施設入居も視野に
都内に住むある50代の女性は両親ともに80代。母親は要介護2で、食事や排せつ、入浴に多少の見守りをすることもありますが、つきっきりで介護が必要ではないものの、一緒に暮らす父親がサポートしているとのこと。
母親は「部分的に理解力の低下が見られることがあるけど、まだ大丈夫」というので、住み慣れた自宅でデイサービスを定期的に利用しながら暮らしています。
しかし80代ともなると、病気やケガがきっかけで突然介護が必要になることも。今はまだ父親も元気ですが、この先ずっと自宅で母とふたり暮らしができるとは限らないので、不安に感じているとのこと。
このようなケースで、検討することになるのが施設入居ではないでしょうか。
要介護1・2でも入れる3つの施設
高齢者向けの入居施設には、「公的施設」と「民間施設」があります。
特別養護老人ホーム(特養)などの公的施設は、費用も手ごろで安心感はありますが、特養は、要介護3~など条件があり、待機者も多いため、希望のところにすぐに入居できない可能性があります。
一方で、民間施設は、数も多く選択肢も広いため、立地や日ごろの生活リズムも希望に合わせたところを選ぶことができます。
前述の女性の親御さんのように、介護度はそこまで進んでいないものの、施設入居を考えたいというケースもあるかと思います。
要介護1、2のかたの選択肢となる3つの民間施設をピックアップし、サービスの違いなどについて、ケース別に解説していきましょう。
「介護度が進んでもずっと同じ施設で暮らしたい」
介護付有料老人ホームを選んだAさんのケース
Aさんは、今後、介護度が重くなったときでも退去や転居することなく、24時間同じ施設で介護サービスを受けることができる介護付有料老人ホームを選びました。
この施設は、介護職員が24時間常駐し、食事、排せつ、入浴介助などの介護全般から、生活相談、健康管理までトータルでホーム事業者が提供する介護保険サービスを受けることができます(※特定入居者生活介護の指定を受けている施設の場合)。
介護保険サービスの費用は、その人の要介護度に応じて、支払う月々の額が決まっているため、介護サービスにかかる費用は固定になるので、予算も見通しが立てやすく、看取りまで対応する施設も多いので終身利用も可能です。
★介護付有料老人ホームはこんな人におすすめ!
認知症ケア、医療ケアの必要性があるかた、費用に余裕のあるかた
「サポートを受けながら自分のペースで生活がしたい!」
「住宅型有料老人ホーム」を選んだBさんのケース
Bさんは、家事などのサポートを受けながら比較的自由に生活をしたいので、要介護度に応じた介護保険サービスや保険外のサービスを外部事業者と契約したときだけ受けられる「住宅型有料老人ホーム」を選びました。
この施設は、食事や掃除・洗濯などの家事などさまざまな生活支援サービスを受けられるので、家事などは他人を任せつつ、自分のペースで生活し必要なときは介護サービスも受けたいというかたに利用されています。
★住宅型有料老人ホームはこんな人におすすめ!
要介護2くらいまでで、自由に生活しつつ介護保険サービスも時々利用したいかた
「見守りを受けながらできる限り自分で生活をしたい」
「サービス付き高齢者向け住宅(サ高住)」を選んだCさんのケース
Cさんは、誰かに見守られながら、できる限り自分で生活をしたいと考えていたため、安否確認と生活相談サービスがついているサービス付き高齢者向け住宅を選びました。
サ高住は、施設というよりも、高齢者向けの賃貸住宅に近いものです。要介護度に応じた介護保険サービスや保険外のサービスは必要なものだけ外部の事業者と個別契約するため、介護度も軽いかたに向いています。
★サ高住はこんな人におすすめ!
介護度が軽く、自由な生活を望み、入居時の費用も抑えたいかた
介護付・住宅型・サ高住の違いを確認
介護付有料老人ホームは、24時間、居住施設から提供される介護保険サービスを、介護度や身体状況に応じて施設建物内で受けることになります。
一方、住宅型有料老人ホームと、サ高住は、契約した時間と回数に対して、外部事業者から介護保険サービスなどを受けるカスタマイズ型ともいえます。
外部事業者は、在宅のときに利用していたところをそのまま利用することも可能ですし、施設と同じ法人が運営している訪問介護サービスや通所サービスを利用することもできます。
介護付有料老人ホーム
施設から提供される介護サービス
・介護・看護サービス
・生活支援サービス
・生活相談サービス
・食事サービス(別途自己負担)
・健康管理、医療機関との提携
・リハビリ
・レクリエーション
・看取り
など
住宅型有料老人ホーム/サ高住
施設から提供されるサービス
・安否確認サービス
・生活相談サービス
・食事サービス(別途自己負担)
外部事業者から提供の介護サービス
・訪問介護、訪問看護、訪問リハビリ
・デイサービス
・生活支援サービス
・健康管理
など
なお、住宅型有料老人ホームと、サ高住は、介護サービスの利用の仕方は似ていますが、大きな違いは、契約方式です。
住宅型有料老人ホームは、利用権方式が一般的ですが、サ高住は、基本的に一般的な賃貸物件と同じ賃貸借契約です。
このことから、住宅型有料老人ホームは入居時に0~1億円の費用が一時金として必要ですが、サ高住は0~数十万円となります。
■3つの施設の費用や要件、利用できるサービスの違い
種類 | 費用 | 入居要件 | 居室の広さ | 利用できる介護サービス |
介護付 有料老人ホーム | 初期費用: 0~1億円位 固定月額費用: 10~50万円位 | 自立~要介護5 | 13㎡以上 | ・施設職員が提供 ・日中は看護師常駐 ・機能訓練指導員常駐 ・いつでも介護サービスが受けられる |
住宅型有料 老人ホーム | 初期費用: 0~1億円位 固定月額費用: 10~30万円位 | 自立~要介護5 | 13㎡以上 | ・外部の介護サービスを利用し、使った分の費用を支払う ・訪問看護やリハビリは個別に契約 |
サービス付き 高齢者向け住宅 | 初期費用: 0~20万円位 固定月額費用: 10~20万円位 | 自立~要介護2程度 | 25㎡以上 | ・外部の介護サービスを利用し、使った分の費用を支払う ・訪問看護やリハビリは個別に契約 |
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施設入居にかけられる費用も考えつつ、介護サービスの利用頻度や施設からのサービス提供の項目を見極めることも最適な老人ホーム選びには必要になります。
親や自分がどんな暮らし方を希望しているのか、施設の違いを理解して選んでほしいと思います。
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