10月10日は《転倒予防の日》「要介護のきっかけにも…」今すぐ見直したい転倒を招くNG習慣5選
10月10日は「転倒予防の日」。社会福祉士で介護施設の相談員としても活動する渋澤和世さんは、「ふとした転倒が引き金となって、要介護になってしまう事例もあるので侮れません」と語る。よく知っている道で転んだり、室内の階段やちょっとした段差に危険が潜んでいることも。今すぐ転倒のリスクが高い危ないNG習慣を見直しておこう。
この記事を執筆した専門家/渋澤和世さん
在宅介護エキスパート協会代表。会社員として働きながら親の介護を10年以上経験し、社会福祉士、精神保健福祉士、宅地建物取引士、ファイナンシャルプランナーなどの資格を取得。自治体の介護サービス相談員も務め、多くのメディアで執筆。著書『入院・介護・認知症…親が倒れたら、まず読む本』(プレジデント社)、監修『親と私の老後とお金完全読本』(宝島社)などがある。
「転倒予防の日」転倒のリスクは侮れない
毎年10月10日は「転倒予防の日」。転(英語のten)、倒(とう、十)の語呂合わせから、この日が選ばれました。日本転倒予防学会が「高齢者を中心に多発する転倒事故やそれに伴う骨折・寝たきりを防ぎ、運動習慣の定着や住環境の見直しを呼びかける」という目的で制定され、各地の医療機関や自治体で転倒予防に関する啓発イベントや運動教室が実施されています。
実は近年、私自身も雪の日に転倒して手首を骨折、自宅前で捻挫をした経験もあって身近な場所でも転倒する恐さを痛感しています。転倒は単なる不注意ではなく、一瞬で健康寿命や生活の質を大きく損なう引き金にもなります。特に中年期以降における転倒は、運動機能の低下や寝たきりにつながるなど、そのリスクは侮れません。この記事では、知っておきたい転倒予防の重要性や工夫点をご紹介いたします。
70代男性の実例「自宅の階段で転倒して要介護に」
知人のご主人は、当時70代半ば、自宅の2階から1階へ下りる際、手に少し荷物を持っていたそうです。いつも通り慣れた階段だからと手すりを使わず、スリッパを履いたまま下りていたところ、階段の途中で足を滑らせ、そのまま数段下まで滑り落ちてしまいました。
大きな物音に家族が駆けつけたときには自力で起き上がれず、救急搬送されることに。診断は圧迫骨折と頭部打撲でした。しばらくの入院とギプス固定を余儀なくされ、長期間のベッド生活が続いたことで、元々お元気だった足腰の筋力が一気に衰えてしまいました。
そして骨盤周りに強い痛みが残ったため、自力でトイレに行くことが難しくなり、結果として要介護認定を受けることになりました。
本人は「まさか自宅の階段で…」とショックを受け、家族も「手すりを掴む習慣をつけておけば」「滑りやすいスリッパで階段を上り下りさせなければよかった」と深く後悔されていました。
平地でのつまずきと違い、階段からの滑落は落下の衝撃が加わるため重症化しやすく、一気に要介護状態へ進行してしまう恐ろしさがあると実感したお話です。
転倒や骨折・ケガは老後の要介護状態に
厚生労働省の調査※でも、介護が必要になる主な原因として「骨折・転倒」が上位を挙がっています。
転倒の危険は高齢者のみならず中年期以降のかたすべてに関わるものです。50代なら骨折しても治るから大丈夫と思われがちですが、身体機能や生活習慣の観点から、老後へ及ぼす深刻な影響もあります。
足首・膝・股関節などを骨折したり靭帯を痛めたりすると、長期間の固定や安静が必要になり、筋力の大幅な低下につながります。早期にフレイルを引き起こす可能性も。
また、転倒によるダメージで運動量が減少すると「生活習慣病」も心配です。
身体的なリスクだけでなく、「また転んだらどうしよう」という心理的トラウマから、外出や運動を控えるようになり、社会参加の機会や歩く機会が減少することも考えられます。
※厚生労働省「現在の要介護度別にみた介護が必要となった主な原因」
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa25/dl/05.pdf
今すぐ見直したいNG習慣「転倒予防対策」
足周りや住環境の整備、意識の切り替えが、一瞬の転倒事故から身体を守る第一歩となります。
【1】靴選びと筋力の低下を怠らない
中年期以降、転倒防止のために「靴選び」は慎重に行いたいものです。デザイン性だけでなく、フィット感や安定性を重視して選んでおきたいものです。
一般的に、かかと周りは固めで、しっかりフィットするものを、つま先が少し浮き上がっている方が蹴り出しがスムーズになります。また、靴底はグリップ感があり適度な厚さのあるものだと滑りにくく、転倒予防につながります。
また、転倒予防のために、日頃から簡単な運動を取り入れることもおすすめです。
小さな段差でもつまずいてしまうのは、すねやふくらはぎの筋肉の減少が原因のことも。かかとやつま先の上げ下げを行って、筋力を維持しておきたいものです。また、片足立ちで10~30秒ほど、バランスを保つ動きも体幹やお尻の筋肉に効果的とされています(ただし、転倒しないように、手すりや壁に手をついて行いましょう)。
【2】屋内の履物「スリッパ」に要注意
スリッパやツルツルした靴下は屋内の転倒原因の筆頭です。室内履きは「かかと付きのルームシューズ」や「滑り止め付き靴下」に切り替えるのが安全です。
【3】スマホを見ながらの移動や階段が危険
荷物を持ってスマホを見ながら歩く、考え事をしながら階段を降りるなど、視線と意識が足元から逸れているときの転倒が増えます。移動時は歩行に集中しましょう。
【4】足元のコードが危険地帯にも
家電の電源コードを壁際にまとめる、リビングのラグやマットの四隅に滑り止めシートを貼るなど、引っかかりの原因をあらかじめ排除します。
【5】夜間の足元が暗い…
夜中にトイレへ立つ際、暗がりで足元が見えず転倒するケースが多いため、足元灯(センサーライト)の設置が非常に効果的です。
転倒事故は、住み慣れた自宅や何気ない日常の動作の中で思いがけず発生します。室内履きの見直しや足元の整理整頓、手すりの活用など、小さな対策の積み重ねが大切な健康を守る大きな備えとなります。
ご自身やご家族がこれからも安心して笑顔で過ごせるよう、この日をきっかけに足元の安全を心がけていきましょう。
