視覚認知不良の早期発見は発達障害の早期支援に直結
目で見たものが何であるかを、その色や形から認識する能力を “視覚認知” という。しかし、発達障害の子どもには視覚認知に問題を抱えているケースが多いという。そこで、視覚認知についての基礎的な研究を背景に、視覚認知不良の早期発見を発達障害支援につなげるための応用研究をしているのが神奈川大学の和氣洋美(わけひろみ)名誉教授の「知覚認知心理学から学ぶ発達障害の視覚認知支援」という講座だ。同講座の様子を紹介する。
錯視(視覚の錯覚)が起こらないということが問題か
「発達障害」という言葉が広く知られるようになったのは、ここ十数年のことだ。親の育て方が原因で発達障害になるといった誤ったとらえ方は減ってはきたが、まだまだ発達障害が正しく理解されているとはいえないと、和氣先生は語る。
「発達障害の特徴として “コミュニケーションが苦手” “物事へのこだわりの強さ” などは語られてきましたが、“見る” “聞く” “理解する” といった知覚や認知の面での特異性が、教育や生活の場での問題行動の原因のひとつになっていると指摘されるようになったのは、ごく最近のことです」
和氣先生によれば、自閉症スペクトラムや学習障害の人たちは、定型者より「錯視(さくし)」が起こりにくいという研究結果が出されているという。「錯視」とは見た色や形などが実際とは違って認識される、いわば「視覚の錯覚」のことだ。「錯覚」については、別の記事「股のぞきで脳をだます錯覚のマジック」で詳しく取り上げた。
“見る”ために人は4つのプロセスをたどる