シニア世代におすすめ「火を使わない調理器具」3選 家事アドバイザー矢野きくのさん
60才を過ぎたら火を使うコンロやグリルを見直して、できるだけ安全なキッチンで調理を続けたい。そこで注目なのが電気式の調理器具。家事アドバイザーの矢野きくのさんが実際に使っている、シニア世代におすすめの調理器具と、具体的な使い方を聞いた。
火を使わない3つの調理器具と使い方
同じ料理をするにしても、使う道具によって想定される危険の数や内容が変わってきます。また、若い頃は問題なかったことも年齢を重ねるにつれて、忘れやすくなるなどの要因で危険度が増すことも。とくに火を使うものに関しては、消し忘れや吹きこぼれなどの可能性もありますよね。
そこでシニア世代が安心して使える「火を使わない」調理器具をご紹介していきたいと思います。
1.コンロはIHへ「タイマーで消し忘れ防止」
火を使うガスコンロはさまざまな危険が想定されます。近年のガスコンロは温度センサーや吹きこぼれたらガスを止める装置がついていますが、もしも古いコンロを使っているご家庭であれば、余計に注意が必要です。
IHだから絶対に事故は起こらないというわけではありませんが、やはりガスコンロに比べるとIHのほうが安心して使うことができます。そもそも火を使わないので、火事の危険というものが激減します。
我が家では、ガスコンロをIHに切り替えたのが1年前。IHによってもいろいろなタイプがありますが、我が家のものは3つの口すべてにタイマーをセットできるので、加熱をはじめる段階で「切る」タイマーをセットしています。
これはとくにシニアの方にはおすすめしたい方法。「自分は忘れない」と思っていても年齢を重ねるにつれて「うっかり忘れてしまう」こともあるかもしれません。コンロを使うときに、タイマーをセットする習慣をつけておくといいでしょう。
システムキッチンごと取り替えるのではなく、ガスコンロの部分だけを取り外し、IHのプレートを乗せ、電気系統を適合するように工事をするだけで使えるものも多くあります。
2.電気式ロースターで「焼き魚も安全調理」
今すぐIHに変えられないようであれば、魚焼きグリルだけを電気を使うものに変えてみるのもいいかもしれません。コンロの上でする調理と違って、魚焼きグリルは視界に入りづらいので、消し忘れなどが考えられます。コンロ自体に安全装置がついていたり、タイマーをセットしたりできる方ならまだいいのですが、古いタイプの魚焼きグリルを使っている場合は、電気式のロースターもおすすめです。
オーブントースターのようなもので、煙がほとんど出ないという商品もあります。我が家で使っている電気式の魚焼きグリルは、 Panasonicの『スモーク&ロースター けむらん亭』で、サンマをまるごと2尾焼ける横長のものです。魚焼きはもちろん、肉を焼いたり、揚げ物を温め直したりするのにも利用しています。
メニューを選ぶだけで焼き加減なども自動で調整されます。焼きたいものを選んでスタートボタンを押すだけなので、シニア世代の方にも簡単に使いこなせると思います。何よりも焼き上がったら自動で切れるので、消し忘れて焦げてしまうということもありません。
3.電気調理鍋「ボタンひとつでタイマー調理」
コンロの取り替えができない場合、電気調理鍋だけでも導入する方法があります。火は使いませんし、前述のPanasonicけむらん亭もそうですが、調理開始時にタイマーをセットして時間が来たら自動で切れるので、消し忘れるという事態を避けることができます。
年齢を重ねると電気調理鍋のように新しいもの、設定が必要なものなどを使いはじめることに抵抗があるかもしれません。しかし最近の電気調理鍋はシニア層が使うことが想定されているものも多く、メニューを選んでスタートボタンを押すだけというものもあります。
実際に私が活用しているのは、圧力鍋機能もあるティファールの『クックフォーミー』という電気調理鍋です。
圧力鍋機能として使う場合も、調理鍋として使う場合も、メニューに表示される順番に従ってボタンを押していくだけなので簡単です。
自分の火加減(加熱加減)で調理したいという場合や、メニューを選ぶのが面倒という場合は、既存の自動調理メニューを選ばなくても、マニュアル操作で「加熱」「○分」の操作だけを覚えて、コンロで鍋に火をかけるイメージで使うのもいいでしょう。
電気調理鍋の中では、シャープの『ヘルシオ ホットクック』も“おまかせ”でおいしい料理ができると人気です。
調理で長年火を使ってきた人が「電気」に変えるというのは、抵抗を感じることもあるかもしれませんが、「火を使わない」だけでなく、「メニューを選ぶだけ」という使いやすさの点で、シニア世代にこそ使ってほしい家電だと思っております。
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我が家はこれ以外にも、テーブルで鍋を囲むようなときも、卓上用のIHコンロと鍋を使ったり、グリル鍋といってホットプレートの鍋版のようなものを使ったり、家の中で火を使うものを基本的に排除しました。
ただし、ひとつ注意が必要なのは、すべてを電気にしてしまうと停電のときに何もできなくなってしまうということ。停電に備えてカセットコンロの準備もしてあります。
使いやすく、より安全なキッチンにアップデートとしていくのは、何才からという明確なラインがあるわけではありません。新しい環境や新たな道具に慣れるということを考えると、早ければ早いほどいいかもしれません。キッチンに限らず、環境をアップデートするのは動き回れる元気なうちに取り組むのがおすすめです。
執筆
家事・節約アドバイザー・矢野きくのさん
家事の効率化、家庭の省エネを中心にテレビ・講演・連載などで活動。NHK『ごごナマ』準レギュラー他テレビ出演多数。新聞での連載のほか自動車メーカー、家電メーカーなどの企業サイトでコラムの執筆経験も。近年は中高年層の家事アドバイスや家庭でできるSDGsについての講演、SNSでの情報発信でも活動している。著書『シンプルライフの節約リスト』、『「節電女子」の野菜レシピ!』など。https://yanokikuno.jp/