「エコノミークラス症候群」は日常生活でも起こる!危ない習慣とその予防策
富山県に住む主婦・知美さん(仮名・53才)は、お正月の同窓会で会ったばかりの、同級生のAさん(東京在住・53才)の突然の訃報を知り驚いたという。
Aさんはバツイチの独身、男性。本業はイラストレーターで、在宅で仕事をしていた。亡くなる数日前、Aさんと電話で話した友人によると、Aさんはここのところ動悸や息切れが激しく、起き上がれないほどで、かかりつけの医師に診察してもらったものの心臓まわりに異常は見つからず、悩んでいたという。
自宅で倒れているところを家族に発見されたのは、その3日後だった。
Aさんの死因は、急性肺血栓塞栓症。別名、エコノミークラス症候群だった。
「エコノミークラス症候群は、機内でかかる病気と思われがちですが、地上でも発症する危険があります。Aさんのように、動悸や息切れという前兆があっても、知識がないとまさか自分がエコノミークラス症候群にかかっているとは思わない。
また、心臓の病気ではないので、心電図で検査しても、大きな変化は出ないため、見過ごされやすいのが現状です」
医学博士で早稲田大学人間科学学術院教授の永島計さんは、そう説明する。
同じ姿勢を続けているとなりやすいエコノミークラス症候群
2007年のWHOの調査では、4時間以上、同じ姿勢を続けた場合、適度に動いた場合に比べて、血栓のできるリスクは2倍に膨れが上がるとされている。
その仕組みは、編み物などの趣味に没頭していたり、スマホを見続けているなど、同じ姿勢で座り続けていると、下半身の静脈が圧迫され、心臓に戻るはずの血液が下半身の静脈にたまり、静脈内に血栓ができる。それが立ち上がった時などに血液にのって肺に到達。肺の動脈を塞いでしまい発症する。
血液の流れが悪くなるような生活をしないことが、何よりも大切だ。
「血栓は、ごく小さいものから、ソーセージ大まで大きさはさまざまです。小さいものでも肺の静脈に入れば、血液の流れを妨げ、息苦しくなります。大きい場合は血管を塞いでしまうため、突然死につながることもあるわけです」(永島さん・以下同)
では、日常どんなことに気をつければいいのか? 具体的に見ていこう。
「若い人にも可能性はありますが、50~60代でリスクが高まります。血管の中には、内皮という場所があり、血液の流れをよくする働きをしています。50代以降になると加齢で、内皮の損傷が起こったり、機能が落ちるため、血液が固まりやすくなり、リスクが高くなるのです」
片脚だけにむくみを感じたら注意して
「脚に血栓ができると、血流が滞るため、異様に脚がむくんだり、皮膚が変色することがあります。特に片脚だけにむくみや、こぶのような腫れが現れたら、疑った方がいいですね」
そのほか、動悸や息を吸う時の胸の激痛、吐き気、普通に上り下りできた階段で、息苦しくなったり、途中でへたり込んでしまうような場合も注意が必要だ。
水分不足が危険要因の1つ
「災害時の避難所では注意喚起がなされていますが、避難所生活のように、同じ姿勢でじっとしていること以外に、トイレに行く回数を減らそうと、水を飲まなくなるのもリスクを高めるもと。体内の水分が減り、脱水症状を起こすと血液の粘度が高まって固まりやすくなり、血栓が作られてしまう。水分補給はこまめにしましょう」
また、過度な飲酒や喫煙も影響がある。
「喫煙は血管を収縮させ、血液粘度を高めます。また、アルコールは利尿作用があり、脱水症状を引き起こす。いずれも血栓を作る危険要因といえますね」
女性の場合は、子宮など腹部に筋腫があると、静脈を圧迫し、血栓ができやすくなる。 50代以降は、更年期障害治療に用いるエストロゲン製剤も血栓リスクを高める要因に。
脱水症状を引き起こしやすい夏、冬、両方ともリスクが高まる
前述の通り、エコノミークラス症候群の原因の1つに水分不足があげられる。
「夏はクーラーのきいた部屋でじっとしていると、のどの渇きに気づきにくくなります。一方、冬は気温が低いので、汗をかくことが少なくなるため、脱水症状に陥ることが多くなり、注意が必要です」
急にできた血栓は健康診断では見つからない
「血栓は、短期にできるものばかりではありませんが、テレビなどを見ていたら、あっという間に3時間以上経っていたような場合にも、血栓ができる可能性があります。もしもかかってしまっても、前述のように心電図や血液検査で異常が見つからないのも、この病気のやっかいなところです」
発症前に見つけるのが非常に難しいだけに、普段からの予防が大切だ。
→関連記事:座り続けると死亡リスク増 回避のためのストレッチ法
発症リスクのチェックリスト
以下の1つでも当てはまれば、注意が必要。特に居アルコールやたばこは発症リスクを高めるの控えめに。
□気づくと座っていることが多い。
□揚げ物や脂っこいものが好き
□アルコールやコーヒーを摂り過ぎる
□普段、あまり運動しない
□ヘビースモーカーである
□トイレにあまり行かない
□エストロゲン製剤の使用
あなたが普段、何気なくしていることで、危険を招く可能性もあるため、普段から血栓のできにくい体づくりと生活習慣を身につけるようにする必要がある。
そこで3つの対策を紹介する。