永遠の美少年・阿修羅の身長、体重、3面の顔の意味は?
日本美術の中でも特別な人気を誇る阿修羅像。いつもは興福寺国宝館に収められているが、国宝館の耐震工事のため、今年に限って、ふだんは非公開の興福寺仮講堂にて特別公開される。9月15日から始まる秋の公開を前に、阿修羅のヒミツに迫る。
阿修羅の3つの顔の違いは?
阿修羅は三面六臂(さんめんろっぴ)の美少年像。三面とは顔が3つあるということ。では「臂」とは何かというと、ひじのこと。つまり腕が6本あるということだ。
特長的な3つの顔は、似ているようで、じつは全然違う。それぞれ目鼻立ちのバランスから、幼い少年の顔、思春期の顔、青年の顔を表しているといわれている。
右の幼い少年の顔には反抗心が見てとれ、左の顔には思春期特有の思い詰めたような表情がある。そして真正面の顔は、迷いを断ち、まっすぐに視線を向けた、決意みなぎる青年期の顔である。
6本の腕は、合掌し、天を仰ぐ
ほっそりした体躯から伸びる6本の腕にも、私たちを魅了する阿修羅の少年美が宿っている。今は6本とも何も持っていないが、合掌している真ん中の2本以外は、かつて持仏(じぶつ)が握られていたといわれている。
天高く掲げられている2本の腕は、左手に日輪(にちりん。太陽)、右手に月輪(がちりん。月)を掲げていたという。中空を浮遊しているような2本の腕は、左手に弓、右手に矢を持っていたといわれている。
細くしなやかな指の先に、かつて存在したものを想像しながら鑑賞すれば、人生に悩む美少年阿修羅とはまた異なる、神々しい姿が思い浮かぶだろう。
153.4cmの身長ながら、体重は驚きの軽さ!
阿修羅の身長は153.4㎝。バランスはおよそ8頭身と、完璧なプロポーション。では気になる体重はというと、15㎏ほどしかないという。
なぜこんなに軽いのか。これは、脱活乾漆造(だつかつかんしつぞう)という制作方法のおかげだ。これは、泥土で作った原型の上に漆をつけた麻布を何重にも重ねていき、最後に中の泥土を抜き取り、全体を支えるための心木(しんぎ)を入れて完成させるもの。だから阿修羅は中が空洞なのだ。
阿修羅の細部の美は、2017年9月5日創刊の週刊『日本の国宝100』1号「阿修羅・風神雷神図」で解説されている。特集には美少年好きを狙ったか、「世紀の美男子彫像決戦」と銘打った阿修羅とダビデ像のディテール対決もある。
取材・文/まなナビ編集室 写真協力/小学館
初出:まなナビ