ジョコビッチやミランダ・カーも実践する呼吸法「ヴィム・ホフエクササイズ」のやり方をイラストで解説
一般的に、成人が1日に呼吸する回数は約2万~3万回、およそ20㎏もの空気を吸い込んでいるという。しかし、質の悪い呼吸を繰り返すことは、健康を害する原因になりかねない。現代人の潜在的なパワーを引き出すため、“超人”の呼吸術が求められている。そこで、今注目のヴィム・ホフさん(63才)が考案した呼吸法を紹介する。
健康的になるための呼吸法
マインドフルネスの世界的な流行もあり、健康的になるための呼吸法が注目を集めている。
中でも、オランダ人のヴィム・ホフさん(63才)が考案した健康法は、テニスのノバク・ジョコビッチ選手(35才)やモデルのミランダ・カー(39才)といったアスリートやセレブたちが実践していると発言し、注目を集めた。
ヴィムさんは「アイスマン」と呼ばれており、北極圏での素足のハーフマラソンの記録や、氷が敷き詰められた浴槽での入浴時間など、“極寒”に関連する20ものギネス世界記録を保持している、世界一寒さに強い“超人”だ。2017年に放送された「明治プロビオヨーグルトR-1」のテレビCMで、俳優の加瀬亮(47才)と雪山で共演していた姿を覚えている人もいるだろう。
「ヴィム・ホフ・メソッド」では、冷水のシャワーを浴びたり、氷水の入ったボウルに両手をつける「コールド・トレーニング」が注目を集めることも多い。コールド・トレーニングにより血管が鍛えられ、血行改善、感染症への抵抗力上昇、アンチエイジングなどがのぞめる。
しかし、特に高齢者の場合は、専門的な知識を身につけずに行うとリスクも伴うため細心の注意が必要だ。そこで今回は、ヴィムさん自身が“氷づけ”になる前に行っている「呼吸法」を紹介したい。
1分間に呼吸を11回以上している人は健康リスク大
ミランダ・カーはファッション誌のインタビューで、ヴィムさんの「呼吸エクササイズ」を実践していると明かし、「体と心の健康に効果があるんだって。体力やスタミナがつく」と語っている。
ヴィム・ホフ・メソッドは2011年からオランダのラドバウド大学医療センターで長期間の研究が行われ、この「呼吸エクササイズ」によってヴィムさんが自律神経を操っていることがわかった。
自律神経には「交感神経」と「副交感神経」の2種類がある。この2つの神経がバランスよく働くことで、内臓、代謝、体温といった人間の生命を支える重要な機能をコントロールしている。
しかし、ヴィムさんの著書『ICEMAN 病気にならない体のつくりかた』(サンマーク出版)では、外部からの刺激を過剰に受け、慢性的な疲労を抱えた現代人の「呼吸の速さ」が次のように指摘されている。
<自転車選手は休憩中には1分間に6回しか呼吸せず、心拍数は1分間に40未満だという。過労の人は1日中呼吸が速すぎて、ほとんどの人は心拍数が1分間に70以上もある。つねに呼吸数のレベルが高いとしたら、そろそろ健康上の問題を起こすだろう>
呼吸の回数は、息を吸い、息を吐き終わり、再び吸う直前までを1回としてカウントする。安静時ならば1分間に6~10回で充分とされ、11回以上は呼吸が乱れている状態だ。
みえ呼吸嚥下リハビリクリニック院長の井上登太さんは、呼吸で使われる筋肉の違いについて、このように解説する。
「安静時のゆったりした腹式呼吸は、横隔膜の筋肉によって行われます。横隔膜を使った呼吸は体への負担が少なく、“質のいい呼吸”といえます。一方、浅くて速い胸式呼吸では、“呼吸補助筋”という首や肩、胸などにある筋肉が働く。呼吸補助筋で行う呼吸は効率が悪く、腹式呼吸と比べて場合によっては5倍以上ものカロリーを必要とする。そのため、浅くて速い呼吸を日常的に続けている人は疲れやすく、筋肉の疲弊で肩や首のこりも感じやすくなります」
こうした不調を改善するだけでなく、自ら体を強化する呼吸法がヴィムさんの「呼吸エクササイズ」だ。
【1】ゆっくりと息を吸って、吐く
鼻から息を吸って、鼻からゆっくり吐く。完全に息を吐き切らず、肺に少しだけ空気を残す。心地よいと感じるペースで呼吸を30回繰り返す。
【2】息を吐き切って大きく吸う
体の中にある空気をすべて出し切るように深く息を吐き、吐き切ったら大きく息を吸う。胸からお腹まで膨らむように深く吸い込もう。
【3】息を吐いて息を止める
たっぷり息を吸ったら、ゆっくりと息を吐く。最後まで吐き切ったところで息を止める。目安は30~90秒程度だが、苦しくなったら息を吸ってOK。
目標は90秒程度息を止められるようになること
まずはウオーミングアップとして、体内の酸素と二酸化炭素を正常なバランスに戻す必要がある。鼻から大きく息を吸い、鼻か口からゆっくり息を吐き、苦しくなる手前まで息を止める。これを2分間繰り返すだけでリラックス効果がある。
「呼吸エクササイズ」では、より時間をかけ、より深く呼吸を行う。慣れないうちは、めまいのような症状が出ることもあるため、座った状態やベッドで横になった状態など安全な体勢で行うこと。まずは鼻から息を吸い、ゆっくり吐く。この際、息を完全に吐き切る必要はなく、心地いいリズムで30回繰り返す。
次に、完全に息を吐き切って、深く息を吸う。吸った息をゆっくりとすべて吐き切ったら、そこで息を止める。止めている時間は、30秒から90秒程度が目安となるが、苦しくなったら無理をせず吸って構わない。
厳密な回数は定められていないが、一連の呼吸を3回程度繰り返すのが目安だ。ペースがつかみにくい場合は、ヴィムさんの公式YouTubeチャンネルで初心者向けの日本語音声ガイドもあるので利用するといいだろう。
「呼吸エクササイズ」で深く息を吐くと、血中の二酸化炭素濃度が下がる。その状態で息を止めると細胞に多くの酸素が取り込まれるようになり、大量のエネルギーが生み出されるという。さらに、たっぷりと体に取り込まれた酸素は脳にも好影響を与え、睡眠障害や抑うつなどにも効果的だと前述の長期研究によって明かされている。
こうして、「呼吸エクササイズ」で常人離れしたエネルギーを生み出したことにより、ヴィムさんは北極海で寒中水泳をしたり、ショートパンツとサンダルで氷点下30℃のエベレストを登山できる“熱”を生み出した。
独自の健康法を究め、「細菌やウイルスにも克てる」と語るヴィムさんほどの超人にはなれずとも、息を「吸う・吐く・止める」ことを意識するだけで、本来の体の強さを引き出すことはできるかもしれない。
※女性セブン2022年9月29日・10月6日号
https://josei7.com/
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