盲点だった靴裏を除菌する商品を筆記用具メーカーが開発した理由
『キラースタンプ』は、建物の玄関先に置いて靴裏を除菌するもので、見過ごされがちな足元からの菌・ウイルスの侵入を防ぐ感染予防グッズ。開発したのは意外にも筆記具メーカーだ。筆記具の技術を転用した新ジャンル商品にはどんな利点があるのか? 感染予防に託された思いを聞いた。
見逃されがちな靴底の消毒 筆記用具メーカーが自社技術の応用で商品開発
コロナ禍で手指は頻繁に消毒されるようになったが、一方で見逃されがちなのが靴底の消毒だ。
アメリカの疾病管理予防センターは、靴底が外部からウイルスを運ぶ可能性を示唆している。また、東京都健康安全研究センターの調査でも、乾燥したカーペット上で足踏みをすることによってウイルスが舞い上がり、靴底・手・足に付着することが判明している。
靴裏の汚れを落とすマットは公共施設や交通機関、飲食店などで使用されていたが、『キラースタンプ』のように除菌水を染み込ませて消毒するタイプはほとんど見かけなかった。というのも、除菌水で靴裏が濡れ、玄関内に足跡が残ってしまうというデメリットがあり、広く普及しなかったからだ。
そこに注目したのが東京・大田区にある筆記具メーカーのミクロだ。ミクロは30年以上にわたりシャープペンシルやボールペンなどの筆記具を製造してきた。同社社長の島剛彦さんは「筆記具を作る技術において、日本はトップレベル。この高い技術力をほかの分野に応用できないか。それが長年のテーマでした」と語る。
着目したのがマーカーペン。マーカーペンはペン先を紙に押しつけることで適量のインクが出る仕組みになっているが、この技術を転用できないかと考えたのだ。ペン先の素材をいくつか集めて実験したところ、ピッタリだったのが油性マーカーペンに使用している不織布だった。この不織布に除菌水を染み込ませ、足で踏んだときに適量を靴裏に付着させることができるよう研究を重ねた。
さらに課題になったのは紫外線。除菌水は紫外線に弱いので、紫外線をカットする必要がある。マットの上にかぶせる網目状のシート(キラーシート)にステンレスをコーティングすることで、紫外線・赤外線をカットし遮熱性を高めた。
玄関先や車の中に敷くことも可能
キラーシートの表面イラストは、立ち位置を表す無機質な足裏マークをあえて採用しなかった。
「ソーシャルディスタンスを示すためによく見るマークですが、コロナ禍が長引き、もうあの上に立つのはうんざり……という周囲の声をよく聞いていたため、あえて足裏のマークにはしませんでしたが、ポップでわかりやすいと好評です」と島さん。
昨年10月から構想を練り、発売を開始したのが今年7月。すでにオフィスや事業所、ショップなどで次々と導入が始まっている。
もちろん一般家庭でも使用可能で、玄関先はもちろん、車内では靴を脱ぐという人なら車に敷くのもおすすめだ。コロナウイルスだけでなく、ノロウイルスの予防にも効果はてきめんだという。
「キラースタンプの次も、筆記具作りのノウハウを生かした商品を計画中です。近日中に発表予定です」と島さんは意気込みを語った。
手指の消毒に気を配るのと同じように、これからは足元からの感染予防にも気を配っていきたいものだ。
【データ】
キラーマットに専用除菌水(原材料:純水・次亜塩素酸ナトリウム・pH調整剤)を染み込ませて使用する。家庭で使用する場合は、除菌水1リットルで約1か月使用可能。縦453×横453×厚さ24mm。『キラースタンプ』3万5640円。電話:03-5483-4019(ミクロ 環境事業部)
※女性セブン2020年9月2日号
https://josei7.com/
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