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認知症の母が暮らす実家の水栓が壊れた!蛇口の閉め忘れ問題に息子が思うこと

 認知症の親が蛇口を閉め忘れて水が出しっぱなしになっていた…。そんな悩みに対し、母の遠距離介護をしている作家でブロガーの工藤広伸さんが思うこととは。ある日、台所の水栓レバーが壊れ、お湯が出ないという。工藤さんが考える対処法とは。

認知症の母が暮らす実家で台所のお湯が出ない!?

 認知症の人が蛇口を閉め忘れて、水を出しっぱなしにして困っているという悩みを耳にすることがあります。

 わが家は、母がしっかり蛇口を閉めてくれるので問題ありませんが、水回り問題はゼロではありません。

 どんな水回りの問題を抱えていて、蛇口の閉め忘れ問題をどう考えたかについてご紹介します。

 わが家の台所はシングルレバーの混合水栓で、レバーを右に回すと水が出て、左に回すとお湯が出ます。シャワーヘッドがついていてノズルが伸縮するので、シンクの端まで掃除が可能です。

 真冬に台所のお湯を使おうと思ったら、なかなかお湯が出ません。最初はボイラーが壊れたと思ったのですが、お風呂場のお湯は問題なかったので、20年以上使っていた混合水栓の故障を疑いました。

 前からシャワーの水圧が安定せず、台所の床に飛び散るほどの勢いで水が出たことがありましたし、真冬なのに、母がお湯になるのを待てずに冷たい水のまま顔を洗ったりもしました。母の髪の毛を台所で洗っていたときも、お湯が急に水に変わったこともありました。

以前と同じタイプの水栓レバーに交換

 生活が不便になってきたので、急きょ近所のホームセンターに水道修理の依頼をしたのです。見てもらったところ、予感は的中。混合水栓が古くなっていたので、これまで使っていたものに限りなく近い、シングルレバーの混合水栓に交換しました。

 認知症が進行しているため、同じ操作や機能の水栓でないと、母は使いこなせません。この条件を優先した結果、工事費を含めて7万7000円の高額出費になってしまったのです。

母は新しい水栓を使いこなせるか?

 ほぼ同じ機能とはいえ、色や形が変わった水栓を使いこなせるか、母の様子を数日観察しました。シャワーへの切り替え方が若干変わってしまったため、うまくできないのですが、水とお湯の調整や、ノズルの出し入れは問題なく使えています。

 ただ、母は水栓レバーを右に左にガチャガチャ動かして使っていたので、おそらくレバーを過度に動かした結果、水栓が早く劣化したのかもしれません。これも認知症の影響で、左に回すとお湯が出て、右に回すと水が出る構造を忘れてしまったのでしょう。

 新しい水栓はとりあえず問題なく使用できていますが、この調子だと蛇口を閉め忘れる可能性もあります。そんなときのために、こんなシミュレーションをしています。

認知症の人が蛇口を閉め忘れたときの対処法

 わたしは以前、認知症の人の蛇口の閉め忘れに対して、「自動水栓を取り付けると解決します」と回答しました。自動水栓は、蛇口付近に手をかざすとセンサーが反応して水が出て、一定時間が経つと自動で水が停止します。

 最近は後付けできる自動水栓が売っていて、工事も不要なので、自動水栓が役に立つと思っていました。ところが病院の自動水栓の前に立った母が、「あれ、水が出ない?」と言ったのです。

 母は自動水栓の仕組みを忘れてしまったのですが、分からないなりに手をかざしていたら水が出ました。ひょっとすると、認知症の人の中には、自動水栓の仕組みが分からない方もいるかもしれません。

認知症の母が使いこなせる昔ながらの蛇口とは?

 他の方法を探していたところ、母が洗濯機に給水するための2つの蛇口(水栓)を使いこなしている様子を、偶然見かけたのです。

 2つの蛇口とは、赤のお湯と青の水の蛇口が独立したタイプで、自分でお湯と水の蛇口をひねりながら、温度調整をします。昭和の時代によく見かけた蛇口ですが、母は慣れ親しんでいたからか、こちらは問題なく使えています。

 便利なレバータイプの水栓が一般的になった今、わざわざ工事をして、昔ながらのタイプに戻さないとは思うのですが、選択肢としては残しています。

 また、「水を使い終わったら、蛇口をきちんと閉めましょう」と書いた貼り紙を、蛇口付近に貼って注意喚起する方法も考えたのですが、母は水回りの貼り紙ははがしてしまうので、この案は却下しました。

水の出しっぱなしの怖さ

 水の出しっぱなしは、水道料金に大きく影響します。最近は水漏れを知らせるスマートセンサーが発売されているので、設置場所の工夫が必要になりますが、水漏れをスマートフォンに通知できます。

 水の出しっぱなしの怖さは、水道料金のほかに漏水があります。マンションやアパートの場合、階下の部屋を水浸しにしてしまうと、損害賠償に発展しかねません。

 わたしは20代の頃、お風呂のお湯をホースで給水しながら洗濯していたところ、ホースが外れてしまい、階下の部屋のロフトを漏水させて、お詫びに行った経験があります。保険に入っていたおかげで、費用負担は少しで済みましたがこうした問題も起こり得ます。

 水道料金も漏水も多額の出費につながりますが、母の行動を制限するつもりはありません。これまでどおり自立した生活を続けてもらうために、水回りには細心の注意を払っていきたいと思っています。

 今日もしれっと、しれっと。

工藤広伸(くどうひろのぶ)

祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/)。音声配信メディア『Voicy(ボイシー)』にて初の“介護”チャンネルとなる「ちょっと気になる?介護のラジオ」(https://voicy.jp/channel/1442)を発信中。

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