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暮らし

ひとりで親や配偶者を介護する「複数介護、同時多発介護」問題点と対処法を介護のプロが指南

 今年、団塊の世代がすべて75才以上となり、来年には人口の4分の1が後期高齢者になるといわれている。みなさんの周りでも介護をしている人が多いのではないだろうか。介護は突然始まることもあり、いざというときに慌てないために事前の心構えや準備が必要だ。介護のプロに聞いた、もし家族に介護が必要になった時の対処法や心構えを紹介する。

教えてくれた人

太田差惠子さん/介護・暮らしジャーナリスト。仕事と介護の両立や介護とお金、遠距離介護などをテーマに執筆、講演。著書に『親の介護で自滅しない選択』(日経ビジネス人文庫)ほか。

工藤広伸さん/介護作家。 自身の介護経験を綴ったブログ『40歳からの遠距離介護』が話題に。著書に『親が認知症!? 離れて暮らす親の介護・見守り・お金のこと』(翔泳社)ほか。

ひとりで親族の介護を担う「複数介護」が増加中

「以前と比べて家族間の介護状況が変わってきている」と、介護・暮らしジャーナリストの太田差惠子さんは言う。

「以前は夫の親は妻が見るのが当たり前といわれていましたが、いまは夫の親は夫、妻の親は妻が見るというのが主流になっています。

 一方で、離婚率も生涯未婚率も高くなり、別居中の両親や子供のいないきょうだい、未婚のおじ、おばなども増え、彼らを同時に介護する『複数介護』に直面している人も少なくありません。

親と配偶者の介護が同時に「同時多発介護」

 親を介護している間に配偶者が倒れてしまい、そちらも介護が必要になる人もいて、『同時多発介護』という言葉も登場しています」(太田さん・以下同)

 親が遠方や交通の便が悪いところに住んでいて、自宅と親の家を行き来するだけで疲弊してしまうこともある。

「介護の基本は介護する側が自分の生活を守ることです。それなのに移動で疲弊したり、金銭的な面で困窮するとたちまち立ち行かなくなり、介護うつを引き起こしかねません」

 それを防ぐためにも、まずはひとりで抱え込まないことが大切だ。

「いまは介護サービスなどが充実しているので、複数箇所で介護が必要になっても慌てることはありません」

「介護の不安や悩み、困ること」アンケート調査

■介護をしている中で困ることは?(n=187人複数回答可)

・病院付き添いや手続きなどのための定期的な帰省が負担 46.5%

・お金 39.6%

・離れて暮らしているため、何かあった時にすぐ対応できない 33.2%

・介護保険制度や仕組みが分からず、何から手をつければいいか分からない 31.0%

・介護と仕事の両立 29.4%

・離れて暮らしているため、自分ひとりで対応しなくてはいけない 19.3%

・介護者自身の体調に関する不安 18.2%

■介護に不安や悩みはありますか?(n=191人)

・とても強くある 44.5%

・ややある 46.6%

・あまりない 6.8%

・まったくない 2.1%

遠くにいる親などの介護をするにあたり、金銭の問題や負担のほか、すぐに駆けつけられないことに不安を抱えている人が多い結果に。

出典/わたしの看護師さん

親の介護が始まったとき慌てないための3つのステップ

 介護が始まるとき、これだけは覚えておきたい3つのステップ。

【ステップ1】介護の窓口を把握する

 親などの介護が必要になったら、まずは地域包括支援センター(以下、包括)に相談しよう。

「離れて暮らす親の介護をどうしたらいいか、同時に介護が始まったら何をしたらいいかなど、あらゆる介護の相談にのってくれます。

 遠距離の場合は介護が必要になった人が住む地域の包括に電話して相談すると、まず何をするべきかを教えてくれます。ここで介護全般の相談に対応するケアマネが決まります」(介護作家の工藤広伸さん・東京都在住)

【ステップ2】家族、親族内で窓口になる人を決める

 ケアマネが決まり、いよいよ介護が本格的に始動する前に、家族や親族内で誰が連絡窓口になるかを決めておこう。

「ケアマネや病院、施設では、連絡の窓口となる“キーパーソン”に連絡をします。キーパーソンは必ずしも近くに住んでいる人でなくてもよいのですが、以下の要素が求められます」(太田さん)

【1】介護に理解がある 

【2】連絡がつきやすい

【3】司令塔となってほかの家族や親族らに連絡できる

【4】家族間の調整がうまくできる人

【ステップ3】要介護認定を申請する

 介護保険サービスを使うための最初のステップが要介護認定。この結果次第で、受けられるサービスが違ってくる。

「要介護認定は調査員が自宅にやってきて、親の心身状態や介護の状況を見て、認定調査を行います。このときは必ず立ち会うようにしてください。

 というのも、自分は認知症でないと思っている親は、できないことでも『できる』と答えてしまい、判定が低くなることがあります。そうならないためにも、認定調査には立ち会い、ありのままの親の姿を伝えましょう」(工藤さん)

取材・文/廉屋友美乃 イラスト/田中斉 写真/PIXTA

※女性セブン2024年4月25日号
https://josei7.com/

●夫の定年後に妻が備えるべきこと「親の介護費用、退職翌年の住民税」ほか実例に学ぶ

●いつか直面する老親の介護、慌てないために「要介護認定は早めに、 一人で背負うのは厳禁」

●認知症を患う親の介護施設問題「認知症<可>の施設から入所を断られた」事例と対処法を専門家が解説

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