慶応でダメ出しのテリー伊藤「今やめたらカッコ悪い」
「せっかく楽しもうとこの年で大学院に入ったんだから、普通の研究じゃつまらない。もっと大振りしていかないと!」と、慶應義塾大学院(湘南藤沢キャンパス)での研究に熱がこもるテリー伊藤(68才)。しかしTVレギュラー5本、連載8本と仕事は依然ハイペース。超多忙な生活を続けながら、学業のための時間を捻出するにはどんな工夫が?
60分のうち58分がわからない
大学院で研究発表に参加するようになって2か月。テレビの仕事については百戦錬磨のテリー伊藤だが、研究発表については、まだ手応えを掴めていないようだ。とくに新しい知識を入れる作業が難儀するという。
「ほかの学生の発表を聞いていても、60分のうち58分がわからないんです。専門用語がちんぷんかんぷんで、もう1行目からわかんないんですよ(苦笑)。たとえばLEDの発表があっても、全然頭に入っていかなくて、発表後に先生がいくつか質問をする時に『LEDだと雪国の信号には不向きですね』と言ったりして、そこで初めて“ああ、LEDはあまり熱を持たない性質だから、雪を溶かさないっていう話なんだな”ってわかるんです。学術書を読んでも、読み終えはするけど、頭に知識として入っていかない。毎日そんなのばっかりですよ」
20代の学生たちとは記憶力も違う。そして、多忙ゆえ勉強時間は限られている。どんなふうに勉強の工夫をしているのかと尋ねると、「そんなのないですよ!」と苦笑する。
栄養ドリンク飲むとか、当たり前
「お尻に火がついた状態だから、とにかく課題をやっているだけ。専門知識が足りないからもっとたくさんの本を読まないといけないんだけど、自転車操業みたいな状態で、目の前の課題をこなしてまた次の課題が出るっていう…全然かっこいいもんじゃないよね。本を読んだりパソコンで検索したり、レポートはどんな切り口にしようかって考えてるだけで、1日があっという間に終わりますよ。睡眠時間は4~5時間。老眼で目が疲れるとか、腰が痛いとか、肩が凝るとか、栄養ドリンク飲むとか、そんなのは当たり前。それは苦労じゃないですよ。だって今までの生活が恋しいなら、大学院なんか受験しなけりゃいいんで。この年になって大学院で勉強って、こんな楽しいことをやらせてもらってるんだから」
彼が大学院で学ぶことを決めた時、友人のほとんどが「羨ましい」と言った。
豪華客船の旅を申し込んでおきながら…
「みんな経済的なことや肉体的なこと、仕事や家庭の事情があるから、やりたくてもやれないって言うんです。これって、豪華客船で世界一周したいとか、世界中の山を登りたいとかっていう願望をかなえられないのと同じじゃないですか。ぼくがここで“勉強するのがしんどい”とかなんとか言うのって、世界の海をみたいって豪華客船の旅を申し込んでおきながら“船酔いするからやっぱり乗りたくない”って言うようなもの。憧れの山に登りたくて山のふもとまで来て、“足が痛い”って言うようなものじゃない? それってすごくかっこ悪い、ばかみたいでしょう? だからどんなに苦しくても、発表で先生にダメ出しされても、テリー伊藤ってなんだこんなもんかって他の学生に思われても、ここでやめることの方がかっこ悪いと思ってるんですよ」
とはいえ、彼の修士論文には並ならぬ期待がかけられているそうだ。教授から単刀直入にプレッシャーをかけられたこともある。
「知らないよ」って脅された
「先生から言われたんです。『テリーさんの修士論文は、教授も学生もみんな興味津々で読みますよ』って。だからってわけじゃないけど、いいものを作りたいなって、毎日毎日、ずーっとひっかかってますね。多分、頭の2割は修士論文のことで、もやもやしてますよね(笑い)。でも、そんな悩ましいことがある、ままならないことがあるっていうのが嬉しいんです。そうそう。この間授業を休んだら『なんで来なかったの』って怒られたんですよ。いや、仕事があるって事前に伝えたんだけどな…って内心思ったけど、先生が『あ、そう。(休んでも大丈夫かどうか)知らないよ』ってちょっと脅すんです。そういうやりとりがまたいいんですよ(笑い)」
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取材・文/辻本幸路(まなナビ編集室) 撮影/渡邉茂樹