絶滅危惧種に会える!「ハシビロコウ」「アイアイ」「ニホンライチョウ」etc恩賜上野動物園の見どころガイド
東京の恩賜(おんし)上野動物園は約300種3000点の動物を飼育し、入場者数日本一の動物園だ。おなじみの動物から絶滅危惧種まで幅広い展示をしている。ただ、日本で唯一のマダガスカルマングース科のフォッサの「ベザ」(18才)が今年3月24日に永眠するなど、絶滅危惧種はすぐにでも見ておかないともう会えなくなることも。そこで、恩賜上野動物園の見どころとおすすめ動物たちの紹介をします。
「恩賜上野動物園」は希少な動物たちの種の保存に尽力
東京・上野公園の一角にある「恩賜上野動物園」は1882(明治15)年、農商務省所管の博物館付属施設として開園した、日本で最初の動物園だ。
この動物園で有名なのは何といってもジャイアントパンダ。1972(昭和47)年に、日中国交回復を記念して「カンカン」と「ランラン」が贈与されて以来、現在まで飼育、繁殖を行ってきた。現在も、「リーリー」と「シンシン」の間に「シャオシャオ」と「レイレイ」という双子が生まれ(2021年)、すくすくと育っている。
上野動物園では、飼育と併せてこうした“繁殖”にも力を入れている。希少動物の種の保存こそが、動物園・水族館において重要な役割だからだ。
「1980年代、環境破壊や乱獲により、国内外で絶滅危惧種が急増し、海外から動物を迎えることが難しくなりました。そんな折、都立動物園や水族園が、種の保存を目的とした『ズーストック計画』を発足。ほかの都立動物園等とも協力・連携しながら、希少動物の繁殖に努めるようになりました」(上野動物園広報担当者・以下同)
中でも上野動物園の繁殖技術は国内トップレベル。
「ジャイアントパンダだけでなく、スマトラトラやコビトカバなど、上野動物園生まれの絶滅危惧種が年々増えています」
日本唯一の「フォッサ」3月24日に永眠
希望をつないでいる一方で、繁殖が難しく、日本で唯一となった動物もいる。その代表が、3月24日に18才で急逝したフォッサだった。3月6日に取材したときは元気な姿を見せてくれたので、編集部でも驚きを隠せなかった。園内の動物とは、“一期一会”の思いで接するべきなのだ。
絶滅危惧種に希望!繁殖成功物語
日本初! 人工授精によるニホンライチョウ誕生!!
ニホンライチョウとは、日本アルプスの一部高山帯の草原、ハイマツ林にしか生息していない特別天然記念物の鳥で、氷河期の生き残りともされる。特殊な環境にいるため絶滅が懸念されており、上野動物園では2015年以降、保護増殖事業に協力。これまで20羽の繁殖に成功してきたが、2021年7月、初めて人工授精での繁殖に成功。このときのヒナは一般公開されていないが、2019年以降、オス1羽は上野動物園で見られる。ストレスにならないよう静かに、かつフラッシュ撮影禁止で、その貴重な姿を拝ませてもらおう。
恩賜上野動物園で絶対に見ておきたい、人気の絶滅危惧種はコレ!
file1 ホッキョクグマ
地球温暖化で絶滅の危機!デアとイコロの赤ちゃん誕生に期待
<生態>
●生息地/北極地方
●大きさ/メスで1.8~2m(150~300kg)、オスで2.2~2.5m(420~500kg)
●餌/当園では馬肉、りんご、アジなど
上野動物園では、2011年10月に「ホッキョクグマとアザラシの海」がオープン。翌年にイタリアの動物園からやってきたのがメスの「デア」(15才)。2015年、デアのペアリングとして、札幌市円山動物園からオスの「イコロ」(15才)を借り、人工授精などの繁殖活動に取り組み中。現在ホッキョクグマは全国に30頭おり、国内での繁殖例もあるので、期待して待ちたい。
file2 アイアイ
森林破壊で激減!日本ではここでしか見られない
<生態>
●生息地/マダガスカル島だけにすむ原猿類
●大きさ/体長36~44cm、尾長50~60cm
●餌/当園では果実野菜類、はちみつなど
2001年10月に初来日して順調に繁殖を重ね、最近では2023年5月にも繁殖に成功。「ソア」(メス・推定25才)と「ヒッチコック」(オス・19才)の間に子供(メス)が誕生。現在は11頭を飼育しているが、日本では上野動物園だけでしか見られない。長い指で餌を食べる姿は必見だが、音に敏感なので静かに見学を。
file3 アジアゾウ
国内初の繁殖に成功して生まれたアルンに会える
<生態>
●生息地/インドなどアジア南部
●大きさ/アフリカゾウより小型で肩高2.5~3.5m
●餌/当園では青草、牧乾草、わらなど
愛子さま誕生の際にタイから寄贈されたメスの「ウタイ」(26才)が2020年、国内初の繁殖に成功し、オスの「アルン」を出産。ゾウの妊娠期間は20~22か月と哺乳類では最長で、流産も多いので、まさに待望の出産に。現在はこの母子と「スーリヤ」(メス・推定29才)の3頭を飼育。タイヤやフィーダー(餌を中に仕込んだ遊具)で遊ぶ姿は必見だ。
file4 ハシビロコウ
“動かない鳥”で有名。今後の繁殖に期待
<生態>
●生息地/アフリカ中央部
●大きさ/足~頭までの高さ約1.2m、翼を広げたときの幅約2.5m
●餌/当園ではコイなど
サギとコウノトリとペリカンの特徴を併せ持った鳥。世界の動物園などでの飼育数は40~50羽と希少で、そのうち約3割にあたる12羽が日本の6か所の動物園で飼育されており、4羽(メス3羽、オス1羽)がここにいる。単独で生活する習性があるため繁殖が難しく、国内での繁殖事例はまだない。
世界三大珍獣とは?
ジャイアントパンダ、コビトカバ、キリン科のオカピを指すが、日本で唯一、これら三珍獣がまとめて見られたのが上野動物園だった。しかし2023年7月8日、オカピが16才で永眠。現在は神奈川県の2動物園(18ページ参照)で会える。
上野動物園のために私たちができることとは?
上野動物園では、大人1口1万円から資金提供できる「動物園サポーター」制度も。飼育環境の充実に役立てるうえ、入園券の進呈などのサービスも。詳細は(公財)東京動物園協会「動物園サポーター事務局」までお問い合わせを。
◆恩賜上野動物園データ
総面積約14haの広大な園内は、ホッキョクグマやゾウなどがいる東園と、ジャイアントパンダやアイアイなどがいる西園に分かれている。約300種3000点の動物を飼育しており、入園者数も年間約306万人と日本一を誇る(*)。
住所:東京都台東区上野公園9-83
営業:9:30~17:00(最終入園16:00、池之端門は10:00に開門)
料金:大人600円
*公益財団法人東京動物園協会「入園者数の状況」(令和4年4月~令和5年3月)より。
取材・文/前川亜紀 撮影/政川慎治 地図/もりそん
※女性セブン2024年4月25日号
https://josei7.com/
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