兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第269回 そして誰もいなくなった】
57才で若年性認知症を発症した兄を妹のツガエマナミコさんが在宅でサポートし続けて8年。ついに、兄が施設に入所する日がやってきました。慌ただしく介護タクシーで家を出発した兄とマナミコさん。マナミコさんがその日のことを振り返ります。

* * *
兄が特養に入所した日
兄が施設に入所いたしました。
予報通りの大雨の朝、自転車でびしょ濡れになってヘルパーさまが来て下さり、最後のオムツ交換をしてくださいました。その後、介護タクシーの方が2名で兄をベッドから車いすに乗せ換えて、いよいよ出発。マンションの管理人さまと「寂しくなりますね」「そうですね」と会話をしましたが、正直なところ「そうでもないし」と思っていました。
施設に着くと、兄の部屋へ案内されました。2階の西向きのお部屋でございます。背丈ほどある大きな窓の向こうに畑が見えて、天気が良ければなんと富士山も見える眺めのいい場所。兄が気に入るかどうかはわかりませんが、少なくともわたくしは気に入りました。
会う人すべてに「お世話になります。宜しくお願いします」と言いながら、兄の部屋に行くと、個室に5人ほどのスタッフさまが入り、兄を車いすからベッドに移