冬の健康対策!座ったままで全身の血流を改善する「下半身血管ほぐし」を医師が提案
11月から1月は1年で最も心筋梗塞が発症しやすく、血管の急激な収縮によって起きる脳卒中も冬の朝に発症しやすいとされる。冬は「血管」の病で命を落とすリスクが大きく上がるのだ。血管を若く健康に保つカギとは? 立命館大学スポーツ健康科学部教授の家光素行さんに、メカニズムや対策を聞いた。
3年ぶりのインフルエンザ流行が懸念される今冬に備え、新型コロナと同時に検査できるキットの増産やワクチン接種の予約など、寒波とともにやってくる流行病の対策にいそしむ人は多い。しかし寒い時期に気をつけるべきはウイルスだけではない。
国立循環器病研究センターの調査によれば、11月から1月にかけては1年で最も心筋梗塞が発症しやすい時期だという。同じく血管の急激な収縮によって起きる脳卒中も冬の朝に発症しやすいとされる。つまり冬は、血管病で命を落とすリスクが大きく上がる時期なのだ。
年を重ねた女性は、特に気をつけなければならない。立命館大学スポーツ健康科学部教授の家光素行さんが指摘する。
「女性ホルモンの『エストロゲン』には心筋梗塞や脳梗塞の原因となる動脈硬化を抑制する作用がありますが、閉経する50才前後になると分泌量は急激に減少します。そうした体の変化によって気がつかないうちに動脈硬化が進み、心疾患や脳血管疾患のリスクが上がっている可能性があります。血管病を予防するためには血管を柔らかく、また若々しく保つことが大切なのです」
しかし、体内にあり、目で見て状態を確認することが困難な血管を、どうケアすればいいのだろうか。
ほかの内臓疾患と同じで、病院に行って検査・治療したり、薬をのんだりするか、「血管にいい」「血液をサラサラにする」という食べ物を多く摂取するなど、「体内からじっくりケアする方法」が一般的に思いつくだろう。
一方で、家光さんは、血管に物理的な刺激を与える方法、つまり「体の外からケアする方法」も効果的だとアドバイスする。
「血管を若く健康に保つカギは、動脈血管の最も内側にある細胞の『内皮(ないひ)細胞』が握っています。内皮細胞には血管を拡張し、柔らかくしなやかに保つ働きを持つ一酸化窒素を産生させる役割がある。つまり内皮細胞の機能を活性化できれば、それだけ血管年齢が若返るということになる。そのためにはストレッチなどで刺激を与え、一酸化窒素の産生を促すことが最も肝要なのです」
全身に血流がみなぎる「下半身血管ほぐし」
家光さんがまず最初に取り組むべきと推奨するのは「下半身血管ほぐし」だ。
「人間の体は常に重力の影響を受けており、起床から就寝までの間に血液は次第に下半身に集まっていきます。特に仕事などで座っている時間が長くなる場合、末梢の血流が徐々に滞り、動脈硬化のリスクが上昇します。そのため、まず改善すべきは、下肢の血液の循環です」(家光さん・以下同)
下半身の中でも最初に取り組むべきは、脚の付け根の血管をほぐすこと。
「なるべく体の中心に近い部分からほぐしていくことを推奨します。脚の付け根に通っている大腿動脈は太く、多くの血液を末梢に送っているため、末梢の動脈の循環が促進され、末端の毛細血管まで広がりやすくなるためです。なので、まずは付け根から行いましょう」
付け根が終わったら、前ももと裏ももへ。ほぐす部分がしっかり伸びていることを確認しながら行いたい。
「ただし、痛みを感じるほど伸ばすのは控えてほしい。反対に、伸びを感じられないほど控え目な動きも意味がありません。取り組みながら“中間”を探ってみてください。また、集中するあまり呼吸を忘れて息を止める人もいますが、その状態でストレッチを続けると自律神経が乱れ、体が緊張して血管が広がりづらくなります。呼吸は止めないように意識してください」
行うタイミングはいつでもいいが、家光さんのおすすめは夕方だ。
「血液が下肢にたまってくる夕方に行うと、むくみの改善にも効果的です。定期的に行うことで、動脈硬化の予防はもちろん、血流がよくなった結果、冷え症に悩むことがなくなったという声も少なくありません。すき間時間にぜひ、実践してみてください」
座ったまま全身の血流を改善「下半身ほぐし」のやり方
【A】脚の付け根ほぐし
【1】背筋を伸ばして椅子に腰掛け、お尻の半分を外に出す。脚は肩幅程度に開く。
【2】付け根を伸ばすことを意識しながら、つま先を床につけたまま外に出した脚をゆっくり後ろに引いていく。反対の脚も同様に行う。
【B】前ももほぐし
【1】背筋を伸ばして椅子に腰掛け、お尻の半分を外に出す。椅子にのせた脚と同じ側の手で椅子のふちをつかむ。
【2】外に出した脚を曲げ、つま先を手でつかんで後ろに引いて前ももを伸ばす。反対の脚も同様に行う。
【C】裏ももほぐし
【1】背筋を伸ばして椅子に浅く腰掛け、つま先を天井に向けて片脚を伸ばす。
【2】【1】の姿勢を保ったまま、上半身を腰からゆっくり前に倒していく。手はそれぞれのひざに置いたままにする。反対の脚も同様に行う。
教えてくれた人
家光素行さん/立命館大学スポーツ健康科学部教授
イラスト/おしろゆうこ
※女性セブン2022年11月24日号
https://josei7.com/
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