【常磐線】注目のサービス付き高齢者向け住宅【まとめ】
評判の高い高齢者施設や老人ホームなど、カテゴリーを問わず高齢者向けの住宅全般を幅広くピックアップし、実際に訪問して詳細にレポートしている「注目施設ウォッチング」シリーズ。
東京都の上野駅から千葉県や茨城県、福島県を経由して宮城県の仙台駅までを結ぶJR「常磐線」。途中駅には柏駅や水戸駅、Jヴィレッジ駅などがあり、太平洋沿岸の地域を結んでいる。東日本大震災による影響がなくなり、2020年3月に全線で運転が再開されるなど明るい話題も。今回は、常磐線沿線のサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)を紹介する。
21世紀の親孝行を追求するサ高住「麗しの杜 光ヶ丘」
常磐線「南柏」駅からバスで約7分。バスから降りると、目の前に東京ドーム約10個分の広大な敷地を有する麗澤大学のキャンパスが見えてくる。ここには桜やヒトツバタゴ、楷の木、まんりょうなど、四季を感じさせてくれる樹木が約300種類、1万5000本もあり、「麗澤の森」と呼ばれているという。同じ敷地には幼稚園や中学校、高校などがあり、多くの学生・生徒たちが落ち着いた環境で学んでいる。そして、このキャンパス内に2015年に作られたものは、なんとサービス付き高齢者向け住宅(以下、サ高住)だった。
麗澤大学のキャンパスと同じ敷地に建てられたサ高住「麗しの杜 光ヶ丘」を運営するのは公益財団法人「モラロジー研究所」。この団体は、1926年に創立された教育団体で、倫理道徳の研究や道徳に基づく社会教育や学校教育、生涯教育を推進している。麗澤大学などを運営する学校法人「廣池学園」とは姉妹関係の団体にあたるそうだ。
モラロジー研究所は元々、道徳教育を行う団体。なぜ介護事業を行うことになったのだろうか。館長の中地孝博さんに聞いた。
「親孝行に対する価値観が、時代の変化と共に大きく変わってきていると感じていました。2000年に介護保険制度ができて、様々な法整備がなされて、介護人材の育成機関ができ、施設も増えました。しかし、私たち国民の意識は大きくは変わってきてはいません。親の介護が必要になったら、子供が面倒をみるのが当たり前だという考え方が根強くあります。親孝行な方であればあるほど、親の介護が必要になったら、仕事を辞めて親の面倒をみないといけないという思いを強く持っています。そういう方の負担を軽減したいと考えています」(館長の中地孝博さん。以下「」は同)
高齢者向けの施設に親を預けることに後ろめたさを感じている人はまだまだ多いと話す中地さん。その状況に一石を投じたいという思いが、ここを作るきっかけの一つになったという。「21世紀の親孝行のあり方を提案する」とのコンセプトを掲げ、入居者と家族とのコミュニケーションを丁寧にとり、介護ニーズに応えているそうだ。
「こちらに入居することが、新しい親子関係を作るきっかけになります。私たちが介護スタッフとしてできることは多いですが、子供さんの代わりにはなれません。反対に子供さんがすぐに介護のプロになることも難しいでしょう。ご家族にはご家族にしかできないことをやっていただき、あとはこちらに任せて頂ければという思いでいます」
麗しの杜には2015年にオープンした1号館と2019年2月に完成した2号館があり、一体的な運営がなされている。緑に包まれながら快適に暮らせるように、建物設計にも工夫を凝らしたという。
1号館の1階には食堂や100名が利用できる交流ホール、子供向けの絵本コーナーなどの共用スペースがあり、催しや交流に活用されているという。また、エントランスにあるフロントでは、生活面の不安などの相談や郵便物等の受け取りのサービスを提供している。
交流スペースは社会福祉協議会に場所を貸して、地域住民の健康作りの講座などに活用されているという。また、ラジオ体操や餅つきなど入居者の参加する季節の行事などに使われているそうだ。中にはピアノの練習を楽しむ人もいるそうだ。
食事はキャンパスの中にあるレストラン「まんりょう」で調理し、麗しの杜の厨房で食事の前に最終仕上げをしているという。まんりょうはフレンチや日本料理のコースも出しており、キャンパスに用事がなくとも、その味を求めて足を運ぶ人がいるそうだ。麗しの杜では、飽きが来ないように、家庭的な料理を出しているという。
2階、3階には居室があり、4階には夫婦で入居できる2人部屋も。檜風呂やリビングのように使えるスペースなど共用部分も充実していて、快適な生活が送れそうだ。
大学のキャンパス内で暮らせる全国的にも珍しいサ高住。入居者の中にはキャンパス内で提供されている生涯学習の講座に通っている人や大学の図書館を利用している人もいるそうだ。
→21世紀の親孝行を追求するサービス付き高齢者向け住宅<前編>
→地域連携で介護予防に取り組むサ高住<後編>