認知症の母が家電のプラグを抜いてしまう…困った行動に息子が試した2つの対策
岩手でひとり暮らしをしている認知症の母を8年に渡って遠距離介護している作家でブロガーの工藤広伸さん。エアコンや見守りカメラなど介護に必要な家電のプラグを抜いてしまうという困った問題が…。夏場はエアコンの電源を抜いてしまうと熱中症も心配だ。そんな中、工藤さんが試してみた対策とは?
認知症の母がプラグを抜いてしまう…
認知症の人がコンセントからプラグを抜いてしまい、冷蔵庫の中の食品をダメにしてしまったり、使おうした家電が動かなかったりした経験はありませんか?
わが家でも母がプラグを抜いてしまったために、見守りカメラが映らなくなったり、固定電話がつながらなくなったりして、何度も困った経験があります。
なぜ認知症の人は電源を切らずに、プラグから抜いてしまうのか? その理由とわが家の対処法をご紹介します。
認知症の人がプラグを抜く理由
まず、認知症の人がプラグを抜いてしまう理由は、次のようなものが考えられます。
・コンセントから出火しないかと、火事の心配をしている
・電源を切るのではなく、プラグから抜いたほうが節電になると思っている
・リモコンを使った電源の切り方を忘れてしまい、やむを得ずプラグから抜いてしまう
最初の2つは、認知症の人に限らず、高齢の方によくある行動だと思います。その行動が習慣化して、認知症になっても継続している方もいるようで、高い場所にあるエアコンのプラグまで抜いてしまう方もいます。
プラグを抜くことで、待機電力が減って節電につながる部分もありますが、利便性は失われますし、起動時に大きな電力を消費します。それに古い家電を新しい家電に替えたほうが、節電の効果はより大きくなります。
しかし、こうした説明を認知症の人が理解して受け入れてくれるかどうかは分かりません。
母の場合は、テレビとエアコンのリモコンの違いが分からなくなったり、テレビの電源ボタンがどれか、分からなくなったりしました。最終手段として、元のプラグから抜いてしまうようです。
テレビなら大きな問題にはなりませんが、わが家ではインターネット回線の元になるルーターや固定電話のプラグも抜いてしまい、カメラによる見守りや電話連絡ができなくなったことがありました。
特にインターネットは、エアコンなど家電の遠隔操作にも使っています。エアコンが操作できない母が熱中症になる恐れもあるため、対策をいろいろ試してみたのです。
わが家で試したプラグ対策
最初はコンセントのそばに、「抜かないで」と書いた紙を貼りつけました。しかし母は、貼り紙が邪魔と思うようで、はがしてしまいます。
そこで、今度は「はずしちゃダメ!!」と書いた貼り紙をラミネートして、さらに結束バンドでコードに巻き付けました。この対策のおかげで、プラグを抜く回数は減りましたが、根本的な解決には至りませんでした。
理由は、利用頻度の高いテレビのプラグと絶対に抜いて欲しくないインターネットと固定電話のプラグを同じ分岐タップに差していたので、テレビの電源が切れないと貼り紙に関係なく、タップごと抜いてしまうのです。
この状態になったときの連絡手段は携帯電話のみですが、母は携帯をほぼ使いません。そのため、充電切れでつながらず、途方に暮れたこともありました。やむを得ず、家に定時に来る介護職の方に連絡して、プラグだけ差してもらったこともあります。
母の見守りができなくなると困るので、さらに踏み込んだ対策を実施しました。
絶対に抜かれない場所にコンセントを増設
母の寝室にエアコンの設置を検討していたのですが、電気容量が足りず、アンペア変更が必要になりました。しかし、本格的な電気工事を行わないと、アンペア変更ができないことが分かり、現地調査のため電気工事業者を家に呼んだのです。
母が見えないところにコンセントを増設したいと質問したら、簡単にできると回答をもらったのですが、わたしの想像と違っていました。
壁に穴を開けてコンセントを増設する大規模な工事をイメージしていたら、壁に穴を開けずに簡易な工事で増設できると言うのです。
既存のコンセントから分岐させた増設が可能で、ボックスタイプのコンセントを壁に貼りつけることで、壁に穴を開けることなく、工事は短時間で完了しました。
テレビの裏側にコンセントを増設したおかげで、母はテレビのプラグを抜くことはなくなりましたし、インターネットや固定電話用のコンセントも増設したので、見守りができなくなる問題も解消されました。
プラグを抜かれて困っている方は、わが家のようにコンセントを分岐させて、認知症の人から見えない場所に新しく設置してみてもいいかもしれません。
工事費用は、コンセント1か所につき1万円ちょっとかかりました。詳しくはお近くの電気工事会社に依頼し、見積をお願いしましょう。
コンセント増設のおかげで、遠く離れた母を不安なく見守れるようになり、金額以上の安心が得られました。
今日もしれっと、しれっと。
工藤広伸(くどうひろのぶ)
祖母(認知症+子宮頸がん・要介護3)と母のW遠距離介護。2013年3月に介護退職。同年11月、祖母死去。現在も東京と岩手を年間約20往復、書くことを生業にしれっと介護を続ける介護作家・ブロガー。認知症ライフパートナー2級、認知症介助士。ブログ「40歳からの遠距離介護」運営(https://40kaigo.net/)。音声配信メディア『Voicy(ボイシー)』にて初の“介護”チャンネルとなる「ちょっと気になる?介護のラジオ」(https://voicy.jp/channel/1442)を発信中。