介護現場で実際にあった靴のお悩み別おすすめケアシューズ「認知機能低下、むくみやすい、踵を踏む」
高齢者の足をサポートするケアシューズ。介護施設やリハビリのときなどに必要となるものだ。福祉用具販売員の山上智史さんに、介護現場で経験した利用者様のケアシューズに関するお悩みと解決法を教えてもらった。おすすめのケアシューズも合わせて紹介する。
正しいケアシューズで歩く楽しみを
介護が必要な人や普通の靴だと歩きにくくなってきた高齢者のために設計されたケアシューズ。介護施設やデイサービスでは、ケアシューズを室内履きやリハビリ用として持っていくケースもある。
そんなケアシューズ選びをサポートしているのが、福祉用具販売員として活動する山上智史さんだ。
介護施設などに出向き、利用者さんの声を聞いてケアシューズを選ぶお手伝いをしている。購入からお届けまでサポートすることも。
「足や歩行の状態にフィットするケアシューズを選ぶことで、転びにくくなったり、歩き方が安定したりする場合があるんです。
本人の体の状態にあったお気に入りのケアシューズで歩く意欲が出てきて、外出が楽しくなったという人もいらっしゃいます」
山上さんは、実際に介護現場でケアシューズに関して相談を受けることも多いという。
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1.「ケアシューズは色選びで転倒予防にも」
認知症で施設に入所・要介護3の女性(70代)
「要介護3の女性(70代)リハビリのためのケアシューズを検討してほしいと依頼がありました。認知機能と視力が低下していらっしゃって、足元の注意力が落ちているということでした。
理学療法士との歩行リハビリ中にも、ご自身の足の位置が把握しにくいようで、つまずきやすくなっていました。
そこでケアシューズを選ぶ際、色を認識しやすいように赤いケアシューズをご提案させていただきました。早速、履いてみてもらったところ、視認性がアップしたようで、歩き方が安定してきたんです。リハビリのときは必ずこの赤いケアシューズを履いていらっしゃいます。ご自身の足の位置がわかりやすくなり、転倒することが減りました」
はっきりした色で視認性アップ
パステル405 左(ムーンスター)
足の甲の高さに応じてバンドの長さが調節可能で脱ぎ履きしやすい。つま先はストレッチ素材で伸縮性がある。外反母趾やむくみに対応。ワインカラーは女性に人気。
2.「むくみやすい足にもフィットするおしゃれなシューズがほしい」
糖尿病のむくみに悩む女性(60代)
「糖尿病が原因でむくみがひどくなっていた女性(要支援、60代)の方から、『足がむくんでしまうのだけど、おしゃれなシューズを履きたい』と、相談を受けました。
まずは、ご本人の好みを伺って刺繍がしてあっておしゃれなデザインのものを選びました。足を締め付けず、面ファスナーのベルトで調整できるタイプなら、その日のむくみに合わせて微調整できます。
その後もお気に入りのおしゃれなケアシューズで積極的に外出を楽しんでいらっしゃいます」
面ファスナーで調整しやすい
・快歩主義L052(アサヒシューズ)
靴の上部が大きく開く面ファスナーなので脱ぎ履きしやすい。つま先と踵が巻き上げられているので、つまずき防止、蹴り出しや着地を助けてくれる。3.「靴のかかとを踏んでしまうのが悩み」
高齢者施設に入所・70代男性
「施設で室内履きのケアシューズのかかとを踏んで歩いてるという70代の男性の利用者様がいらっしゃいました。この状態だと、転倒の危険性がありますし、階段なども危ないんですね。
ご本人の様子を確認してみると、シューズのかかとに指を入れて履くという細かい動作ができないということがわかりました。ご本人も好きでかかとを踏んで歩いていたわけではないんです。
そこで、かかとにループ(輪っか)が付いたものを選びました。ご本人に試し履きをしてもらったところ、輪っかを引っ張ることでかかとをすっと入れることができました。
それ以降は、かかとを踏んで歩くこともなくなり、安全に施設内を歩いていらっしゃるということです」
かかとのループで履きやすい
・スリットベルト(徳武産業)
かかとの上部にループが付いているので、指に力が入りにくい人など脱ぎ履きしやすい。底に滑り止めが2か所付いているので、蹴り出すときに力を入れやすい。***
介護が必要になった人の足を支えてくれる大事なケアシューズ。本人の悩みに寄り添うケアシューズを選ぶことで、安全に安心して歩くことが叶う。介護現場で必要な道具を選ぶお手伝いしてくれる福祉用具専門相談員さんのアドバイスを参考に、高齢の親にフィットするケアシューズを選んでみてはいかがだろうか。
教えてくれた人
福祉用具専門相談員・山上智史さん
福祉用具貸与事業所にて介護福祉士として介護現場を経験。現在は福祉用具貸与事業所「K-WORKER」と便利屋事業(住まいるサポート)の管理者を務める。福祉用具専門相談員としての現場経験をいかした「高齢者在宅の自立支援・介助者負担の軽減を目的とした介適環境づくり」を実践している。https://k-worker.co.jp/
取材・文/本上夕貴