「お泊まりデイ」は月6泊で3万円と高額!でも、利用したい祖母の気持ち
介護には様々な費用がかかる反面、すべてが介護保険でまかなえるものではない。なかには保険適用外のサービスであっても、様々な事情から利用したいもの、利用せざるを得ないものもある。
現在86才の祖母を在宅介護しているライター・奥村シンゴ氏が利用しているサービスが「お泊りデイサービス」だ。その費用は実情はどうなっているのか、奥村氏が自身の体験をリポートする。
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私は祖母を在宅介護し、6年目が経過している。祖母は「要介護4」で数年前から「お泊まりデイサービス」(以下、お泊まりデイ)を利用している。
お泊まりデイというのは、日中はデイサービス(通所介護)を利用し、夜間はそのまま宿泊ができる介護サービス(※1)だ。
※1「お泊まりデイサービス」は介護保険適用外。
祖母は現在、お泊りデイを毎週2回(そのうち1回はその施設のデイサービスを利用)、他のデイサービス(その施設はお泊まりデイを実施していない)を毎週1回、介護保険適用のショートステイを月2回利用している。
お泊まりデイを利用する人達は、ショートステイ先が満員で利用できない場合や、祖母のように「気に入っているから」など、その利用理由ははさまざまだ。
ショートステイよりお泊まりデイが好きなワケ
祖母が利用しているお泊まりデイは、一軒の家がそのまま事業所となっている。けっして広いとはいえず一般的なショートステイに比べると、施設体制も十分とはいえないだろう。
例えば、就寝時は布団に10人近い人数が横になって雑魚寝したり、お風呂は普通の家庭にあるものを使用していたりする。介護スタッフも利用者数20人近くに対し5人程である。
祖母は一般的なショートステイも月に2回利用しているのだが、そのたびに「二度と行きたくない」と嫌がっている。
ショートステイはお泊まりデイに比べて、施設も広く、食事や排泄の世話もしてもらえ、風呂やベッドなどは介護用のものが用意され、預ける家族の目線では、一見ショートステイの方が安心できるように思えるが、実際は、3食のご飯、入浴以外レクリエーションなどは短時間で、それほど活動的に過ごせるとは言い難い。
また、お泊まりデイとは別の施設でのデイサービスも週1回利用しているが、そこは、「小規模多機能型施設」といって全ての介護サービスを1箇所でうけられる事業所の為、「泊まる人(そこの施設に入居しながら、デイサービスにも通っている人)も多くて私はよそ者だね」と言う時がしばしばある。
一方で、お泊りデイについては、「(スタッフの)男の子達が優しいんだよね。いろいろゲームやカラオケできて楽しいし、落ち着くんだよ」と、家庭的な職員の対応の良さや、活動的な雰囲気を好んでいる。
お泊まりデイは、日中はデイサービスとして機能しているので、ゲーム・散歩・カラオケ・マッサージなどさまざまなレクリエーションが体験できるので活動的な印象が強い。
家族側からみても、仕事や(家族の)体調不良などでの緊急時でも、デイサービスや宿泊をおおむね受け入れてくれるうえ、祖母も嫌がることなく行ってくれるので、大変助かっている。
祖母はお泊まりデイから帰宅してきた際も、”デイサービスだけ”やショートステイの時と比べて疲労度も少なく比較的情緒が安定しているようだ。
デイサービスのように朝行って夕方前に帰宅したり、ショートステイのように活動的じゃなかったりすることがなく、同じスタッフや利用者や環境で移動も最小限にすみ本人の負担が少なくすむのではないかと考える。
利用したい保険外サービスの1位が「お泊まりデイ」
日本政策金融公庫総合研究所が調査した「介護者からみた介護サービスの利用状況によると、「利用してみたい」保険外サービスは「お泊まりデイサービス」が35.5%で最も多い。しかし、介護保険対象外のため、宿泊代や食事代は実費となり、施設によって料金もバラツキがある。だいたい1泊すると5000円前後だろうか。
祖母は月6回宿泊しているので、3万円以上毎月必ずかかっている。これの他にも介護保険を利用した介護費用がかかるので、1か月あたりの介護サービスの利用の合計額は自ずと高額になる。
「お泊まりデイサービス」は、「高額介護サービス費制度」(※2)も適用外だ。
※2 介護サービスを利用する場合に支払う利用者負担には月々の負担の上限額が設定されて います。1ヵ月に支払った利用者負担の合計が負担の上限を超えたときは、超えた分が払い戻される制度。
参照HP:http://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-12300000-Roukenkyoku/0000165766.pdf
ニーズが高い反面、金銭的な問題でお泊まりデイを利用したくても利用できない人たちがいるだろう。もう少し利用しやすい形になってもらえればありがたいのだが。
文/奥村シンゴ
プロフィール:大学卒業後、東証一部放送・通信業界で営業や顧客対応などの業務を経験し、6年前から祖母の認知症在宅介護を経験中。在宅介護と並行してフリーライターとして活動し、テレビ、介護、メディア、阪神地区のテーマを中心に各種ネットメディアに寄稿。他時折テレビ・ネット番組や企業のリサーチ、マーケティングなども担当している。
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