【千代田線】おむつゼロを実現した注目の特養や介護付有料老人ホーム、老健【まとめ】
評判の高い高齢者施設や老人ホームなど、カテゴリーを問わず高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップし、実際に訪問して詳細にレポートしている「注目施設ウォッチング」シリーズ。
東京都足立区の北綾瀬駅から渋谷区の代々木上原駅を結ぶ東京メトロの千代田線。代々木上原駅で小田急線、綾瀬駅で常磐線と相互直通運転を行っており、多くの人が通勤・通学に利用している。今回は、千代田線沿線の特別養護老人ホーム(特養)と介護付有料老人ホーム、介護老人保健施設(老健)を紹介する。
おむつゼロ!自立支援介護に取り組む特別養護老人ホーム「杜の風・上原」
「おむつは買っていません」。そう語るのは、東京メトロ千代田線の代々木上原駅より徒歩約7分のところにある特別養護老人ホーム「杜の風・上原」施設長の齊藤貴也さん。なんと、ここでは入所したその日から全員、おむつを外すのだという。
杜の風・上原を運営する社会福祉法人「正吉福祉会」は都内を中心に8つの拠点を持ち、特別養護老人ホームやデイサービス、居宅介護支援センターなど104の事業を展開している。杜の風・上原は2013年の開設当初からおむつを買わず、おむつゼロを目指してきたという。その結果、わずか半年で「常時の便失禁あり」33%が1.1%に減少、「常時の便失禁なし」が67%から98.9%に増加という劇的な変化が。おむつの必要がなくなり、おむつゼロを続けているという。
では、なぜおむつをゼロにすることができたのだろうか。「おむつを望んでいる利用者はいない」「排泄の失敗が自信を喪失させ、自立に対する意欲をなくしている」との考えが施設全体に浸透しており、職員が一丸となっておむつゼロの目標に取り組んでいるという。そして、おむつをすることになる原因である便失禁を防ぐために、「下剤の廃止」「規則正しい生活」「規則正しい食生活と常食」「水分摂取」「起床時冷水」「食物繊維(ファイバー)」「運動(歩行能力の回復)」「決まった時間の排便」「座位(トイレ等)での排便」など数々の施策を実施。これらを実施することで、生理的で規則的なトイレでの排便が実現できるようになるそうだ。
「今までおむつが外れなかった人はいません。もちろん、最初は失敗しますが、できるだけ短い期間で成功まで持っていく理論や実践するための方法があります。例えば、水分を1500cc摂るために50種類の飲み物を用意し、液体で飲めない方はゼリーにするなどの工夫をしています。入所時は便失禁している方が多いですが、それは腸の機能が低下していて便が作れなくなっているから。うちでは下剤をなくして、ヨーグルトや食物繊維、オリゴ糖を摂ってもらい、腸の機能改善を図ります」(齊藤さん 以下「」は同)
少子高齢化が諸外国よりも速く進んでいる日本。その対策の一つとして推進されているのが地域包括ケアシステムだ。杜の風・上原はその拠点施設として、在宅入所相互利用以外にも「認知症あんしん生活実践塾」「ひだまりカフェ」「高齢者トレーニング教室」「介護予防公開講座」を実施し、地域に福祉サービスを提供しているという。
「現在は在宅入所相互利用にベッドを5床あてていて、退所者の63%が自宅に帰っています。地域に対しても自立支援介護を基本にしています。元気なうちから予防に取り組んでいるといい結果につながります。地域交流イベントのひだまりカフェを実施したり、介護予防講座をしています。トレーニングマシンも地域の方に無料で開放していて、100名くらいの方に登録してもらっています。私たちが有益な発信をして、地域の方々が要介護者にならないようにしています」
高齢者トレーニング教室は、渋谷区在住の65歳以上の介護認定を受けていない高齢者が対象。マシンを使ったトレーニングやストレッチ体操などで健康を保つことができるという。介護保険で「非該当(自立)」、または認定されてなく、運動について医師の許可を得ていることが必要だ。
→おむつゼロ!自立支援介護に取り組む特別養護老人ホーム<前編>
→「在宅・入所相互利用」を導入!おむつを外して在宅復帰できる特別養護老人ホーム<後編>