要介護を招く「フレイル」 高齢者は多様食で対策を
日本人の平均寿命は世界トップクラスで、男性が80.98才、女性が87.14才(厚生労働省、2016年発表)だが、実は平均寿命と健康寿命に男性で約9年、女性で約12年の差がある。
介護されずに死ぬまで元気でいたい
健康寿命とは、一生のうち健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間のことで、寿命とのギャップはまだまだ大きい。特に高齢者の場合、病気や加齢の影響で日常生活が制限されやすく、フレイル(虚弱)の段階を経て要介護になりやすい。
「介護をされず死ぬまで元気でいるのは万人の願い。その条件を解明する疫学研究を40年以上行ってきました。各地での大規模疫学調査を通してわかったのは、元気で長生きな人ほど栄養状態がいいということです」とは、疫学研究の第一人者・新開省二さんだ(「」内以下同)。
具体的には、BMI値(体格指数)、アルブミン値(血しょう中のたんぱく質)、ヘモグロビン値(赤血球中のたんぱく質)、総コレステロール値の4指標が高めな人ほど栄養状態がよく、元気で長生き。逆にこれが低いと、死亡リスクが約1.5倍高まることもわかってきた。
中年と高齢者は健康常識が違う!メタボよりフレイル対策が重要
「昨今のメタボリック・シンドローム対策により、太りすぎ防止の“粗食”こそ、健康で長生きできる食事だと妄信されてきましたが、これは間違い! 65才以上の高齢期からは、やせることよりも虚弱を防ぐ“フレイル対策”が重要になります。中年と高齢者では健康常識が違うんです」
確かに中年期までは、脂肪や糖質の摂りすぎは心血管病や糖尿病のリスクを高めるのでメタボ対策は必要だ。しかし、高齢者はむしろ低栄養やカロリー不足が深刻な問題になる。これまでと同じ“中年向けの食生活”を続けていては、逆に危険なのだ。
「65才以上になったらおすすめなのが“多様食”。10種類の食品(下記)を、1日1回でいいので毎日摂ることが大切。甘いものや油ものも食べていいんです」
【65才以上が食べるべき食品10種】
□肉 □魚介類 □卵 □大豆・大豆製品
□牛乳・乳製品 □緑黄色野菜 □海藻類 □いも □くだもの □油を使った料理
※目標は毎日7チェック以上!
特に高齢期は、肉や魚などの動物性たんぱく質が不足しがち。老いてなお、がっつりステーキを食べる!という食事こそ、健康長寿への道が開けるのだ。
※女性セブン2018年2月8日号
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