兄がボケました~若年性認知症の家族との暮らし【第261回 特養探し】
ライターのツガエマナミコさんが一緒に暮らす兄は認知症。症状が進行し、排泄のコントロールができなくなり、家中ところかまわずいたしてしまう状況が続いていました。そして、その行動が原因で特養入所を断られ、途方に暮れていたマナミコさん。しかし、ある日突然、兄はてんかんと思しき発作を起こし、それ以降歩けなくなり、ベッドの上だけの生活になってしまいました。結果、特養入所も門が再び開けたのです。
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特養3軒を見学して、ついに決めました!
兄は相変わらず寝たきりでございます。ゆえにわたくしは心身ともに平穏でございます。この平穏な時期に3つの特別養護老人ホームを見学してまいりました。
1軒は家からの近さで群を抜いており、もう1軒は24時間看護師さんを配置しているのが最大のウリ。もう1軒は明るいけれど特徴がない施設でございました。
家から近い施設は片道約30分と大変魅力的でした。でも駅からは徒歩10分が必須。徒歩の道のりにバスはなく、タクシーもあまり来ない駅前だったので、先々のことを考えると厳しいと思いました。施設そのものも寂れた町工場に挟まれるようにあり、木々が鬱蒼と茂る丘の中腹といったところでした。見学したお部屋は明るい雰囲気でしたが、寂れた町工場しか見えないお部屋もあるようでした。
次の24時間看護師さんを配置している施設が、じつは一番期待していた第一候補でございました。厚生労働省のHPに載っている「介護サービス情報公開システム」というデータでも、「安全・衛生への取り組み」「サービス・質の確保への取り組み」などほとんどの項目で県の平均を上回っているのでございます。それもあって見学をする前から「ここだな」と半ば決めていたのですが、実際に行ってみると全体的に暗く重い印象でございました。
最悪だったのは認知症専用ユニットが地下フロアにあったことでした。緑に囲まれた施設なのに部屋の窓からは隣の棟しか見えず、緑も空も見えないのでございます。それを見た瞬間に「ここはナシだな」と思いました。そもそも面会に通うわたくしが行く気を失くす館でございました。
3軒目は可もなく不可もなく特徴のない施設です。でも見学に行った施設の中で一番明るく解放感のある施設でした。丘の上にあり、周りは閑静な住宅街で、高校がすぐ隣にあり、建物の外周がすべてお部屋で窓からは必ず空や緑が見える作り。北向きの部屋もありますが、空ひとつ見えない部屋よりはマシでございます。
難点は日曜日に面会ができないこと。ただ、他の曜日は面会時間内なら予約なしでフラッと行けるのであまり問題ないかなと思っております。3軒の中で一番初めにご連絡をいただいたアドバンテージもありますし、見学した段階で受入OKというお言葉があったことや、ご担当者さまの物腰の柔らかさも加点となり、じつは先日こちらの特養に「決めました。宜しくお願いいたします」とご連絡をしたところでございます。
こう書いてしまうとアッサリ決めたようですが、実際は3週間ほどいろいろ悩みました。
「片道1時間より30分の方がいいのでは?」とか「特養で24時間看護師を配置している施設は希少だよな」とか「明るいとか暗いより、データとして優秀なところいいのじゃない?」とか、あれこれ自問自答して考える度に決断が変わる始末。
でも結局は自分が面会に行きたいと思えるかどうかで決定いたしました。
さっそく入居に当たって必要な書類が送られてきました。一番頭を悩ませているのが「健康診断書」でございます。入居には「健康診断書」が不可欠なのです。
先日の受診日に財前先生(仮)にその旨をお話すると「うちの病院だと、この検査はいつ、あの検査は別の日って何度も来なくちゃいけないかもしれないからまとめてやってもらえるところの方がいいんじゃないですか?」とおっしゃられ、自力でどこか探さなければならなくなりました。
必要なのは血液検査と心電図とレントゲンと尿検査。寝たきり紙オムツの兄からどうやって尿を採取すればいいのかと不安になりながら、目下、健康診断がまとめてできる病院を検討中でございます。
ケアマネさまもお忙しそうで、特養が決まった途端に熱心さがなくなり、短いメールのお返事ばかり。世の中は移り変わりが激しいものだな~とツガエブームの終わりを感じた夏でございます。
文/ツガエマナミコ
職業ライター。女性61才。両親と独身の兄妹が、8年前にそれぞれの住処を処分して再集合。再び家族でマンション生活を始めたが父が死去、母の認知症が進み、兄妹で介護をしながら暮らしていたが、母も死去。そのころ、兄の若年性認知症がわかる(当時57才、現65才)。通院しながら仕事を続けてきた兄だったが、ついに退職し隠居暮らしを開始。病院への付き添いは筆者。
イラスト/なとみみわ
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