健康

認知症予防スポーツのきっかけは「ポケモンGO」でもいい

 誰しも、なりたくて認知症になるわけではありません。でも、自分、あるいは親がその当事者になる可能性はある。その可能性を回避するために、今からでき ることとは…!? そのためのさまざまな方法を、識者に尋ねます。今回は、予防のためのスポーツについての後編。「健康時からの運動習慣で、医療の枠組み に頼らないライフスタイル」という『プレメディカル』構想を提唱しているスポーツ科学の専門家・杉浦雄策さん(明海大学教授、立教大学非常勤講師、博士 <医学>)にうかがいました。

 

 * * *

スマホやアプリで楽しいことから始める

 前回は、認知症予防のためのスポーツは、「5分でいいから、好きなことや昔やったことでライトに体を動かすことを続ける」のでいい、というお話をしました。

 なぜなら、厳密なデータややり方の鉄則などを強いることでかえってスポーツから遠ざけてしまっている現実があるからです。

 スポーツをやらないとボケてしまう! と切迫感をもつのではなく、老齢期になっても自分がやりたいこと(たとえばボランティアでも趣味でも)ができるレベルの体力維持ができればいい、と考えてみたらどうでしょう。健康や体力を獲得することは、人生を豊かにするための手段であって目的ではない。だから、画一的な運動ハウツーでがんじがらめになるのではなく、その人らしさ、自分に合った方法で行えばいいと思います。

 それでもまだ老親が「億劫」とか「かつてやったスポーツもないし…」と頑固に言い張るのであれば、今だと「ポケモンGO」でもいいと思います。実際に外に出る機会が増えたとか、ものすごくたくさん歩けたとか、孫と一緒に出掛けてコミュニケーションが増えて楽しい、というような声もありますよね。

 スマホを利用するのもいいと思います。アプリならたとえば「Runtastic」。走行ルートや距離・時間・スピード、消費カロリーなどを計測・記録してくれます。結果はグラフでも出てくるので、効果を“視える化”できます。そうすると楽しい、楽しいと続く、続くと効果が出る、効果が出ると楽しい、と好循環が生まれ、自然と習慣がつきます。

 さらに、コミュニケーションもポイントです。今、大学生を対象に運動習慣の調査を実施中ですが、ひとりでやるよりSNSを利用して仲間とコミュニティをつくって進める方が習慣化が進む、という中間結果も出ています。高齢者の運動機会の調査でも、公民館などでみんなと一緒に運動する方が参加意識が高まるという報告もありますね。

 外に出る、人と触れ合う、人々との関係性の中で生きることが認知症のリスクを減らすとも言われます。「まずは体を動かす×コミュニケーション」作戦でいきましょう。

 このようにして、まずは楽しいと思うことを始める。より手軽に気楽に“遊び”をもたせたスタイルで。遊びというのは「遊戯」の遊びであり、ブレーキの遊びというような時に使う「余裕」の意味でもあります。効果的な方法や種目の選択などの細かいことは、その後に追求すればいい。というか、きっとしたくなりますよ。それがスポーツの楽しさだから。

働き盛りの人も思った時が始め時

 老親にすすめる前提でお話をしてきましたが、これ、実は働き盛りの人たちにも、ぜひ考えてほしいことでもあります。運動の習慣づけは、早く始めるほど根付きやすいという調査もあるからです。

 病気の予防や治療については、従来までは高齢期を対象に言われてきましたが、それではすでに遅い。予防の前段階、健康な時からの積極的な健康習慣を、今我々は提唱しています。しかし実際は、青年期で運動習慣は途絶えてしまいます。その習慣を、年齢を重ねてからつけようとすると、大変に難しい。それは親に運動をすすめた時の反応の鈍さからも実感しているでしょう。

 だからもし「運動をしないと認知症になってしまうかも?」と思ったら、誰しもその時が始め時です。親にすすめると同時に、自分も一緒にスタートです。

 一緒にやらない? と声をかけたり、自分や子供が楽しそうにやっている姿を見せて巻き込んでしまうのもアリですよね。“好きなこと楽しいことを自分の好きなやり方でやってれば幸せ”というのは万人共通。そんなシンプルな感覚で、まずその一歩を踏み出してみましょう。

認知症スポーツ_杉浦_7

杉浦雄策(すぎうら・ゆうさく)/明海大学教授。立教大学非常勤講師。博士(医学)。日本臨床スポーツ医学会会員。順天堂大学大学院修了(運動生理学)。近年、スポーツ科学の立場から、人々のつながりを基盤に「医療のお世話にならない健康づくり=プレメディカル」をスポーツ・行動科学・まちづくりまでを巻き込んだ構想として研究提唱中。著書に『入門スポーツ科学―スポーツライフをエンジョイするために』(ナップ刊)ほか。

撮影/相澤裕明 取材・文/小野純子

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