猫が母になつきません 第422話「あそぶ」
さびがにゃーんと鳴いて私がそちらを見る。目が合ってお互いに一瞬動きを停止したら鬼ごっこ開始の合図。私が追いかけ、さびが逃げる。ゴールは納戸の奥に置いてある爪研ぎ。さびはそこに先に到着するとガリガリガリガリッと激しく勝利の爪研ぎ。瞬発力がいるのでいつまでこんな遊びに付き合えるのか不安はありますが、室内飼いの猫になったさびの運動不足を少しでも解消できればとたまにやっています。
猫の遊びといえば《じゃらし》が定番ですが、さびは紐の先にねずみや羽のついたじゃらしにすぐ飽きてしまい、私がどんなに巧みに操ってもソファに寝転んだままで「こっちに投げてくれたらじゃらさなくもない」という感じ。レーザーポインターは最初こそ追いかけたものの、すぐに実体がないということに気がついて興味を示さなくなりました。
そんななかでいつからか始まった突発的追いかけっこ。実家にいたころはこういう遊びはしていませんでした。家は狭くなったし庭には出られないし、やっぱり退屈なんでしょうか。ゴールを設定したのはさび自身。高いところとか押し入れの奥をゴールにすれば最後までつかまらないのに、なんで床に置いた爪研ぎ?もしかしたら私がさびよりも先にゴールする可能性を考えてくれているのかも。私が簡単に届かないところではフェアではないと。怪我をしないようにするのが精一杯で、さびに勝てる日は来そうにありませんが、さびのうれしそうなウィニング爪研ぎをみるにつけ、このくらいの遊びには付き合える体力を維持していたいと思うのです。
作者プロフィール
nurarin(ぬらりん)/東京でデザイナーとして働いたのち、母と暮らすため地元に帰る。ゴミ屋敷を片付け、野良の母猫に託された猫二匹(わび♀、さび♀)も一緒に暮らしていたが、帰って12年目に母が亡くなる。猫も今はさびだけ。実家を売却後60年近く前に建てられた海が見える平屋に引越し、草ボーボーの庭を楽園に変えようと奮闘中(←賃貸なので制限あり)。