家庭の医学新常識|すり傷、発熱、鼻血…その対処、正しい?8つの習慣を見直し
目薬の指し方や風邪を引いた時の対処法など、日々の生活の中で当たり前に行っていることが、実は間違っていたり、正しいやり方が以前と変わっていたり…。そんな生活習慣を再点検してみませんか? 令和時代の「家庭の医学」新常識を8つ検証しました。
1:目薬をさした後、まばたきをするのは?
目薬をさした後に目をパチパチさせる人は多いが、「それは正しくない」と言うのは、緑内障専門医の溝上志朗さん。まばたきをすると薬成分が流れ出るため、涙囊(るいのう)部を押さえ、軽くまぶたを閉じるのが正解だという。
「なぜダメかといえば、まばたきするごとに、イラストの上涙点と下涙点からポンプ作用で目薬が涙と一緒に鼻涙管を通って鼻からのどへと流れ出てしまうからです。苦く感じるのもそのためです。正しくは、片目ごとに1滴ずつ点眼したら、両側の涙囊部(*1)を指で押さえ、軽くまぶたを閉じて薬を目の表面にとどまらせ、染み込ませることです」(溝上さん)。
その際、あふれた液(*2)は拭き取ること。目薬(*3)の使用期限を守ることも大切だ。
(*1) 涙嚢とは、メガネの鼻パッドが当たる鼻骨のくぼんだ部分の下にある涙の通り道のこと。
(*2) 液を拭き取るのは、まぶたのかぶれや色素沈着などの副作用を防ぐため。
(*3) 目薬の使用期限の目安は、開封後は処方目薬なら1か月以内、市販の目薬なら3か月以内。車中に放置したりせず、指定された方法で保管すること。
2:薬瓶に入っているビニールを、薬を取り出した後、元に戻すのは?
市販の錠剤タイプの薬瓶を開封すると、内部にビニール製の詰め物が入っているが、このビニールの役割は何だろうか?
「このビニールは、輸送時に錠剤が動いて破損するのを防ぐ緩衝材です。開封後にビニールを瓶内に戻すと、小さなゴミや雑菌などの異物も一緒に入ってしまう恐れがあるので、瓶口のシールとともに、廃棄していただくようお願いします」(大正製薬広報担当者)
実際、同社のかぜ薬『パブロンSα錠』などの説明書を見ても、最初の服用時にビニールは捨てるよう、しっかり明記されている。不要なビニールをなんとなく大切にしていたあなた! 薬瓶を清潔に保つためにもすみやかに廃棄しよう。
3:すり傷・切り傷は乾燥させると治りが早いのか?
傷口を洗って清潔にしてから、湿潤(しつじゅん)環境を保てる専用絆創膏を使うのが正解。
「昔の治し方は『消毒し、乾燥させる』でしたが、最近では『傷は流水で洗浄し、消毒せず、乾燥させない』という湿潤療法の方が、治りが早く傷痕も残りにくいといわれています」
と言うのは、医師で健康科学アドバイザーの福田千晶さん。なぜなら、けがをした後に体から出てくる体液(浸出液(しんしゆつえき))には、傷を治す成分が含まれているためだ。
「浸出液で傷口をおおった方が密閉されて、神経がむき出しにならず、痛みも少なく、浸出液中の傷を治す成分が自由に動けるので治りも早い。そして、表皮の再生がスムーズになり、傷痕も残りにくい。そのポイントは、家庭でいかに清潔で湿潤な状態を保てるかにあるのです」(福田さん)
そこで便利なのが湿潤療法絆創膏。現在ではバンドエイドRの『キズパワーパッドTM』などが、各社から発売されている。
4:鼻血の時は顔を上向きにして、鼻にティッシュペーパーを詰めるのは?
鼻血が出た時は、ややうつむき加減で10~20分、小鼻のあたりを押さえよう。
「鼻血が出たら、上を向いて首の後ろをトントン叩く」という従来の療法は、もはや時代遅れだ。
「鼻血の際に上を向くのは、鼻血がのどに流れ込み、咳(せ)き込んでしまったり、飲み込んで気分が悪くなったりする場合もあるためNGです。イスなどに座って心臓より鼻を高い位置に保ちながら、顔をうつむき加減にして、たばこ状に巻いたティッシュペーパーをゆっくりと鼻に入れ、10〜20分間、小鼻のあたり(正式には、キーゼルバッハ部位という)を強めに押さえて止血しましょう」(福田さん)。
キーゼルバッハ部位とは、鼻中隔の粘膜のうち、鼻の入り口から約1㎝の毛細血管が集まった場所。もし20分以上押さえても止まらない場合は病院へ。
5:朝いちばんにコップ1杯の水を飲むときは?
起き抜けに水を飲む場合は、雑菌・温度・鉛成分にご注意を!
一見悪くない習慣だが、実はいくつか問題点がある。
「第一には寝ている間に口腔内には雑菌が繁殖しているため、うがいもしくは歯磨きをしてから水を飲むのが望ましい。さらに、朝いちばんに体温より温度の低い冷水を飲むのは、胃腸に刺激が強すぎるため、人肌の白湯を飲むのがおすすめです。また、水道水を朝飲む場合は、水道管内で一晩たまっていた水に鉛成分が多く含まれているケースもあるので、バケツ1杯分くらい水を出してから、飲むのが安全です」(福田さん)
特に高齢者や口呼吸の人は、口が乾きやすいのでご注意を。
6:かぜで発熱した時はおでこを冷やすのは?
発熱でつらい時に体を冷やすなら、首まわりや脇の下、鼠蹊部(そけいぶ)が効果的
「かぜの時に発熱するのは、体がウイルスと闘っている証拠で、無理に解熱する必要はありません。ただ、高熱やつらい場合は解熱剤の使用や体を冷やすことも必要です。ただ、その場合もおでこをタオルや氷のうで冷やすのは効率的ではありません」(福田さん)
むしろ脇の下や鼠蹊部、首のまわりなどの太い血管が通っている箇所に、布で包んだ氷水入りペットボトルなどを当てて冷やすのが効果的。ぜひ覚えておこう!
7:冷え症対策で靴下を履いて寝るのは?
靴下は履かないのがベター。寒くて眠れない場合はゆるゆるの靴下を!
「人は眠る際、手先や足先の血管を拡張させ、熱を逃がすことで深部体温を下げ、眠くなるようにできています。どうしても履く場合は、放熱しやすい靴下を選びましょう」と言うのは、2つの睡眠資格を持つ篠原絵里佳さんだ。
「きつい靴下では血行が悪くなり、簡単に脱げないものでは深部温度の調整がしづらくなります。レッグウオーマーのような布団の中でも脱ぎやすい、ゆるゆるの靴下で寝るのがおすすめです」(篠原さん)。
8:熱中症の人には急いで水を飲ますのは?
熱中症の人には「とにかく水を!」と思いがちだが、水だけより塩水の方が吸収しやすい経口補水液や、めんつゆを薄めるのも手。
「いきなり水を飲ませると、体が受け付けない場合もあります」と福田さんは指摘する。
「まず大切なのは、涼しい場所に移動させ、ベルトをゆるめ、濡れタオルで体を拭き、風を送って体を楽にすることです。その上で、水分と塩分を摂取することが大切です。スポーツドリンクや経口補水液、もしくは、めんつゆなどを飲みやすく薄めたものもいいですね」(福田さん)。
教えてくれたのは…
■医学博士・健康科学アドバイザー 福田千晶さん
専門はリハビリ医学、東洋医学、予防医学、健康スポーツなど。企業の産業医活動のほか、講演・執筆などで活躍中。
■管理栄養士・睡眠改善インストラクター 篠原絵里佳さん
睡眠健康指導士の資格も持ち、食事と睡眠の両方の観点から健康と美容にアプローチする“睡食健美”を提唱。
■愛媛大学医学部眼科准教授 溝上志朗さん
緑内障の早期発見ための検査方法の研究と、難治例に対する治療法開発に取り組む。
イラスト/こさかいずみ
※女性セブン2019年10月31日号