猫が母になつきません 第437話「いべりこぶた」
一人暮らしだとメニューが固定化してしまいます。いつも同じスーパーに行き同じものを買って帰る。同じようなメニューをローテーション。そんな食生活に新しい風を吹かせてくれるのはたいてい「いただきもの」です。イベリコ豚も以前やはり一人暮らしをしている友人に「一人だと多いから」とお裾分けでいただいたことがあったのです。そのときの美味しさが忘れられず、オンラインショップを教えてもらい満を持して塊肉を購入しました。
イベリコ豚は「どんぐりを食べている」とよく聞きますよね。それは樫の木などが繁る森で放牧されているからだそうです。どんぐり以外の自然の牧草やキノコ、ハーブなども食べる。動き回るので肉質も良くなるそうです。(ランクはいろいろあるようです)
500グラムの真空パック、結構大きい。解凍して広げてみるとさらに大きく感じる。最初はシンプルに焼いて食べて、残りは煮込み料理とかにしてから冷凍もありか…とレシピを調べて買うべき材料もメモしたのに、結局煮込む間もなくイベリコは私の胃袋に消えてしまいました。塩胡椒でシンプルにいただくのはもちろん美味しかったし、塩麹に漬けて焼くのも香ばしくてとても美味しかった。ホースラディッシュも合うー。でももういないイベリコ…。
メニューが固定化しがちとはいえ、私は毎日恥ずかしいくらいちゃんと食べています。栄養のバランスを考えて、野菜はいっぱい、タンパク質も不足しないようにとか、その習慣は母との生活で培われたものです。自分のためだとそんなにできないけど、人のためだとやれてしまう。母は「ありがとう」は言わない人でしたが「美味しかった」はよく言ってくれました。ひとりになってもまだ母のために作っているような感覚が残ったまま、今日もちゃんと食べる。美味しかったな、イベリコ…。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母と暮らすため地元に帰る。ゴミ屋敷を片付け、野良の母猫に託された猫二匹(わび♀、さび♀)も一緒に暮らしていたが、帰って12年目に母が亡くなる。猫も今はさびだけ。実家を売却後60年近く前に建てられた海が見える平屋に引越し、草ボーボーの庭を楽園に変えようと奮闘中(←賃貸なので制限あり)。