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健康

60代の約8割が該当「夜間頻尿」改善すれば病のリスク低下!すぐに実践できる対策12選を医師が解説

「なんだか夜中にトイレに起きる回数が増えた」と思っている人は要注意。夜間頻尿はあなたの生活を脅かし、最悪死に至る可能性がある危険な“病気”なのだ。水分をよく飲むいまの季節だからこそ気をつけたい「尿トラブル」の解決法とは―。

教えてくれた人

堀田晴美さん/東京都健康長寿医療センター研究所老化脳神経科学研究チーム自律神経機能研究研究部長、平澤精一さん/泌尿器科医・マイシティクリニック院長、福田千晶さん/医学博士

60代の約8割が該当する「夜間頻尿」症状や原因を解説

「熱中症対策に水を飲もう」

 夏のスローガンとして定着した合言葉の陰で、深刻な悩みを抱いている人たちが増えている。都内在住の土井篤子さん(62才・仮名)が言う。

「今年の夏から熱中症対策で1時間ごとにコップ1杯、血栓予防のため寝る前に1杯の水を欠かさず飲むようにしています。すると、夜中のトイレが1回から3回に増えてしまって…。朝起きても疲れが取れていない気がしますし、日中は頭がぼんやりしてパートの仕事でもミスが増えてしまいました」

 土井さんのように、夜間に排尿のため1回以上起きなければいけない「夜間頻尿」の高齢者は多い。東京都健康長寿医療センター研究所老化脳神経科学研究チーム自律神経機能研究研究部長の堀田晴美さんによれば、60代の約8割が該当するという。

「原因はいろいろありますが、大きな理由は加齢によって膀胱(ぼうこう)のサイズが小さくなること。また、若い頃は日中に尿がたくさん作られ夜になると量が減りますが、加齢によってそのサイクルが昼夜逆転し、夜に作られる尿量が増えるのです」(堀田さん)

 泌尿器科医で、マイシティクリニック院長の平澤精一さんも加齢が夜間頻尿の一因と口をそろえる。

「私たちの体内には、夜にトイレに行かなくていいように腎臓から排泄する水分量を調節する『抗利尿ホルモン』があるのですが、加齢に伴って分泌量が減るため夜間の尿量が増えるのです。つまり、ある程度トイレに起きる回数が加齢とともに増えるのはそれほど不自然なことではない。しかし病気が原因となっている場合もあるうえ、困っているのに“年のせいだから”と放置していると、重篤な状態を引き起こす可能性もあるのです」(平澤さん)

夜間のトイレが多い高齢者に危険なリスク

 堀田さんが懸念するのは睡眠の質の低下だ。

「夜間に何度も目を覚ますことで寝不足となり、集中力や判断力が落ちる。日中睡魔に襲われるなどQOL(生活の質)が低下します」(堀田さん)

 また、病気の兆候であるケースも存在する。代表的なのは糖尿病で、血液中の糖分を尿と一緒に排出しようとして多尿になると医学博士の福田千晶さんは言う。

「加えて女性に多いのが膀胱炎。ほかに子宮筋腫や前立腺肥大による膀胱の圧迫や高血圧、急に尿意を催す過活動膀胱などさまざまな病気が隠れている可能性があるのです」

 恐ろしいのは、夜中にトイレに立つことそのものが死につながるケースだ。

「夜中にトイレに行く回数が1回以下の人と比べると、2回以上の人は転倒リスクが約2倍になるという研究結果があります。足元が暗く、寝ぼけているため転倒骨折のリスクが高まるからです。転倒リスクを含め、夜間にトイレに行く回数が多い高齢者ほど死亡率が高いという研究結果もあります」(平澤さん・以下同)

 トイレに無事たどり着いても安心はできない。

「排尿することによって血圧が下がり失神する『排尿失神』が起こる可能性があります。そのうえさらに、夏場のトイレは熱がこもりやすい。夜間にトイレで失神してしまいそのまま朝になってしまったら、熱中症で亡くなる可能性があります。また、いきなり冷たい便座に座ることで急激に血圧が上がり、脳出血や脳梗塞、心筋梗塞を起こすこともある。夜間頻尿を改善しなければ、死に近づく一方です」

「夜間頻尿」を減らすためのポイント

 全身を蝕む夜間頻尿を少しでも減らす鍵となるのが、水分と塩分のコントロールだ。

「夏場は水分摂取量が多くなるため、夜間頻尿が増える傾向にあります。もちろん、水分量を減らせばおのずと尿量も減りますが、夏の熱中症は命にかかわるので夜間頻尿を恐れて水分を摂らないことは絶対に避けてほしい。目安とする摂取量は1日2L。食事1回で300mlほど摂れますので、3食食べているなら残りの目安は1Lほど。2時間に1回200mlの水分補給を1日8回、そのほか汗をかいたらその都度補給すれば問題ありません」

 その際に、何を飲むかが重要なポイントとなる。

「コーヒーやお茶に含まれているカフェインには利尿作用があり、水分補給には適さないうえ、夜のトイレを増やす原因に。飲む場合は朝や昼間にしてください」

 お酒がおいしく感じる夏だが、アルコールは注意したい飲み物のひとつ。

「ビールには利尿作用を促すカリウムが多く含まれるので、飲んだ量の1・1倍の尿が出ます。赤ワインや紹興酒もカリウムを多く含んでいるので頻尿になりやすい。どうしても晩酌がしたい人は、寝る2時間前までには終わらせた方がいいです」

 夕方以降はカフェインを含まない麦茶などがおすすめだ。夕飯のメニューも夜間頻尿に影響を与える。

「夕飯に塩分を多く摂ると、体が塩分濃度を一定に保とうとするため無意識のうちに水分の摂取量が増えます。また、野菜はカリウムを含むので大盛りのサラダや、すいかなど冷たい果物もなるべく夕食には出さない方がいいでしょう」(福田さん・以下同)

 冷たい飲み物は膀胱を刺激して収縮させ尿意を早めるため、寝る前は特に避けたい。

「下半身が冷えるとトイレが近くなるので、就寝時は寝巻きの下にインナーを着て腹巻きをしましょう。また、湯たんぽでふとんを温めておくなど体を冷やさない工夫をすることで、冷えによる尿意を避けられます」

 平澤さんは、むくみも夜間頻尿の原因になると話す。

「高齢になると下半身のポンプ機能が低下して水分がたまり、むくみが起きる。そのたまった水分は横になると上半身へ流れて尿になり、結果として尿量が増えてしまうのです。だから、寝る前にそのむくみをとってしまえば、夜のトイレ対策になる。14~17時の間に昼寝をし、余分な水分を出してしまえば夜間の尿量を減らせます」(平澤さん・以下同)

 むくみを抑えるには、日中に散歩や軽いスクワットで下半身の筋肉を動かし、血流を増やすといい。弾性ストッキングを日中にはくことでも、むくみを減らせるのでやってみてほしい。

「そのほか頻尿に有効なのが肛門や尿道を締めたりゆるめたりする『骨盤底筋体操』や『膀胱トレーニング』。膀胱トレーニングは尿意を感じたら1分間がまんしてからトイレに行くだけ。慣れてきたらがまんの時間を少しずつ延ばすことで、一日を通してのトイレの回数を減らせます」

 就寝前の一工夫としては「骨盤底さすり」がある。

「頻尿に加え、急に尿意を感じ、がまんが難しいことが週1回以上ある人は、過活動膀胱といって、膀胱の自律神経が過敏になっています。その場合、膀胱に近い会陰(えいん)部をゆっくりと指先が触れるかどうかの力で1分間さするだけで、過活動膀胱の症状が緩和できるという研究もあります(※1)。衛生面が気になる人はきちんと手を洗ってから行ってください」(堀田さん)

 適切な撃退法で、残暑厳しい夜もぐっすり眠ろう。

(※1)Iimura et al., PLoS One, 2016

すぐ実践できる「夜間頻尿」対策12【まとめ】

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