「高齢者の鼻血」のどに回る出血は危険!原因と対処法を解説
今春はとにかく、気温の寒暖差が激しかった。そして、この影響が6月はもちろん、夏、秋まで続くのだという。ウェザーニューズ広報担当の當眞未来さんが語る。
「東京の場合、4月は25℃以上の夏日が9日間あり、記録的な“暑い春”となりました。そのため、桜の開花が例年より1~2週間早まり、観測史上最速を記録した桜の木もありました」
異例の暑さに加え、春の低気圧通過に伴う寒気もやってきた。結果、急な変化に体がついていかず、体調不良を訴える人が増えた。
「今年は全国的に、梅雨入りも、夏の到来も早い。九州北部と四国が5月に梅雨入りとなったのは、5年ぶりのことです。梅雨入りが早いぶん、梅雨明けも早まり、夏の訪れも早まる。しかも、今年の夏は平年より気温が高い。7月は台風シーズンも始まることでしょう」(當眞さん)
気象の激しい変化に体がついていかないと、何が起こるのか。各界関係者に聞いた。
寒暖差が高齢者に鼻血を招く
気温の寒暖差の乱高下によって、どんな症状が起こるのだろうか。新潟市にある『空港前クリニック』院長の川崎克さんが語る。
「当院がある新潟県は今年、1月から2月にかけて気温の変化が激しかったです。10℃くらいの気温が続いた後、急にグーッと下がって猛烈に寒くなる。が、数日たつとまた上がる。こうした激しい気温変動があるたびに、鼻血による来院数が増えました。冬場に限らず、気温の変化が激しい時は注意が必要です」
気温変動は、なぜ鼻の血管の異常につながるのだろうか。
「目や耳、鼻、口などの感覚器官は内臓と通じていながら、外気の入ってくる部分です。中でも鼻は、鼻呼吸によってさまざまな物質が入り込むため、細菌感染が起こらないように防御を行うなど、常時、機能し続けています。それだけ、不調が現れやすい器官でもあるのです」(川崎院長。「」内、以下同)
鼻の中の血管は、高齢になるほど弱く、もろくなっている。血管を水道管に例えるとイメージしやすいが、老朽化してきた水道管に大きな圧力がかかると耐えられなくなり破裂してしまう。これと同様のことが鼻の中で起こった結果、鼻血が出てしまうのだ。特に、60代、70代といった“大人の鼻血”が多い。
「やはり、年齢を重ねると高血圧や動脈硬化の症状が進んでいたり、糖尿病があるなど、さまざまな病気を抱えているかたが多い。持病がなくても、50代以降は血管が劣化してくるため、気温の変化など小さなきっかけで大量出血に至るのです」
ちなみに、子供の場合、鼻の入り口から1~2cmくらいのところからの出血であることがほとんどだ。ここには細かい血管が集中しており、その表面がほとんど保護されていないため、鼻の中をいじるなどして、わずかな傷がついても出血する。のぼせた場合もここが切れやすい。子供の鼻血はこのケースが多い。
鼻血がのどに落ちていく場合は大変危険!
「対して、大人の場合は、鼻の中ほどから後方にある動脈から出血することもあります。鼻腔は奥行きが8cm程度あり、口蓋がなだらかに後方に傾いているため、血がのどに落ちていくことがありますが、それは危険です。たかが鼻血とあなどると、出血多量で死に至るケースもあります。血が鼻から出るのであれば、それほど心配はないですが、のどに回って口から吹き出してしまうような状態は非常に危険なのです」
では、鼻血が出た場合、どう処置すべきなのか。
「圧迫止血が原則です。首の後ろを叩いたり、鼻の付け根を押さえるかたが多いですが、そのやり方は意味がありません。前方だけの出血の場合は、安静にしてティッシュペーパーやガーゼを詰める。もしくは小鼻全体を指でつまみ、鼻の穴が塞がるぐらいにグッと強く押さえる方法がもっとも有効です」
怖いのはのどに回る出血で、自力では止められない。
「後方からの出血は自力で圧迫できません。人体には凝固機能があるので、血管が破けても一度止血しますが、圧の高まりにより、何回も出血を繰り返しますから、病院で医師による治療をすべきです。病院ではガーゼによる圧迫止血や、内視鏡などによりカメラで見ながら鼻腔粘膜焼灼術(電気凝固)を行います」
さらに、のどに回った血をのみ込まないよう留意したい。
「血をのみ込むと、お腹の中で固まってしまい、吐き気をもよおし、さらに体調を悪化させてしまいます」
梅雨時期は寒暖差も激しく、体感温度もとらえにくい。ふいの鼻血の際は、その出血が鼻からだけなのか、のどに落ちているのか冷静に判断を。
※女性セブン2018年6月21日号
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