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兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第261回 特養探し】

 ライターのツガエマナミコさんが一緒に暮らす兄は認知症。症状が進行し、排泄のコントロールができなくなり、家中ところかまわずいたしてしまう状況が続いていました。そして、その行動が原因で特養入所を断られ、途方に暮れていたマナミコさん。しかし、ある日突然、兄はてんかんと思しき発作を起こし、それ以降歩けなくなり、ベッドの上だけの生活になってしまいました。結果、特養入所も門が再び開けたのです。

 * * *

特養3軒を見学して、ついに決めました!

 兄は相変わらず寝たきりでございます。ゆえにわたくしは心身ともに平穏でございます。この平穏な時期に3つの特別養護老人ホームを見学してまいりました。

 1軒は家からの近さで群を抜いており、もう1軒は24時間看護師さんを配置しているのが最大のウリ。もう1軒は明るいけれど特徴がない施設でございました。

 家から近い施設は片道約30分と大変魅力的でした。でも駅からは徒歩10分が必須。徒歩の道のりにバスはなく、タクシーもあまり来ない駅前だったので、先々のことを考えると厳しいと思いました。施設そのものも寂れた町工場に挟まれるようにあり、木々が鬱蒼と茂る丘の中腹といったところでした。見学したお部屋は明るい雰囲気でしたが、寂れた町工場しか見えないお部屋もあるようでした。

 次の24時間看護師さんを配置している施設が、じつは一番期待していた第一候補でございました。厚生労働省のHPに載っている「介護サービス情報公開システム」というデータでも、「安全・衛生への取り組み」「サービス・質の確保への取り組み」などほとんどの項目で県の平均を上回っているのでございます。それもあって見学をする前から「ここだな」と半ば決めていたのですが、実際に行ってみると全体的に暗く重い印象でございました。

 最悪だったのは認知症専用ユニットが地下フロアにあったことでした。緑に囲まれた施設なのに部屋の窓からは隣の棟しか見えず、緑も空も見えないのでございます。それを見た瞬間に「ここはナシだな」と思いました。そもそも面会に通うわたくしが行く気を失くす館でございました。

 3軒目は可もなく不可もなく特徴のない施設です。でも見学に行った施設の中で一番明るく解放感のある施設でした。丘の上にあり、周りは閑静な住宅街で、高校がすぐ隣にあり、建物の外周がすべてお部屋で窓からは必ず空や緑が見える作り。北向きの部屋もありますが、空ひとつ見えない部屋よりはマシでございます。

 難点は日曜日に面会ができないこと。ただ、他の曜日は面会時間内なら予約なしでフラッと行けるのであまり問題ないかなと思っております。3軒の中で一番初めにご連絡をいただいたアドバンテージもありますし、見学した段階で受入OKというお言葉があったことや、ご担当者さまの物腰の柔らかさも加点となり、じつは先日こちらの特養に「決めました。宜しくお願いいたします」とご連絡をしたところでございます。

 こう書いてしまうとアッサリ決めたようですが、実際は3週間ほどいろいろ悩みました。

「片道1時間より30分の方がいいのでは?」とか「特養で24時間看護師を配置している施設は希少だよな」とか「明るいとか暗いより、データとして優秀なところいいのじゃない?」とか、あれこれ自問自答して考える度に決断が変わる始末。

 でも結局は自分が面会に行きたいと思えるかどうかで決定いたしました。

 さっそく入居に当たって必要な書類が送られてきました。一番頭を悩ませているのが「健康診断書」でございます。入居には「健康診断書」が不可欠なのです。

 先日の受診日に財前先生(仮)にその旨をお話すると「うちの病院だと、この検査はいつ、あの検査は別の日って何度も来なくちゃいけないかもしれないからまとめてやってもらえるところの方がいいんじゃないですか?」とおっしゃられ、自力でどこか探さなければならなくなりました。

 必要なのは血液検査と心電図とレントゲンと尿検査。寝たきり紙オムツの兄からどうやって尿を採取すればいいのかと不安になりながら、目下、健康診断がまとめてできる病院を検討中でございます。

 ケアマネさまもお忙しそうで、特養が決まった途端に熱心さがなくなり、短いメールのお返事ばかり。世の中は移り変わりが激しいものだな~とツガエブームの終わりを感じた夏でございます。

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文/ツガエマナミコ

職業ライター。女性61才。両親と独身の兄妹が、8年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現65才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。

イラスト/なとみみわ

●特別養護老人ホーム(特養)とは?費用や入居条件、申し込み方法「早く入居するコツ」も解説

●「特別養護老人ホームは貯金があると入所できない?」実例相談をもとに特養の入所条件についてFPが解説

●入居待ちが絶えない「特養」はサービスも質も向上中 よい特養を見つける7つのチェックポイント

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この記事へのみんなのコメント

  • ふじこ

    3ヶ月程前まではお元気でツガエさんを疲弊させていたお兄様が、あれよあれよと寝たきりになってしまって…その状態が施設に入ることができる目安になってしまうとは何とも言えない複雑な思いがあります。ツガエさんの施設選びも大変勉強になりました。家から近いというのは自分の行き来を考えると一番のメリットと思えますが、やっぱり周りの環境や雰囲気は行ってみないと分からないし、パンフレットでは判断できませんよね…家の父は先月まさかのコロナにかかってしまい入院中です。軽症だから安心していましたが、療養期間が明けた頃に痰が詰まって窒息しそうになり、その後肺炎になって苦しんでおります。高齢なのでいつ急変するか分からない日々を送っております。 家の地域では国保で健康診断が受けられます。今入院している病院では、オムツ内に検尿カップを挟んで採尿しています(原始的)動けないのだから、ケアマネさんか訪看さんが紹介してくれないのかな?暑い日が続いていますのでご自愛下さいね。

  • 暑い夏だ

    施設への目処が立ったご様子でほっとしました。しかし寝たきりにならないと入所できないというのも何だかなあと思います。受け入れてくれる施設でもこのサイトの別連載のぬらりんさんのお母様のように薬を使って動けなくしてしまう、といった感じでしょうか。 とはいえ人手不足でそうせざるを得ないのでしょうね。とある知り合いが昭和の末期に認知症に罹り、 徘徊が始まり、当時は介護保険もなく主たる介護者であった配偶者が心労から倒れ、家の中で亡くなっていたのですが、当事者の知り合いは理解できず眠っているのだと思い、ご遺体に毛布をかけていたそうです。2日後ぐらいに、たまたま遠方から訪問した親戚が発見しましたが、その後誰も知り合いを看てくれる人がおらず、やむを得ずいわゆる当時の老人病院に入院させ、拘束され薬を混ぜた食事を与えられ半年もたたず亡くなりました。あれから40年近く経ちますが、徘徊や排泄の問題など困った周辺症状への画期的な解決法は無い、人手を使ってその場その場で対処するしかないのだ、と鬱々としてしまいます。いつの日か「あー、そういえば令和初期はまだ大変だったよね。今は認知症も治るか、仮に悪化しても本人が困っていることがすぐわかるようになったから楽になったよね」と言える時代がくるといいと思っています。ではマナミコさん、暑さにお気をつけて。

  • はな

    ツガエさん、お疲れ様です!特養入所が決まって何よりです。 当事者でなければ「決まって良かったね」くらいですが、本当に色々悩んだ末だと思います。 私も母の介護サービスを追加したり変更したりするだけでもものすごく悩んで決めていますが、遠くにいる兄弟姉妹は「へー、そうなんだ」という感じです。 きっといつか特養に入る時も自分だけが悩んで他の兄弟姉妹は「へー」で終わりです。「自分が面会に行きたいと思えるかどうか」を参考にさせてもらいます。

  • ちゃむ

    ツガエさん、特養入居が決まって本当に良かったですね!! 今まで物凄く大変だったのに本当によくお兄さんの介護をされて来られましたよね! 毎回拝読する度にツガエさんは凄い!素晴らしい!ご立派だ!と思っていました。 私にはとても出来ませんでした。私も若年性認知症の夫の施設入居が決まった時は本当に嬉しくありがたかったです! でも、その夫も今年1月に亡くなりました。発症から9年目でした。 お兄さん、特養に入られてからの日々が穏やかに過ごせますに祈っております。

  • うさぴょん

    こんにちは。 特養に入れそうで何よりです。おしっこは陰部にガーゼを置いておき排尿があったら絞るのが一番やり易いかと思います。ピニール袋被せるとかあるのですが暑いし漏れやすいので夏場はオススメしません。健康診断受ける病院で相談してみると良いかも知れませんね。

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