兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第7回 アパート借りっぱなし事件】
ライターのツガエマナミコさんは、現在、若年性認知症の兄と2人で暮らしている。認知症の母の介護をしている最中に、兄の様子にも変化が起こり…。
兄の病気がわかるまでの経緯やそれにまつわるさまざまな出来事、そして2人の日常を綴る連載エッセイ。「明るく、時にシュールに」、でも前向きに認知症を考えます。

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認知症の母の死、そして…
母が他界したのは、兄の認知症が確定して2~3か月後でした。早朝に自宅で母が息を引き取ったとき、悲しさよりも「やっと終わった」という達成感に近い感覚がありました。なんと薄情な娘だと思いますが、気持ちはすでにこれから始まる兄との暮らしにシフトチェンジしていたように思います。
悲しみに暮れる間もなく、訪問介護士さんやケアマネジャーさん、往診していただいていたお医者さまへ連絡し、慌ただしい朝が始まりました。
ご存じの方もいるとは思いますが、在宅介護の場合、担当医から「亡くなったら救急車は絶対呼ばないで。私に連絡してください」と言われるものなのです。昼頃には親戚が来る、葬儀屋さんが来るで一気に人の出入りが多くなりました。
兄はどうしていたか…あまり覚えていません。でも兄もまた悲しみに暮れた様子はなかったように思います。日に日に衰弱す