「どんどん偏屈になる夫にどう接すればいい?」毒蝮三太夫が世の中すべての夫婦に授ける円満の秘訣|「マムちゃんの毒入り相談室」第66回
67歳の夫が「どんどん偏屈になり困っています」と訴える60歳の女性。仲が良かった友達とも、ささいな理由で縁を切ってしまったとか。すぐに不機嫌になる夫と、どう接すればいいのかと悩んでいる相談者に、マムシさんは「人生はまだまだ続く。上手におだてて、いいパートナーに育てよう」と、明るい未来につながる道を指し示す。(聞き手・石原壮一郎)
今回のお悩み:どんどん偏屈になっていく夫とどう接すればいいのか?
気が付いたら、今日は大みそかだ。もう年越し蕎麦は食べたかな。今年も一年、いろんなことがあったな。正月早々、能登では大きな地震と津波があって、夏にも豪雨で被害を受けた。気の毒すぎて言葉がない。政治の世界では衆院選で与党が大敗して、世の中が何かと騒がしくなっている。新しい年は、誰にとってもいい一年になることを祈ってるよ。
嬉しいニュースの筆頭は、大谷翔平選手の大活躍だ。カミさんが大ファンなんだよ。来年は二刀流に戻るらしいね。いっそのこと最多勝と奪三振王と三冠王を同時に取って、世界の度肝を抜いてほしいね。なんて、見てる側は欲が深くて困ったもんだ。ハハハ。
今回は60歳の女性からの相談だ。夫のことで悩んでいるらしい。
「67歳の夫がどんどん偏屈になり困っています。先日、しばらく音沙汰がない夫の友人のことを『あの方から連絡ないね。どうしているかな』と聞いたら、『もう付き合いをやめた』と言い出しました。理由を聞くと『(その友人は)スマホを持っていないから連絡が面倒になった』とのこと。驚きました。
『そんなことで疎遠になると、友達がどんどんいなくなっちゃうよ』と話したら、『面倒な友達と付き合うくらいなら、一人でいたほうがましだ』と聞く耳を持ちません。一緒に旅行に行くくらい仲良しだった友人とも喧嘩して、今は一切会わなくなりました。
休みの日は、家でテレビばかり観て過ごしています。趣味もなく、つまらないのではないかと思うのです。私とも必要最小限のことしか話しません。すぐに不機嫌になるので、だんだん私からも話しかけるのが面倒になってしまいました。こんな夫には、どんな接し方がいいのでしょか? アドバイスをお願いします」
回答:「偏屈ダンナ改造計画」に取り組もうじゃないか
あなたはいい奥さんだね。ダンナのことを心配して、これから先の人生をダンナと楽しく過ごしたいと思って、こうやって相談を寄せてくれている。「私は私で好きにやるから、勝手にしなさい」と見捨てる奥さんだって、たくさんいるからね。
もともと偏屈な性格なんだろうけど、年齢とともに拍車がかかっちゃったわけだ。たしかに、嫌な奴と無理に付き合いを続けることはない。でも、ダンナの場合は、一時の感情で大切な友達との縁も切っているみたいだな。この調子だと、あなたが言うようにそのうち友達がひとりもいなくなる。そうなると、ますます頑固で偏屈になりそうだ。
ここはひとつ「偏屈ダンナ改造計画」に取り組もうじゃないか。人生100年時代。67歳と60歳なんてまだまだ若造だし、これからが第二の青春だ。ダンナのことをうっとうしいなと思いながら過ごすのは、あまりにも不毛だよ。
別れる気がなくて、あなたにとってかけがえのないダンナだったら、いろいろと手を尽くしてみよう。自分の未来のために、一緒にいて楽しいと思えるダンナになってもらおうじゃないか。それに、誰とも話さなくなって黙ってテレビばっかり見てたら、認知症のリスクだって高まりそうだ。
まずは危機感を持たせるために、あらたまった様子でこう切り出そう。「あなたのことが大事だから、あえて言わせてもらいます。私が本当に必要だと思うなら、日頃の態度を少し考えてください。どんどん頑固になっていくあなたと一緒に暮らすのは、私は辛いし、あなただって辛いでしょ」ってね。
また別のタイミングで、こんなふうに言ってやるのもいい。「私は、あなたの笑顔に惚れたの。独りで黙ってる姿も渋くていいけど、友達と話しながら笑っていたり、誰かにニッコリ笑いかけたりしている顔は、とっても素敵だと思う」ってね。奥さんの側が一枚上手になって、上手に転がしてやってくれ。さっきも言ったように、それは自分のためでもある。
一緒に楽しめる趣味を持つのもいいな。電車でちょっと足を延ばして、土地の名物グルメを食べ歩くとかね。若い頃に観た映画のDVDを買ってきたりネットで探したりして、夫婦でまた観直してみるのも楽しい。それぞれ昔とは違う感想を抱くはずだ。そんな話をしてると、「この人、こんな一面があったのね」なんて新しい発見があるんじゃないかな。
世のダンナにぜひ伝えたいけど、どんなにワガママを言っても無愛想な態度を取っても、妻は許してくれると思ったら大間違いだ。この奥さんは、今は「ダンナをどうにかしたい」という気持ちを持ってくれているけど、ダンナが変わらなかったら、やがて諦められて、そして見捨てられる。うるさく言ってくれているうちに、自分を変える努力をしよう。
相談してくれたあなたたち夫婦が、そして世の中のすべての夫婦が、円満で楽しい2025年を過ごせることを祈ってるよ。ひとり者のジジイとババアも、たくさん笑える実り多い一年にしてくれ。今年も一年、ありがとう。みなさん良いお年を。来年もよろしく頼むよ。
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毒蝮三太夫(どくまむし・さんだゆう)
1936年東京生まれ(品川生まれ浅草育ち)。俳優・タレント。聖徳大学客員教授。日大芸術学部映画学科卒。「ウルトラマン」「ウルトラセブン」の隊員役など、本名の「石井伊吉」で俳優としてテレビや映画で活躍。「笑点」で座布団運びをしていた1968年に、司会の立川談志の助言で現在の芸名に改名した。1969年10月からパーソナリティを務めているTBSラジオの「ミュージックプレゼント」は、現在『金曜ワイドラジオTOKYO 「えんがわ」』内で毎月最終金曜日の16時から放送中。88歳の現在も、ラジオ、テレビ、講演、大学での講義など精力的に活躍中。2021年暮れには、自らが創作してラジオでも語り続けている童話『こなくてよかったサンタクロース』が、絵本になって発売された(絵・塚本やすし、ニコモ刊)。この連載をベースにしつつ新しい相談を多数加えた最新刊『70歳からの人生相談』(文春新書)が、幅広い世代に大きな反響を呼んでいる。
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石原壮一郎(いしはら・そういちろう)
1963年三重県生まれ。コラムニスト。「大人養成講座」「大人力検定」「失礼な一言」など著書多数。新著『昭和人間のトリセツ』(日経プレミアシリーズ)と『大人のための“名言ケア”』(創元社)が好評発売中。この連載ではマムシさんの言葉を通じて、高齢者に対する大人力とは何かを探求している。